2014年6月18日水曜日

後藤忠政『憚りながら』宝島社、2010年。

ヤクザ、と呼ばれる生き方がある。
おそらくIyokiyehaにはあまりご縁のない世界のような気がするけれども、そんな世界が垣間見れるかもしれないと思い手に取った一冊。
山口組系の直系後藤組の元組長によるインタビューという形式をとっているが、話し言葉だからこそ伝わる思いや事実というものもあるように思う。

やくざ 
1.名・形動 役に立たないこと。まともでないこと。つまらないこと。また、そのさま。そのようなものをもいう。
2.名 博打うち。ならずもの。無頼漢。

ここでいうところのヤクザとは2.のことを指すのだろうが、その生き様はこれまでの見え方と随分違うように感じた。
社会悪、という言葉でまとめてしまうつもりはないが、なんというか、本来の制度や取り決めでは成り立たないグレーゾーンで活躍する人達であって、その行動原理は物事の筋や人の情といったものに立脚しており、時に法制度を超越することがある。そもそもヤクザの生き方は、人と人とのつながりや物事の道理・すじみちによって成り立っているものであり、何でもかんでも法制度を守らないというわけではない。むしろ、法制度違反の怖さを最もよく知っている人達であるともいえる。
政界や経済界、芸能界とのつながりが指摘されるようになったこの頃であるが、その背景はヤクザが活躍するところがあるからで、何も世の中の全てにたてついているわけではなく、ヤクザとしての行動原理に従っているだけの物事が大半を占めるということを本著から学んだように思う。

生きかたはIyokiyehaのそれと全く異なるけれども、制度の中で仕事をしている身として、ヤクザな生き方をしたいわけではないが、やはり法制度に人の感情を吹き込むことによって初めて円滑な社会を感じられるのだろうな、ぬくもりみたいなものを感じられるのだろうなと思った。
あまりない内容・形式の一冊でした。おもしろかったです。