2019年3月2日土曜日

働くことコラム07:会社を選ぶ理由1 -まずは自分の理由

 就職活動の相談において、これまたよくあるやりとりでした。

 Q(提出された求人票を見て)  「どうして、この会社を選んだの?」
 A1「仕事内容が希望している『事務』だからです。」
 A2「ホームページを見たら、経営理念がよかったからです。」
 A3「希望条件と合うからです。」

 まぁ、様々だったわけですが、Iyokiyehaさんは「もっと個人的な理由はないの?」と追い打ちをかけていました。大抵、黙ってしまうか「・・・通いやすいから」といった回答だったでしょうか。
 面接対策にも通じる「志望動機」ですが、労働市場にいる多くの人が「『近いから』じゃだめと言われた。会社を調べてみて経営理念がいいと思ったから、書いてみた」と持ってきます。支援者が「これじゃあだめだ」と言ってしまうと、就職者はなにを書いたらいいかわからなくなってしまいます。しかし「これでよし!」と言えるものが出てこない。就職活動を支える現場において、お互いの言葉がすれ違いやすいところだと思います。
 一支援者だったIyokiyehaとしては、「近いから」でもいいと思っています。ただしこれには条件があります。それは「自分の就職(転職)における企業選定の理由と合致していること」です。例えば、足に障害があるので長距離通勤が困難であるから、自宅に「近い」企業を選んだ、という理由ならば納得感を得られやすいでしょう。あるいは、震災の時に帰宅難民になったことがあって、家族を守る必要があるから、最悪の事態でも3時間歩けば帰れる場所で選んだ、というのも理由にはなりそうです。「電車の振動で酔いやすく、電車通勤が自分にとっては苦痛でしかないので、徒歩か自転車で通える場所にした」でもいいでしょう。この「近いから」が唯一無二の理由でなければ、上記はいずれも就職活動の場面でも通用するある程度の理由になりえます。
 「近いから」で盛り上がってしまいましたが、ここでの要点は、「自分にとっての就職(転職)理由は、個人的なことでもいい」ということです。理想的には「キャリアにとってどういう位置付けか」を加えて両輪となるのがよい、とされています。志望動機対策全般にも通じてきますが、上記を企業の選定理由にも反映させて「見せる」ことが重要です。ちょっとまとめてみると、
 1 自分にとっての就職(転職)理由を明確にする。
 2 会社の選定理由を1と連動させる。
 ということです。ここはバラバラに考えがちだけれども、連動させることが、相手の納得感につながりますし、何よりここを考え抜くことによって、面接対策になってきます。自分の核が定まって、それが一つか二つの文章に集約できれば、それが決めセリフにもなるし、どんな質問がきてもその核を外さなければ一貫性のある回答が可能となります。
 ちなみに、上記のまとめだと1→2の順で考えがちですが、2→1の順に考えが深まっていく、ということもあります。その意味ではこれらはサイクルとなって、就職活動が終わるまでいつまでもいつまでも考え、意識することになってきます。
 ということで、会社の選び方は「自分の就職(転職)理由と連動した理由で選ぶ」か「適当に選んで、自分の就職(転職)理由と連動させてみる」と、大きく2つあることになります。選んで、考えて、書いてみる。考えて、書いて、選んでみる。あるいは、書いてみたら、深まって、選べるようになる」など、様々なパターンがあると思います。求人は生物(なまもの)ですので、自分にとって「最も良い」ものを選びたいところですが、実際には、「その時々で、自分にとっての最善を選ぶ」ことになると思います。