2010年7月18日日曜日

井寄奈美『トラブルにならない 社員の正しい辞めさせ方・給料の下げ方』日本実業出版社、2009年。

現役の社会保険労務士による、職場でもっともデリケートな人事の仕組みについて、それも特に降格や退職などいわゆる「後ろ向き」な決断に関するルールとコツを、事業主の立場からまとめたもの。
労働者のための労働基準法、労働契約法の解説書が次々と出版されている中、企業の立場でその矢面に立つ人のニーズに応えるための書籍といえる。
必要な法律をひきながらも、具体例をあげながら、かつ法律に留まらない判例のエッセンスも盛り込まれており、ケース毎に必要な内容がまとめられているため、私のように全般的に知りたい人から、「とりあえず一部だけでも」知りたい人まで、様々なニーズに対応できる内容となっている。
 
Iyokiyehaは、現在「事業主支援」が主たる業務になっている。
ジョブコーチ支援のコーディネートも、福祉の観点や、従来の視点としての「お願い」ベースではなく、企業の戦略・ニーズを踏まえた形で実施する必要があるため、それこそ様々な事業所ニーズに対応できなければならないと思って読んでみた。
そもそも、この業務ラインにいて事業所からの相談を受けていると「実はIyokiyehaさん・・・」と切り出されて、困った従業員の離職に関する相談を受けることが多くなったことがきっかけだった。
私の所属機関は、理念もあり、理想の社会を目指す視点がある(と思っています)のだけれども、もちろん企業の側にもニーズがあるわけで。
双方のニーズを調整できて始めて、所属機関の存在意義があるんじゃないかと考えた時に、きれいごとだけじゃやってられない!と思うところです。
企業担当者が「この人なら・・・」と相談してくれたのならば、「ここだけですよ・・・」ということで情報提供できるだけのスキルは、必要なのではないでしょうか。
 
事業主に適切な情報を提供するためには、法律ばかりガチガチなんじゃなくて、判例や近年の傾向などを踏まえた内容が必要かと。
人事のやや「後ろ向き」な話に対応するために、読んでおくといいかもしれません。
少なくとも、Iyokiyehaは結構重宝しています。
 
 
おすすめ度:★★★★☆(企業の人事担当者および、そうした方と接点のある人はぜひ)