2009年4月26日日曜日

茂木健一郎『思考の補助線』ちくま新書、2008年。

テレビでもお馴染みになってきた、茂木氏の思考エッセイ。
学術成果というよりも、茂木氏が解明しようとしていることの壮大な仮説を、いくつかの角度から表出したものと読める。
随所に専門用語もあり、細部をきちんと読み解こうとするとホネだが、そこまでしなくても思考の軌跡は読み解ける。
生命の本質を、部分ではなく全体性、多様性、関係性に主眼を置いて考えていくものとし、従来の脳科学(と思われるが)の成果を否定せず、それをも引き受けながら、学術分野でいえば人文科学的な哲学・思想、芸術的な知見を「補助線」としながら自由に思索を展開している。

Iyokiyehaは、このブログでも時々引用する森岡正博氏の「生命学」や「無痛文明」に出会ってから、学際的な思考の広げ方、深め方には全く抵抗がなく、むしろ「生き方」を問うためには、各学術分野の成果を断片的につなぎ合わせるだけでは、物足りないと考えている。
そのため、茂木氏の「脳科学に立脚しながら、何でもやる」という姿勢には大いに共感するし、著書はできるだけ目を通すようにしている。
テレビでの露出や、脳科学の扱い方、論述の展開の仕方等、人によっては賛否両論分かれているらしいけれども、少なくとも上述したことがIyokiyehaにも届いたということが、学者としての本分を満たしつつあるのではないかと思う。

おすすめ度:★★★★☆