2012年6月17日日曜日

ペマ・ギャルポ著『ワンチュク国王から教わったこと』PHP研究所、2012年。


著者は昨年末来日されたブータンのワンチュク国王の通訳を務めたペマ・ギャルポ氏。桐蔭大学の先生とのこと。

・リーダーは誠実さと強い責任感が求められるが、それ以前に「ひとりの良き人間であれ」
・小国の国王であっても、大国に負けない哲学と義務感、おもいやり
・「龍」に込められた意味
・「改革」と「改善」の意味するところ

笑顔がステキなワンチュク国王、王妃はきれいだなぁと、表紙を見てもった第一印象でした。若干31歳で国王というのが、ブータンの仕組みはわからないものの「すごいなぁ」と思ってしまいました。
ワンチュク国王が来日されたことは知っていたけれども、私はそれほど興味を持っていたわけではありませんでした。ブータンがGNHという尺度を用いて国を評価していることと、そうは言っても電気を含むインフラ整備が日本のそれとは比べものにならないほど遅れている、といったコメントを耳にしたことがあるくらいでした。
ただ、ワンチュク国王の国会演説の原稿(本書に掲載)や、その演説に至る国王の基本的な考え方や姿勢を知るにつれ、今までほとんど興味のなかったブータンという国がまた新しい見え方をしたのを実感しています。

それぞれが持っている情熱や夢。いわば内発的な行動を促す意識や考え方を「龍」という架空の生き物の名を借りて表現すること。心の中の龍(ドラゴン)が食べているのが経験という話は、経験から身につく知恵が重要であることを示している。大きな龍は尊敬に値するものであること、そして龍を上手に操らなければならないことを被災地の子どもたちに語ったエピソードに、思わずはっとさせられました。

「改革」とは劇的に展開すること。法律制定等、新しい立憲君主制としての国づくりをするために、2年かけて全国各地を巡り、国民の声を聞きつつ新憲法の内容や国がよい方向に向かっていくことについて語り、改めるところは改め徐々に変えていく、という手法をとっている。

器の大きな人は、考えることもやることも本質をついているように思います。瑣末なこと、枝葉の議論も大切ではあるのですが、いつもその核(コア?)を見抜き、ぶれない芯をもって事を為す、そんなことを本著から感じ取りました。いい読書でした。