2019年6月2日日曜日

出口汪『頭がよくなる!大人の論理力ドリル』フォレスト出版、2016年。

・「論理」とは「規則にしたがって、言葉を速く正確に使」うこと。(P4)
・私たちは、物事を「言葉」を使って考える。その言葉遣い(違い)が速く・正確ならば、「論理力がある(高い)」と評価され、一方で、その言葉使いが巧みであれば「感性がある」と評価される。
・論理が明確な文章であれば、多くの人に伝わる、わかりやすいものになる。一方で、感性豊かな文章は、それが分かる人にとってはより正確により情報量のある理解を得ることができる。
・論理と感性、いずれも言葉を用いるもの。相反するものではなく「ともに、言語処理能力を高めることで、鍛え、磨きあげることができる」もの(P204)。
・地味なドリル形式の本。文学作品に込められた論理を取り出して、論理力を意識した読み方ができるような問題で構成されている。おそらく、ターゲットは私のような一般人向けなのだろう。現代文(小説)程度の内容であると思う。
・文学作品を論理的に、言葉をおいながら丁寧に読むことをこれまでやってこなかったので、本著の内容は大変新鮮だった。

(以下、引用)
4 規則にしたがって、言葉を速く正確に使えれば、「論理力」となります。言葉の微妙な使い方が巧みになれば、豊かな「感受性」となります。
6 論理力が身につくと、次のような能力がどんどん開花していきます。 ①文章を論理的に読み、理解、整理することが楽になり、速読にも威力を発揮。 ②人の話のすじみちを、瞬時に理解できるようになり、のみこみが速くなる。 ③読み取ったことを論理的に考えることによって、思考能力が身につく。 ④自分の考えをすじみち立てて話したり、論理的な文章を書けるようになる。
10 文学作品とは、実に感覚的なものだと、思い込んではいませんか?もちろん、筆者の独自の世界観や鋭い感性がそこにはあるのですが、それを不特定多数の読者に伝えようとするとき、いきおい文章は論理的にならざるを得ないのです。
22 述語から、主語をつかまえることがコツです。
23 文章を論理的に読む基本は、「主語?述語」をおさえることだと考えてください。 同 言葉は必ず他の言葉とつながります。(中略)感動詞以外は必ず他の言葉とつながっているのです。
25 接続語に着目して読むのが、論理的な読解の第一歩なのです。
28 すじみちの立て方=論理は、大きく分けて三つあります。その一つが、「イコールの関係」です。(具体例、引用)
29 あるいは、反対意見Bを持ち出して、それをひっくり返します。そのようにして、自分の意見Aの正しさを説明できるのです。こういったものを、対立関係といいます。
31 論理的な文章では、筆者の主張Aと、その次の主張Bとの間には、「因果関係」が見られます。(中略)「だから」で結ばれた関係が、「因果関係」なのです。(「だから」の前に理由がくる 122)
64 小説の風景描写は視点となる人物の目を通して描かれるもの(略)風景描写には、その視点人物の心情が投影されているのです。
79 小説を読むときは、自分の生活感覚で読まないことが鉄則。
118 主語が省略されるのは、基本的に前の文と主語が変わらないときです。

○現代文読解法(出口汪『NEW 出口現代文講義の実況中継①』語学春秋社、2007年、62,63ページより。)
1.文章を「論理的につかむ」
(1)人間は皆先入観を持っているから、客観的に文章を読むということは不可能である。
(2)だから、自分の頭を信用してはいけない。
(3)入試問題の文章は、論理的である限り一つの結論・主張(A)の形を変えて何度も繰り返す構造になっている。同じ主張を反復しているのだから、それらの主張を重ねて解釈しなさい。
(4)この作業によって、先入観がおおい隠していた影の部分が光の部分と重ね合わされ、そこではじめて筆者の主張が正しく把握できることになる。
2.言葉を「文脈で固定する」
(1)言葉というものは所詮、個人言語であって、一人ひとりの感覚や知識の度合いによって様々な使われ方をするし、また状況や場合によっても揺れ動くものである。
(2)だから、筆者の個人言語を読者の個人言語で理解しようとしてはいけない。筆者の言語は筆者の言語の中でつかむということ。
(3)それは、とりもなおさず、文章の前後関係、つまり文脈から言葉の意味をつかむということである。