2009年8月8日土曜日

マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳『天才! 成功する人々の法則』講談社、2009年。

久々に、がっつりと読み応えのある、面白い本だった。

いわゆる「成功者」の成功の秘訣を、その人の能力だけでなく、その人がおかれた生活環境や、文化などの影響に注目し、豊富な事例をもって説明している。

書籍紹介などで、引き合いに出されるのは、アイスホッケーのプロ選手に1~3月生まれが多いこと。

幼い頃の一年の差は大きく、「少しだけ」優位に立った子どもが、いいポジションやレギュラーを勝ち取っていく。

その結果、スキルを磨く機会にも恵まれることになり、結果としてプロ選手への道もひらけてくる。

グラッドウェルは、こうした「機会」に注目することと、「10000時間の法則」としての、努力や取組みの重要性を合わせて主張している。

面白いのは、いわゆる「天才」と呼ばれる人たちを、「生まれつきの才能を持った、特殊な存在」として「のみ」扱うのではなく、その育った背景やブレイクスルーの機会、努力の時間など、論述可能な「見えるカタチ」で記述している点である。

一方で、IQ180の能力を持つ人の非成功例をあげ、人と関わることによって生まれる機会や、人と関わることによってのみ磨かれる力などについても言及している。

久々に読み応えのある本だが、論文とは少し違う色合いだったのも事実。

おそらく、統計手法やデータにはつっこみどころもあるのだろう(私は専門家でないので、特に気にはならないが)。

しかし、細部をつつきながら読むよりも、もっと大胆に、「天才」と一言で言ったときのラベルのパラダイムを転換する意味でも、努力の方法や成果をふりかえるためにも、参考となる一冊だと思う。

おすすめ度:★★★★★(どんな人にもおすすめです)