2014年6月15日日曜日

【Audio Book】伊賀泰代『採用基準』ダイヤモンド社、2012年。

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社において採用部門に十数年在籍してきた著者によるリーダーシップ論。「採用基準」という表題と書籍紹介や表紙に書かれた「マッキンゼー」という会社名から「マッキンゼーというコンサルティングファームはどんな人材を採用するのだろう」と思わせておいて、フタを開けたらマッキンゼーの採用活動からこれからの世の中を生き抜くためのスキルとしての「リーダーシップ」について語っている。マッキンゼーの提唱する「グローバルリーダーの育成」とこれからの日本あるいは世界で活躍するためのスキルを関連づけて、それは「リーダーシップ」であるとする。

伊賀氏のいうリーダーシップとは、「人をまきこんで、問題解決にあたることができる」スキルのことを表している。
マッキンゼーの提唱する「グローバルリーダー」とは、上記に加え「英語ができること」「専門的知識を持っていること」をあげ、採用においてはそのポテンシャルを見極めているとする。

コンサルティングという仕事において求められるのは、単に問題解決技法の扱い方や地頭のよさだけでなく、それをチームを率いて実施するポテンシャルがあるかどうかであるとする。仕事は一人でするものではないとする立場を明確に打ち出し、その環境の中で成果を出し続けるには、
・人を巻き込み、活かす。
・限られた時間内に検討し、決める。
・チームが力を最大限に発揮できるように目標を立て、伝える。
などの態度・姿勢が常に求められる。チームの一員だからリーダーシップは必要ないわけではなく、全員がリーダーシップを持っているからこそチーム力は最大限発揮されるとする。
さらに、日本における「リーダー不在」とはこの意味においてのリーダーシップポテンシャルが社会全体で決定的に欠けていることを表し、指摘するとともに「まずは自らのキャリアを見直す」ことを提案している。

伊賀氏は近年、以下のサイトを立ち上げた。 
http://igayasuyo.com/profile

組織の中で働く身として、改善欲求と違和感を覚えつつもルールとして飲み込んでいたことが、リーダーシップという言葉でもって浮かび上がらせるきっかけとなった一冊といえる。どんな組織においても自分で責任をとらない、自分で考えない、自分で決めないことが組織の硬直化につながっていくのだとあらためて感じることができた。伊賀氏のいう「リーダーシップ」のポテンシャルが自分にあるかどうかは別として、チームで課題解決を図ることにおいてはマッキンゼーのそれと手法や内容に異なる点はあるといえ、ベクトル自体は大きく変わらないと捉え直せば、やはり世の中の要求として自分にも「リーダーシップ」は求められているのだろうと思う。
今後の学びも大切だけれども、どう行動するかが問われてくるのだろう。