2020年3月28日土曜日

深沢七郎「楢山節考」『楢山節考』新潮社、1964年、37~108ページ。

・辰平のとまどいとおりんの覚悟。掟をやぶってまで引き換えした辰平を追い払うおりん、そして無言で去っていく辰平の思い。小説の体裁で淡々と描かれているこの部分から、ものすごい迫力を感じた。
・何がこの迫力になっているのか、冷静に読み返してもよくわからないのだが、感情を直接揺さぶられる描写であった。
・地方の伝承や口伝の歌などを引用しているものと思われる。虚構と現実とを行き来させられるような小説だった。
・残念ながら、収録された他の短編はそれほどの迫力ではなかった。「月のアペニン山」は統合失調症患者の生活なのだろうと察するが、「東京のプリンスたち」は昭和の高校生の生活を描いている。それほど胸に迫るものではなかった。