2009年9月22日火曜日

池上彰『わかりやすく<伝える>技術』講談社現代新書(2003)、2009年。

NHK「週刊こどもニュース」の初代お父さんの池上氏による、「伝え方」に特化した新書。
平易な文章に、これでもかと実を詰め込んで説明する、池上氏の語り口は、フリージャーナリストとなった今でも全く色あせない。
むしろ、いぜんより更に言葉が洗練されているような気がする。

一読してみての感想ではあるのだが、「伝え方」に特化した書籍でありながら、その「伝え方」を忠実に実践している本ではないかと思う。
だから、余計にわかりやすい。
随所にわかりやすさの「しかけ」は織り込まれているのだろうが、ここで具体的に「○ページの・・・」というのはナンセンスだと思うので、気になる方は是非手にとってみては。

以前、Podcast「長谷部瞳は日経一年生」で新聞記事の読み方・書かれ方について触れたことが、そのまま伝え方にも共通しているということがリンクした。

http://iyokiyeha.blogspot.com/2009/02/2008_16.html
(2009年2月16日投稿分:ちなみに、現在は「西川里美は日経一年生」になっています)

あたりまえのことではあるのだけれども、限られた時間の中で物事を伝えるには、
・リード(結論を端的に、こんなことがありました)
・本記(それは、こういうことですよ)
・理由や原因(背景にはこんなことがありますよ)
・見通し(今後はこんな風に展開しそうです)
・エピソード(そういや、こんなこともありましたね)
という順で、書かれ、語られるのが効果的です。
要は、「逆三角形」で内容を盛り込むやり方です。
じっくり時間をかけて、相手に知らせることのできる場面、例えば長時間の講演や論文など、においては、この原則だけではなく、「起承転結」となり、イメージは「逆三角形」ではなく、「長方形」になる。いい論文は、どこを読んでも素晴らしい、というのと同じ。

Iyokiyehaは、普段プレゼンの機会があると、PPT資料では、Agenda(目次)の前に結論スライドを見せてしまう方法をとっています。
最後まで資料を作って、結論をスライド2枚にまとめるのですが(一枚はイメージ、もう一枚は説明)そのうちのイメージスライドをしょっぱなに見せてしまう。
この方法をとるようになってからは、気が楽になりました。
プレゼン中に、次々と想起する内容も、始めに結論を言っているわけですから、適切なものとそうでないものを瞬時に判断できるようになりました。

この本を読んで「スライドに文章を書かない」とか、「ポイントは3点にまとめる」ということを知った。
確かに、PPTスライドをわかりやすく使う人は、どことなくシンプルである。
「何が面白いんだろう」と思いながらも、よくわかるという不思議な現象は、このあたりの「しかけ」なのかもしれない。


おすすめ度:★★★★★(手軽で効果的。ビジネスマンから学者まで、社会人全般におすすめ)