2015年8月30日日曜日

職業リハビリテーション学会メモ

職業リハビリテーション学会 8/22,23

雑駁なメモですが公開します。

○研修基礎講座A「研究における倫理に関する考え方」
 愛知県立大学 吉川雅博

・大学では不正防止の研修会を開催している。
・大学関係者にとってはホットな話題である。
・看護学部(医療関係)は厳しい。看護学部の基準で考えられてしまう現状。
・不正が絶えない。守るべきことは守るべき。

・新たな「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」
・日本介護福祉学会の研究倫理指針(改訂予定)。
・看護と福祉(就労支援の現場)とでは考え方が異なるものの、研究倫理を考える上で参考になる。(レジュメ・Web参照)
・記載事項は当たり前のことばかり。内容に目新しさはない。
・インフォームドコンセントは口頭ではなく書面で確認する。
・(知的障害者であっても)本人の了解を得るのが原則。
・どれだけ変なことを考えてると思っていても、3人くらいは同じことを考える人がいる(先行研究について)。
・先行研究の知見と自分の知見とを区別して述べる必要がある。
・引用は原典を原則とする。原典が入手できない場合等のみ「孫引き」が許される。
・盗用と「ひょうせつ」。他者の行った研究成果をそのまま、あるいは僅かに変えただけで自分の論文に使用した場合。糾弾・告発される行為である。
・匿名性の確保。対象者を特定できないように匿名化する。介護過程、内容のリアリティを損なうことがない程度に事例を加工して用いる。加工している場合にはその旨を明示する。
・事例使用の場合は、当事者から文書で承諾を得ることを原則とする。
・調査研究と実践研究とでは手法が異なる。調査研究は統計処理により結果がでる「つもり」になってしまうので、注意が必要。
・改竄・捏造:代表的なデータのみを示す場合には、その選択の客観的な基準を明示する。


○基調講演
 厚生労働省事務次官
 村木厚子
・障害者雇用支援法3条、5条の面白さ。昭和35年から変わらない条文。
・障害者雇用率は「宿題」の制度。
・法定雇用率の算出に関して、失業障害者が増えれば雇用率は上昇する(分子に入る障害者数は「失業している」者。


○教育ワークショップ5
 企業の勘所を理解するために
 就労支援で必要な労務管理の基礎を学ぶ
 白矢桂子(社会保険労務士)
 眞保智子(法政大学)コーディネーター
・社会保険労務士としてではなく、企業の人事担当者としての立場で話をする。
・労働法、労務管理について。「ざっくりわかる」内容。
・障害者雇用対策における雇用義務。2010年4月~200人超、2015年7月~100人超。
・企業従業員規模別企業数(総務省・経済産業省 経済センサス2012年)
 100-299人規模  1%
 300-  人規模 0.4%
・100人前後規模の企業は本当に中小企業。
・厚生労働白書「若者の意識を探る」より。働く目的の変化。
※価値観の多様化ではないか?
・人事の仕事とは?「労政時報」
 仕事は多岐に渡る。すべてわかっている人はまれ。
 人事マネジメントは企業における経営機能の一部である。したがって、人材マネジメントは経営に資することが求められる。
・労働法とは総称。労働三法とは、労働組合法・労働基準法・労働関係調整法。
・要となるのは労働基準法。1947年。
・労基法で保護すべき人は、年少者と妊産婦。障害者は別の法律。労基法の基準は最低のもの。
・「給与支払いの5原則」。「ノーワークノーペイ」、働いた分だけ支払うのが会社の考え方。
・労務管理について。
 就業規則=労務管理の根幹。経営者と従業員の間の無用な争いを未然に防ぐもの。あらかじめ労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準を定める。
・絶対的必要記載事項=労働時間関係、賃金関係、退職関係。
・相対的必要記載事項=退職手当関係、臨時の賃金・最低賃金額関係、費用負担関係、安全衛生関係他。会社によって定めることができる。就業規則や契約書に記載したら効力が発揮される。
・常時10人以上の労働者を使用する事業場において、これを作成し、所轄労働基準監督署長に届け出る。(変更の場合も同様)
・企業単位ではなく、事業場単位で作成。
・共通するものはあまりなく、法律に従ってさえいれば各会社が自由に設定できる。(儲かる会社の源泉であることも多い。なかなか開示はされないもの)他者の就業規則をそのまま使う、厚労省などの雛形をそのまま使う、などの方法もある。
・労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者の意見を記し、記名押印のある書面(意見書)を添付する。
・労働者がいつでも見られる場所に設置する。電子媒体可。
・人事としては、働きやすい環境を作る、能力を発揮できる環境を作る視点とともに、有能な人材に如何にきてもらうか保護するかという視点で考える。また、がんばらない人にどのように退場してもらうか。
・「試用期間」は法的には2週間。就業規則に「三ヶ月」と記載があっても、法が優先される。
・退職に関して円満退職にあたり、1~2ヶ月の猶予が推奨される。
・一般的な労務管理のキーワード。
 営利目的
 No work No payのルール
 就業規則=労務管理の根幹であり、利益の源泉

・『仕事の経済学』小池和男2005より
 仕事はもちろん
 人生の一部にすぎないが
 まことに重要な一部であり
 人生におよぼす仕事の影響は
 計り知れないほど深い
・『たとえぼくに明日はなくとも』石川正一1973より
 もしも人間の生きる価値が
 社会に役立つことで決まるなら
 ぼくたちには
 生きる価値も権利もない
 しかし どんな人間にも差別なく
 生きる価値があるのなら
 それは 何によるのだろうか
・障害があっても働きやすい会社になると、部署全体の生産性があがる。障害者雇用は「会社が儲かるため」のしくみづくりにつながっている。会社は人を高める場所。

・障害者の労務管理について、実践は進んでいても研究が進んでいない。
・知的障害者の能力が「伸びる」という発想。
・「短時間労働を命じることがある」の一文を入れておく。従来の就業規則を援用できる。
・個別的人事管理の方が生産性が高まるのではないか?(眞保)「個別化」
・合理的配慮(理にかなった、一般の人が聞いておかしくない範囲)を採用段階から取り組んできた実践報告を発表予定。支援者が当事者の尊厳を守って提案していく役割を担うことになる。役割は重要。
・試用期間二週間以内ならば、同意のみで契約解消可。二週間を超えた場合は解雇の手続きとなる。30日分の給与支払いを取り付け退職する。
・障害者のパフォーマンス向上のために人事ができること。IDを腕章化する案について「他の従業員と同じがいい」という返答。配慮の内容が必ず正しいわけではない。その人が望んでいることを明らかにして、できることとそうでないことを整理する。できることに取り組む。
・辞めたい本人と辞めさせたくない親と何とかしたい担当者。会社としては儲かるかどうか。損益計算書に良い影響があるか?労働法上は指導を重ねた上でなければ辞めさせられないが、その人が戦力になることにより会社は更なる利益が得られると思う。
・できないと思うことこそ、儲けの源泉となりうる。


第6分科会
○海老田大五朗
・エスノメソトロジーとは、相互作用を明らかにする研究法。
・「現場でやっていること」を言語化する。概念を明らかにして説明力があがるのではないか。暗黙地、経験値を言語化する。
・今後は、デザイン・調整の部分。ある実践や研究を自分に取り込む時に、そのままでは取り込めない部分。

○牧裕夫
・「試行錯誤」は排除すべきものとしてとらえられがち。失敗は少ない方がいいとされることへの疑問。
・常に逐次的な相互作用が発生している。
・研究で取り上げられないやりとり。
・「存在のおもしろみ(和気藹々)」に支援者の「真の挑戦(牧さんの挑戦)」が加わることにより、「個人の成長」が促される。(E・ライアン)
・目標達成されなかったときに「希望」があるか。希望の共有がされているか、支援者が真の挑戦をしているか。
・評価・計画・目標達成と併せて現場の可能性は、共有と結果。
・拍手の教えかた。状況論。行動だけを切り取るのではなく、状況に基づく結果(よかった、楽しい、を伝える。グルーヴ)
・改善は螺旋型。マックロリー

○山田
・タブレット端末を使った喫茶サービス。


○シンポジウム
(小川)
・支援の増加に対する人員の増加が認められるが、十分かどうかは未整理。
・研修や経験が蓄積される仕組みは乏しい。
・現在行われている研修が現状に合っているか?
・職業リハビリテーションや就労支援の専門性をどのようにとらえるかに関する議論が不足しているのではないか。
(野崎)
・専門職としての知識・経験に加え、地域住民として地域
に接近する力が求められる。
・一緒にまちの課題に向き合い、「周辺」に参加し続けること。参加の方法は様々。
・仕事を作り出す、地方型の就労支援。
(千田)
・増え続ける求人にどう対応するか。
・地域に暮らしている人の視点が不可欠。
・就労支援員でありながら、生活支援・個別面談が優先されてしまう現状。
・医療と就労支援のそれぞれの意見を「すりあわせる」ことが必要。
・医療からは「環境」がわからない。環境との相互作用を理解したい。介入できない。就労支援に期待するものの、思い通りにならない。
・孤独に仕事をすると、独りよがりになりがち。
・協働・連携になっているか。立場の違いから、方針が完全に共有されることはあまりないはず。それを超えていくことが必要だと思うが。
・「流れ」に乗っていれば、何となく仕事が済んでしまう現状と不全感の蔓延。
○井口修一
・リソースを成果につなげる、人材育成の順番が入れ替わった。人材育成が優先。
・社会的な役割、資格・教育システム、知識体系がある。
・基本的にはOJT。指針に沿って計画的なOJTを実施する。
(朝日)

・就労支援と職業リハビリテーションの理念をどう共有するか。整理するか。就労支援はどんな理念に基づいて行われているのか。就労支援の裾野は確実に広がっている。
・障害者に向き合う部分と、働く環境に向き合う部分、双方に対象がある。宿命。働く環境へ向かう部分が弱いのではないか。経験が不足しがちな宿命にある。
・生活支援と就労支援の連続性の中で就労支援の専門性をどう位置づけるか。
・専門性が「法制度に規定(縛られて)されすぎている」のではないか?

・就労支援の専門家って誰?広い意味では対人援助。
・専門性と非専門性の連続性(グラデーション)。忘れられるのがいいジョブコーチ。
・状況を俯瞰できる包括力。

・人材育成をどのように位置づけるか。エクスキューズでない計画的な位置づけ。
・キャリアパスの明確化。
・誰のための専門性か?

○現場の実状を確認しよう。
・略
○どんな技術が必要なのか。
・町の課題に関わること、地域に関わることは職リハなのか?→核ではないかもしれない。(野崎)
・→職リハか就労支援かという整理は不明。ただ、その人その地域でレシピ入手が就労支援とどう関わるか、という視点は必要(朝日)何が最適なのか?と考えた時には位置付くこともあるのではないか(千田)。事業が増えていてすべてできる人がいない現状もある。基本的なプロセスを押さえる必要がある。対象者に合わせてプログラムが発生する。(井口)
・職業リハビリテーションなのか、ソーシャルワーカーなのかわからないキーワード。ここでは職リハを整理する。レシピをどう位置づけるのか。周辺のような気がする。
・裾野が広がっている。グラデーションは核がなければごちゃまぜ。核は何か?(小川)
・→那須地域で働く人については核になる可能性がある。一人の対象者をどうとらえるか、という視点と関連。(野崎)実践上の整理と理論的な整理とでは異なる。実践的なことは地域により異なる。(小川)就労支援だけでなく周辺を如何にやり続けるかを考える。(野崎)
・職業評価、計画策定が基本。相談・アセスメント・計画ができて、企業にアドバイスができること。(井口)
・グラデーションは一人の対象者について、連携を通じてどのような色合いを出していくかという文脈の言葉。ILOに照らした時にも、状況に応じて柔軟に変わっていくものではあることが示唆されている。人によっては生活から入ることもある。ただし、職リハとして取り組んでいく切り口みたいなものはあるだろう。(朝日)
・相談・アセスメント・計画のプロセスは基本だと思うが、機能しているか?(小川)
・プロセスとして共有できるケースが少ないのが残念だが実際かもしれない(千田)。イメージはしているが、平行して進んでいるとその場の対応になっていることもある(野崎)。基本に忠実な支援ばかりだと物足りなさがあるかもしれない。基本を大事にするといっても、縛られないことも大切ではないか。(朝日)
・支援はある機関が全部やるというのは不可能。他機関、他職種で一緒にやったりつなげたりすることも大切。他職種で検討する機会がもっと必要か。(井口)
・否定する内容は何もないが、では連携で関わっているかというととたんに不安になるような現状もあるのではないか。(朝日)他職種で関わっていく機会はあるが、それが機能しているのか?プロセスの中で検証していく仕組みにはなっていない(小川)

○方法と技術の向上(方策)。
・専門機関の連携はそれほど多くない。支援員は少ない。あるものしか使えない。制度の継ぎ目の問題もあるが、シームレス、一体化したものが必要だが、それに向けて孤軍奮闘している。それで不安になっている。迷っている層と意識低い層それぞれどうするか(野崎)。
・アプシ(CRCの他にあるジョブコーチの協会、米国の組織)の集まりに参加。独自の資格をとっている人達の雰囲気を感じた。そういう場がほしいなと思った。互いに切磋琢磨できる場がほしい(千田)。
・中核要素を整理して研修と達成度確認を行うことで資格制度になる。(補足:小川)
・段階・対象に応じた研修制度が必要であること。機構が担うところではある。助言・援助業務の理解。(井口)
・基本プロセスを押さえる内容はどの部分か?(小川)
・レベルに応じた対外的な研修、必要な要素は網羅されている。(井口)
・流れに乗っていれば過ぎてしまうという千田さんの指摘が印象的。形式的な評価はあるが、「いい支援か」という評価はまだされていない。いい取り組みを評価する仕組みがあると、想像的な場面に向き合えるのでは?承認を受ける、評価を受ける仕組みが必要なのではないか。
○学会としてどう取り組むか
・スーパーバイザーの育成。(井口)
・ブロック理事活動で何かできるのでは?(野崎)
・スーパービジョンに関することは報告にもあがってる。本学会は学際性を基盤としており、学術性・実践性の融合を謳っている。他職種が様々に発言して、実践手法の普遍化・共有化を図り、確認していくことが必要か。資格を示すのは簡単かもしれないが、先を見据えた内容にするためには準備が必要。(朝日)
・薄まっている気がする。グラデーションの元は何か?(小川)