2010年7月25日日曜日

鳥居深雪『脳からわかる発達障害 ―子どもたちの「生きづらさ」を理解するために』中央法規、2009年。

発達障害のある子どもたちに一貫して関わってきた研究者が、脳科学の研究成果をふんだんに取り入れて、子どもとの関わり方を模索する成果の一つとして出版した渾身の一冊です。
これまで、障害の現象とその対応に関する言説は数多く目にしてきたが、発達障害のしくみを脳のしくみから仮説を交えて、到達点をここまでわかりやすく解説した書籍は初めてでした。
事例と理論が見事にマッチングした、現場を知り尽くした研究者ならではの記述に思わずうなってしまいました。
 
「結局、何なの?」というのが、職場の現場で関わる人たちの一番知りたいことだと思います。
Iyokiyehaの仕事も、そういう方に、いかにわかりやすく現象を説明していくか、ということになっているのですが、これまではどうしても「現象を現象で説明する」ことに終始していたように思います。
たとえ仮説であったとしても、どういうしくみが、どうなっているから、こうしたほうがいい、ということを説明した方が、具体的な関わり方に応用が利くのではないかと思います。
上司や先輩支援者から「具体的な関わり方を教えた方がいい」「事例で説明したほうがいい」と助言を受けてきたのですが、じゃあ「○○と言ってください」と逐一対応方法を教えられるだけの余裕はないわけです。
それなら、「こういうことだから、例えば○○」といったように、しくみ+具体的対応、をセットで伝えることが、事業主支援をする上では必要なことになってくるのではないだろうか。
そういった視点から読むと、本書はそのまま資料に引用できそうな説明が多く、今後しばらくは資料作りのお供になりそうです。
 

おすすめ度:★★★★★(発達障害のある人と接する機会のある人にはおすすめ)