2011年8月30日火曜日

社会教育推進全国協議会に参加して考えたこと(1)


2011年8月28日に、社会教育推進全国協議会に参加してきました。
先の投稿で、私的なメモはアップしましたが、話の流れがつかめるようなメモではないので、先にお断りしておきます。公的なものへの引用も避けてください(発言の意図がどこまでつかめているか、自信がないので)。

今回の大会へ一部参加して感じたことはいくつかあります。
・市民が行政との協働など、「市民活動」を展開していくために身に付けるべきスキル
・一方で、行政の立場から市民との協働を事業化するために必要(と思われる)なこと
・「学習を保障する」ことがもたらす「よりよい生活を手に入れる」とは
いままでいろんなところで考えてきて、ようやく言葉にできそうなことです。

(1)協働事業の展開に関する考察
N-Pocket時代にも、私の本業の分野でも、その他様々な報告の場においても「協働(コラボレーション)」があたりまえのように語られるようになりました。私が学生の頃は「協働」と書くと古い方から赤ペンが入る時代だったのに。時代は変わるものです。
行政の事業は、何かのデーターに基づき、予算要求し予算化されて、人が配置され、事業としての活動が展開されます。例えば、○○センターが設置されるには、○○センターで行う活動があらかじめ決められており、そこに必要(と考えられる)なお金と人員が配置されて事業が行われるというものです。○○センターが実施することには、(信憑性はどうあれ)それが予算化される根拠があり、予算化のためのデーターが何らかの形(調査によるものであったり、研究による考察だったり)で示されていることになります。
話をわかりやすくするために、かなり単純化して説明しましたが、これが「行政事業の常識」です。
では、ここに市民が入り込んでいくために必要なことは何か、もう少し突っ込んだ話をすれば、市民活動が行政と協働していくために必要なことは何かということです。今回社全協に参加して痛感したのは、「行政の常識に沿いながら、自己主張する」スキルが必要だということです。
「□□チルドレン」と呼ばれる1年生議員さんがインタビューに答える場面で「素人ならではの新しい視点で意見していこうと思います」という回答を耳にすることがありました。賛否両論ある回答ですが、ここで問われていることと同じで、要は「意見を組み立てるスキル、すなわち官僚に『理解される』形で論を展開するスキル」がその人にあるかどうかで、この回答の賛否は問われるのだと思います。
思ったことを場に出す、言いたいことを言うだけでは「意見する」ことの半分しか満たせていません。相手の納得を引き出すためのデータをどう作り、どのように表現し、どんな場でどのタイミングで発するか、ということが問われているのではないでしょうか?
この議員と官僚の関係は、ほとんどそのまま市民と行政の協働関係の成否に置き換えられるものと思います。事業を受託するだけならここまで考えなくてもいいのですが、協働して新しい価値を生み出していく、新しい事業を展開して課題解決を図るという点においては、市民が身に付けるべきスキルを以下のように考えることができます。「行政の事業展開の根拠を知っている(知る情報源・収集手段を持っている)」「納得の得られるデータを作ることができる。または調査によって創ることができる」「具体的な現場を持っていることが望ましい」。
ここまで市民の側からの視点で考えてきた。では協働事業は市民の手によってのみ作られるのかというとそうではなく、主体は市民と行政双方にあるといえます。その際、行政の立場から協働事業に必要となるスキルは何なのか考えてみると、こんなことが思い浮かびました。「市民からの訴えのポイントをつかむ感受性」「市民に課題を語らせる・引き出すスキル(相談やデータの提出など)」といったところでしょう。まだあると思いますが、窓口レベルではこのあたりになるかと思います。
これらの土台があって、初めて市民-行政のコミュニケーションが噛み合い、お互いの強みを活かした協働事業が展開されるのではないでしょうか?協働事業を「行政が金を出し、市民が活動する」なんて乱暴な表現される方がいますが、この言葉はひょっとすると行政のことを理解しない市民からの一方的な行政批判にも聞こえてしまいます。そんな意識で信頼関係が構築されるとは思えませんし、信頼関係のない「協働」は成立しません。
コミュニケーションの重要性はよく指摘されますが、そのコミュニケーションが成立しているかどうかをクリアに指摘する言論にはあまり出会いません。具体的な活動をされている方にはきっと「あたりまえ」のことなのだろうと察しますが、近年行政機関に所属する立場となった私には、市民活動と行政との「常識の違い」が感じられて仕方がなくその理由が何なのか考え続けていました。今回の考察が、一つの着地点となり次のステップに上がる土台になると思ったので、文書でまとめてみました。
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思いの他、長文になってしまったので、学習保障に関する考察は次回の投稿にします。