2022年2月6日日曜日

ホーマー・ヒッカム・ジュニア著、武者圭子訳『ロケット・ボーイズ上下』草思社、2000年。

  NASAの元エンジニアによる自叙伝。アメリカ、ウエストヴァージニア州の炭鉱の街コールウッド。日本の地図帳には載っていない小さな街で高校に通うホーマー少年。後にNASAのエンジニアになる、サニーと呼ばれた青年がロケットの打ち上げに没頭した3年間を描く小説。巻末に、日本人宇宙飛行士土井隆雄氏が「本書に寄せて」で「夢を持つことはむずかしい。そしてその夢を持ち続けることはもっとむずかしい。だが、この本を読んで、夢を追い求めることのすばらしさにより多くの子供たちが気づいてくれることを願う。そしてより多くの子供たちが、すばらしい夢を見つけることを願っている」と語るように、サニーの情熱とその行動・実行力が主題となっている。

 それはそれで、大変面白いのだけれども、私が面白いと思ったのは、ロケットボーイの仲間たちや、とにかく優しいライリー先生、厳しい物言いと自立心の中にも息子への愛情にあふれている母親エルシーに支えられながら、ロケットを打ち上げ続けるサニーの姿に、徐々に心を開いていく炭鉱の労働者、学校の教員、教会の神父、そしてコールウッドの荒っぽくも暖かく見守ってくれる住民たちの描写であった。炭鉱の縮小・閉鎖といった街の変化を背景に、ロケットの打ち上げというイベントに、人が街が変わっていく様子が、これまた活き活きと描かれている小説だと思った。


■以下引用

上123 どこからでも、とにかくはじめてみなければわからないということだ。

下92 ドアが閉じられてしまったらね、サニ-、窓を見つけてよじのぼるのよ

下132 悲しみや怒りはわきに置いて、やるべきことをやりつづけるのよ

下252 自分で手をくださなくても、辛抱強く待ってさえいれば、いずれは町が物事を正しい方向におさめてくれる、そんな感じだった。