2022年2月6日日曜日

就活生を応援する人事担当者の会編『就活生なら誰もが知りたい、だけど聞けない疑問に現職人事担当者が本音で回答する本』洋泉社、2012年。(図書館)

  就職活動に取り組む大学生向けに編集された本。表題の通り、就職活動の実際のところを、企業の人事担当者が答える内容。座談会形式なので、話し言葉で大変読みやすい。

 大学生向けではあるけれども、その内容は就職活動をするすべての人に当てはまるもの。というか、就職活動の本質が結局のところ自己分析と、自分のことを「自分の物語」として語ることができること、の二つに集約されるのだということを再確認できた。

 人間不安になると、とにかくその場の「正解」を探しがちです。就職活動というリスク(不確定要素)だらけの不安に満ちた状況に身を置くと「志望動機の正解は?」「服装の正解は?」「第一志望でないときは何て答えたらいいの?」と考えがち。そんな不安の中だと、ちょっとした噂や根拠のない雑談の中から「○○って言われた」と事実確認もせず鵜呑みにしてしまう。私にもそういう時期がありましたし、前職でそんな人たちを何十人、何百人と見てきました。そういう思いに囚われていると、ナンボか客観的な助言ができる私の話なんか何も聞いていないんですよね。「知り合いが言っていた!」と印籠を掲げる人も数知れず。

 本著の内容が面白いのは、「人事担当者の本音」として、学生の質問に回答することを通じて「就職するってどういうこと?」「就職活動の心構え」「社会に出る、社会人になることってどういうこと?」ということを、人生の(ちょっと)先輩たちが本音で語っているというところだと思います。就職するというのは、社会の歯車、会社の歯車になるということ。そこでは「自分の思い」のすべてが認められるわけではない。お互いそんな環境の中で「仲間」になるために、そんなマナーが求められるのか、どんな発言が求められるのか、どんな態度、人当たりが必要か、そして「相手を慮ることができる」かどうかが問われます。企業としては「仲間が欲しい」わけで、その「仲間になる」ために何をするのか?と問えば、前述した2つのことが求められるのは必然でしょう。

 「そんなことは私に必要ない!」「会社の歯車なんてまっぴらごめんだ!」という人がいるのも結構。ただ、そういう方は「自分の思いで起業」していただきたい。本気で就職を目指す就活生にとってはノイズにしかなりません。

 転職してから、この手の本を読むのは久々でしたが、編者の思いの伝わるいい内容でした。就職活動って社会のことを深く知るきっかけになるし、人を成長させる機会になると思います。