2022年11月4日金曜日

かみやとしこ作、かわいちひろ絵『屋根に上る』学研プラス、2021年。

 図書館シリーズ。最近は、次女(小学校2年生)が読めるもの、だけでなく、自分がさらりと読めるもの、も選んでいる。本書は後者。題名もさることながら、表紙のイラストと内容をパラパラ見たところで借りてみた。

 中学生男子のちょっとした人間関係に、祖父と接点のあった高齢男性(田村さん)とその大工仕事が関わってくるお話。思春期手前のもやもや感をそのままに、大人が大人の理屈と子どもたちに寄り添う様子を描いている。ちょっと関わりがとがった感じのある友人一樹とのやりとりを中心に、主人公の思いや田村さんの気遣いが暖かい。

 心があたたまる読み物に触れるようになり、こういうティーンズ向けの小説って、若い時にもっと読んでおけばよかったなぁとも思うようになる。シンプルな言い回しの中に、ちょっとした心の動きが描かれていて、それでいて本当の意味での悪者がでない、どこにでもある日常にちょっとしたドラマがある。ほら、実際の生活は小説より奇なりとも言えるくらい、身近なところにいろんなことがあるだけでなく、いわゆる「普通の生活」にも人は迷うことがあり、合理的でない行動をとる。その背景には、それぞれに様々な思考があるわけで、こうした小説にはそうした「普通の生活の中にある心情」が描かれている。悪者が出てこないので、読んでいて心地いい。