2009年8月26日水曜日

内橋克人『共生の大地 ――新しい経済が始まる』岩波新書(新赤版381)、1995年。

今読んでも、全く色褪せない新書。

こういう本を名著と言うのだろう。

利益を追求してきた高度経済成長期を経て、バブル崩壊、再期をかけて社会のあらゆる人達が奮闘していた時期に、経済的な利益だけではなく、安い言葉かもしれないが、世のため人のため後世のために奮闘していた組織とそれを構成していた人達の記録である。

内橋氏は「多元的経済社会」という言葉を使いつつ、行政、政治主導の地域活動ではなく、企業や企業人の有志、果ては今では特に珍しくないが、市民活動に触れ、そこに多様な価値を見出していく。真の問題解決とは何か、よりよく暮らすとはどういうことかといったことについて、淡々と事例をおいながら考えさせる。

NPOを名乗る、行政の出先機関と化した団体も少なくない昨今、非営利活動とは一体何なのか、その本質や醍醐味、価値を、統計や数的データではない手法で見事にあぶり出している。

出版されてから既に15年くらいになる新書。

実はIyokiyehaの書棚にも学生の頃から並んでいた。

お世話になっていた、ある先生から「これは読んでおけ」と十回以上言われていて、なかなか読破できなかった本でもある。当時は紐解いたのだけれども、その面白さや迫力に気づけず、何度も延期扱いになった記念すべき書籍でもある。

当人がこのブログを見ているかどうかは分かりませんが、一応、報告も兼ねて。

専門書、ではないけれど、書籍としての成果は大きい、インパクトのある読み物だった。

社会人として、公的機関に所属する立場となったから、また違う読み方ができて、一気に読みきれたのかもしれない。

この迫力は、学生にもひよっこ社会人にも、ベテラン社会人にも味わってもらいたいものである。

おすすめ度:★★★★★(誰にでもおすすめ。言葉がわからなくても読み進めることをおすすめします)