2019年8月16日金曜日

水谷修『夜回り先生』小学館文庫(Kindle版)、2011年。/水谷修『夜回り先生と夜眠れない子どもたち』小学館文庫(Kindle版)2011年。

・学生の頃に読んだ2冊である。今回は薬物依存に関する勉強をする必要があり、その情報収集がきっかけで読むことになった。
・薬物依存の詳細は次書に譲るとして、本書は古いものでありながら、氏がライフワーク(?)として行っている「夜回り」と、そこで出会った子どもたちに関して書かれている。
・書籍化されているわけだから、もちろんこれがすべてではないだろうし、この内容で「夜回り」の是非が問えるわけもない。ただ、一つだけ言えるのは、水谷氏の「夜回り」によって、救われた人がいるということである。
・当然、救われなかった人もいるわけだが、要は是非で問えないということである。きっと「やりすぎだ」とか「何かあったら誰が責任をとるのか」等言われてきたのだろう。
・水谷氏は、少なくとも本書においては、この点一貫しているように読むことができた。すなわち、(多くの人の支えがありながらも)自分で負える責任の範囲ですべてを行っている、ということだ。
・水谷氏の立場は明確だ。「支える人」に徹し、「子どもたちを夜の街から出ていく」ようにする。それは、明日のために未来のために、と単純明快な立場である。ただ、その立場を貫くことが、現代においては最大級の困難さを伴い、常に悩み続けなければならないことなのだろう。

(以下、引用)
1:
No204 「水谷先生、彼を殺したのは君だよ。いいかい、シンナーや覚せい剤は簡単にやめさせることができない。それは“依存症”という病気だからだ。あなたはその病気を“愛”の力で治そうとした。しかし病気を“愛”や“罰”の力で治せますか?高熱で苦しむ生徒を、愛情こめて抱きしめたら熱が下がりますか?『お前の根性がたるんでるからだ』と叱って、熱が下がりますか?病気を治すのは私たち医者の仕事です。無理をしましたね」
2:
No43 目的は二つある。一つは薬物の売人や、風俗のスカウトが子どもたちに近づかないように注意すること。もう一つは、より多く子どもたちと出会い、彼らの将来について真剣に語り合うことだ。
No387 会う前に変わってほしかった。自分で決めて、責任を持ち、一歩を踏み出しなさい。私はすべての子どもにそう伝えてきた。さもないと、その子どもは最初に手を貸してくれた人間に依存するようになってしまう。それだけは避けたかった。一人の人間を一時的に手助けすることは簡単だが、一生助け続けることは不可能である。
No577 ドラッグは人を3回殺します。(心、頭、身体)
No672 子どもは失敗して当たり前である。でもその失敗を許せない大人があまりにも多すぎる。