2009年8月31日月曜日

柳井正『一勝九敗』新潮文庫、2006年。

ユニクロでご存知、ファーストリテイリングの柳井会長兼CEOが、2003年頃までの同社の沿革を、柳井氏の経営理念とともに語った著書。

前衛的な経営が店舗運営にも反映されているようにも思われる同社の経営、運営方針から、一社会人として学ぶことも多い。

柳井氏とファーストリテイリングのこれまでの経緯全体を読んで感じたことは、「試行錯誤」を徹底してやっていくのであれば、スピード感と何が何でもやってやろうとする執念というか、強い意志が不可欠であるということ。

のんびりと失敗、再検討を繰り返していたら、それこそぬるま湯の蛙のように、いつの間にか煮立っていることに気づかず、事業で言えば沈没-整理という一路をたどることになる。

自らの仕事も同様。可能なところで、如何にスピード感を保つか、意志と情勢を如何に調整させていくのか、ということが、現代を生き残る上で不可欠な要素であるかということを改めて確認できた。

いくつか気になる点(ドッグイヤー的に)は以下の通り。引用含みます。

・試行錯誤の土台は、スピードとがむしゃらさ。とにかくスピードが要求され、常時リストラ(再構築の原意で)、失敗した場合の「即時撤退」が鍵。

・広告宣伝は、0か100かの評価。ほどよい、はありえない。広告を見る人を信頼し、「伝える」のではなく「伝わる」表現方法を、コンセプトを解釈した上で、自由な発想で考える。代理店に丸投げするのではなく、広告主がクリエイターに「伝える」ことを怠ってはいけない。

・「店長でいる」ことが最終目標。店長はスタートでありゴールである。顧客の最前線で店舗を運営する。本部の意向をくんで、逐一本部の指示を仰ぎ、マニュアルをこなすのではなく、現場の意向を本部の方針に反映させるために、優秀な店長が現場にいることが大切。

ユニクロの広告戦略は、最近本当に「上手い」と思うところであるけれど、長年通じて積み重ねられた経験の賜物であることを実感できた。

「伝える」も大切だけれども、「伝わる」ことが最も大切であること。

そして、自分が伝えたとおりに「伝わる」かどうかは、かなり差があること。

広告戦略とはいえ、自らのカウンセリングにおいても、いかに「伝える」かと同時に、どう「伝わる」のかということを意識したやりとりが実は大切なんじゃないか、今までやっていて感じることのあった「違和感」は、ひょっとしたらこういうところ(要は、私が伝えたと思っていて、相手を観察した伝わったと思っていることが、実は相手にしてみたら私の意図とは違うように伝わっていた、という状況)にあるのではないかと、経験を再検討するきっかけになった。

あとは、現場主義。

この感覚だけは、私が今後どんな立場になっても忘れないようにしようと、再確認できた。

「立場上」ということを、感じ、場合によっては言う必要もでてくることがあるかもしれないけれども、現場で何が起こっているのか、最前線では何がトピックなのか、ということをできれば自ら体験するくらいの意欲をもって、現場に対峙していきたいと思った。


おすすめ度:★★★★☆(働いている人におすすめ)