2023年5月13日土曜日

ピーター・シス作、福本友美子訳『ニッキーとヴィエラ ホロコーストの静かな英雄と救われた少女』BL出版、2022年。

  ナチスドイツによるチェコ侵攻に伴い、イギリスに逃れた少女ヴィエルシカ・ディアマントヴァー(ヴィエラ)と、チェコスロヴァキアのこども達をイギリスに避難させることを、民間人として取り組んだイギリス人ニコラス・ウィントン(ニコラス)のそれぞれの物語です。大判絵本で、私の図書館シリーズです。

 イギリス人バンカーだったニッキーは、仕事というよりもプライベートで訪れていたチェコにて戦禍と関わることになり、その中でこども達の疎開をイギリスで受け容れることに取り組むことになります。その取り組みによって戦禍を免れた少女ヴィエラ。チェコで生まれ育ち、家族と暮らしていた平和な日常がナチスドイツの侵攻によって破られます。ヴィエラの両親はヴィエラをイギリスに逃がすことにしましたが、その後ヴィエラと再会することはできませんでした。

 この取り組みについて、ニッキーはその後50年ほど沈黙を守っていたのですが、家族がその資料を見つけて事実を知ります。テレビ出演したその席で、ニッキーの取り組みによって命を救われた人たちが名乗り出る、というエピソードによって、この取り組みが再び世に語られることになった、というお話です。

 どんな世の中にも、人としての信念を貫くことで、歴史の表舞台では語られずとも、人の命を救い、生活を支えている人がいるのだと、改めて感じ取れた一冊でした。戦争を知らない私のような世代の人間が、戦争を語ることには躊躇してしまいがちなのですが、子どもには、素晴らしい人の素晴らしい取り組みをプロが切り取ったものを、きちんと伝えていきたいと思うに至った一冊でした。