2009年4月29日水曜日

【メモ】 ノーマン・ドイジ著、竹迫仁子訳『脳は奇跡を起こす』講談社インターナショナル、2008年。

このレビューをアップする時には、まだ読み終わっていないが、興味深い内容があったのでメモを兼ねて。
「神経可塑性」をキーワードに、脳の変化について、様々な事例を紹介している。
学習障害が回復(という表現が正しいのかどうかわからないが)した人や、生まれながらに視覚障害を持つ人の視力が改善した例など様々である。
おそらくこれらの学術的成果というのは、脳の専門分野の第一線の学者が、その最先端の知見を用いて切り開いている領域だと思われるが、学者でない一般の人にもイメージしやすくわかりやすい内容となっているのは、この本が世に出た大きな成果の一つだと思う。

第4章「性的な嗜好と愛」で、一部触れられているオキシトシンというホルモンが結婚後の人間のしくみを大きく変えているといったくだりが非常に印象的だった。
Iyokiyehaが、結婚後の自分を振り返ると必ず浮かぶ疑問、「結構変わったよなぁ」と思うことがいくつかある。
性格、までいくと大袈裟だが、嗜好や趣味、気になることが、独身時代とはかなり変化していることに気づく。
「結婚って、やっぱり人生にあたえる変化は大きいんだな」とも思うが、一方で、IyokiyehaがIyokiyehaとして生きていることには、これっぽっちも変化はないわけで。

人は、環境の変化があると「なぜ」変わることができるのか?

という問いに対して、脳内の「神経調整物質(モジュレーター)」と呼ばれるものの一つオキシトシンが影響しているらしいという、解明の手がかりを見つけたように思えた。
神経伝達物質は「ニューロンを興奮させたり、抑制させるために、シナプスに放出される」物質だが、神経調整物質とは「シナプスの結合全体の有効性を促進させたり減少させたりして、持続する変化をもたらす」物資とのこと(同書148ページ)。
パートナーとの信頼関係や、子どもへの献身的な世話といった「やさしい感情」をもたらすだけでなく、新しいことを学習するために、これまでに築き上げた学習を手放す「脱学習」にも関与しているらしい。

つまり、これまでに築いてきた「大切だと思うもの」を、今に続く結婚の一連の過程において手放し、新しい価値観を取り入れている、その脱学習のためのホルモンが、どこかで体内に放出されていたとしたら、「大人になったなぁ」という形のない理由は、「身体の変化」から説明できることになる。

Iyokiyehaは、哲学とか思想も好きですが、自分のことを「しくみ」から知ることも大好きです。
最近読む本は、結構そのあたりを刺激してくれるものが多く、充実した読書ができています。