2009年9月27日日曜日

相川章子、田村綾子、廣江仁著『かかわりの途上で ――こころの伴走者、PSWが綴る19のショートストーリー』へるす出版、2009年。

現役PSWによる、日々の業務の記録。
「これぞPSW!」という性質のものではない(PSWの独占業務はない)のだが、PSWならではの「かかわり」と、経験を通して考えたこと、感情の変化が淡々と語られる。
これまでに、こういった専門職の日常をそのまま描いたまとまった読み物に接したことがないため、非常に新鮮な内容。
対人業務、特に障害を持つ人と接する人は、その障害種別を問わず一読に値する書籍だと思う。
「自己決定を促す」「人生を支える」とはどういうことか、ということについて考えさせられた。

著者それぞれの視点が面白いことと、Iyokiyehaが一目置いているワーカーさんのボスが著者だったため、衝動買いに近い感じで購入。
Iyokiyehaがこだわる「誰の何のための支援なのか」ということや、「支えること、かかわること」の本質が、クリアな言語化にはならないのだが、それぞれのエピソードから「なんとなく、このあたり」といったものを受け取ることができた気もする。

個人的に、PSWの通信課程がこの10月末で修了する見込みとなった。
今年度のスクーリング(8月)で、「対象者の自己決定」や「一般的に望まれない・社会的な常識に反することを対象者が希望した場合の支援」さらには、「支援者の立場」といったディスカッションをする機会があり、今の仕事にも共通して活かせそうな考察を得たところである。
すなわち、働くことを含め、その人の生き方に関わる現場において、その人の内側にあるものが動かない限り状況は変わらない、というごくあたりまえのことと、選択肢を持った上で「選べる状況」に置かれた人の決心は、外的要因によって捻じ曲げるべきではない、ということ。
「普通、こうだぜ」とか、その人が知らないことを体験させることはできたとしても、最終的にその人が何を選ぶかということそのものにはアプローチすべきではない。そもそも「アプローチ」という行為が成立するか否かも微妙だという、一応の結論を得た。

こういった整理をした直後に出会った書籍のため、内容がIyokiyheaに染みわたるような読後感を得た。


おすすめ度:★★★★★(対人業務についている人には、職種を問わずおすすめ)