2019年3月24日日曜日

働くことコラム08:会社を選ぶ理由2 -夢を語るか、現実を語るか

 Q「志望動機がうまくかけないんです」

 就職活動をしている人と関わると、立場はどうあれこういった質問があります。履歴書や応募書類に記載する「志望動機」欄の内容ですね。

 Q「この会社に入って、どうしたいかわからないんです」

 先に「立場はどうあれ」と書きましたが、Iyokiyehaさんは支援者としてだけでなく、就職活動をする身であった時期があるので、当事者として同じ問いを発していました。○○という会社に入った自分はどうしたいのか?地方公務員になった自分は何をしたいのか?
 「企業分析が足りません」と言われてしまうかもしれませんが、実際に就職活動をする身になると、対象となる組織のことを調べれば調べるほど、自分の能力との乖離を感じ、何もできないような気になってくるし、まして地方公務員なんていう職は、配属課が違えばやる仕事なんか全く違うわけで、Iyokiyehaさんの場合は特に「自分の10数年の経験がそのまま活かせる部署はない」ため、どうしたものかと悩んだものです。
 もう少し突っ込むと、私の場合は相手が勘違いしてくれる経験でしたので、その勘違いを逆手にとりこちらの土俵に引き込んだ上で「経験に関わらず何でも挑戦したいです」みたいに広がりをつけて自分を見せていくという手法をとることが結果につながったわけですが、世の中そううまくいくことばかりではないわけで。

 とはいえ、上記を含めて、基本的な考え方は「労働市場や応募者属性の中で、自分はどう位置づけられるだろうか」ということを考えた上で、その「見え方」に沿った準備をする、ことは変わらないと思います。このことは先にコラムでとりあげた話題である「自分はどのようにみられているのか」ということと関係してきます。

 わかりやすい例をあげれば、新卒採用と中途採用とでは見られ方(≒採用基準)が異なるわけです。では、それぞれ何が求められているのか。
 一言でいえば、新卒採用者には「大きな可能性」が求められ、中途採用者には「経験に基づいた柔軟な発想を持ち込むこと」または「最先端の知識・技能を生かした、新しい事業の原動力」といったところでしょう。中途採用の場合は、どんな求人かということによってもその内容は大きく変わってきます。要は、どんな求人なのか、そこに応募してくる人はどんな人達なのか、その中で自分はどんな位置づけなのか・どうあるべきなのか、ということから、ある程度は答えが導かれると思います。

 「志望動機」を考えていく時に、この点を外してしまうと「御社の企業理念に共感しました」みたいな、ちょっとかっこいい言葉を並べて、自分のことを何も伝えられない内容になってしまいます。
 人によって、求人によっては、大きな夢を語ることが回答となるようなものがあるのかもしれません。自己啓発に関する読み物や、いわゆる成功者の手記やインタビューなどには、そうした「夢」を言葉にすることが語られていることがあります。ただ、私がこれまでに接してきた自他併せ数百件就職活動において、そうした大きな「夢」を語るよう求められたのは1件のみです。多くの場合は「現実を伝わる言葉にする」ことが求められるのでしょうし、たとえ「夢」を語ることが求められたとしても、その時は「自分の描く夢を、伝わる言葉にする」ことが求められるのだと思います。そう考えれば、これまでに重要としてきた「自己分析」を広く深く行い、自分の核と言えるものを伝わる言葉にする作業はどんな就職活動にも求められる基本動作だと考えることができます。この基本動作と、求人や採用の背景とが交差したところに、「求められる志望動機」があるわけです。

 よく言われる「自己分析」と、いつも足りないと言われる「企業分析」。「企業分析」は「求人分析」とも読めるでしょう。どんな会社が、どんな人を求めているのか、自己分析によってまとまる自分は、そのどこに当てはまるのか。その「接点」が、応募する理由でしょうし、いわゆる「志望動機」になるんじゃないでしょうか。

 ちなみに、Iyokiyehaの地方公務員への転職活動においては、転職動機の核は「子どもたちのふるさとにしたい」で、この街に住み続ける理由で理論武装しました。自分のキャリアに関しては、公務労働を「人権を守る仕事」「住民を(様々な角度から)守る仕事」とまとめ、この言葉に今までの仕事の意味とこれからの未知の仕事の意味とをこれらのキーワードに乗せて面接に臨みました。その問答がどう評価されたかはわかりませんが、少なくとも「まずい回答」にはならなかったと思います。