2021年1月11日月曜日

石田淳『行動科学を使ってできる人が育つ!教える技術』かんき出版、2011年。

 「教える」とは、相手から”望ましい行動”を引き出す行為である(25ページ)


 人に何かを教える時に、その成果を測る観点として「行動」がある。Iyokihehaは前職で「応用行動分析」を習って、現場でその考え方を適用して物事を分析してきたので、当たり前と言えば当たり前の観点であるが、転職して周囲を見ているとそうでもない、ことに気づく。多分、立場が違えば、必要な技能も違うから仕方がないこと。とはいえ、対人援助を生業とする上では、相談におけるクライアントの言語表現の他に、生活上の行動を丁寧に把握し、分析していくことは、その人への支援を検討する上で不可欠である。

 などと、支援技法の一つとして「行動分析」を使ってきたが、本著はこの基礎理論ともいえる「行動科学」をビジネス現場、それも社員教育に応用することを紹介したものである。そりゃそうだ、新入社員や異動者に仕事を教える行為は、突き詰めていけば「対象者の行動を変える」ことであり、行動が変わるための方法論の中に「行動分析」が位置づいても全く不思議ではない。なんで、こんな簡単なことにいままで気づかなかったんだろう。

 褒める、叱る、その技法と背景となる信頼関係(ラポール、とか)。行動分析的アプローチに不可欠な、先行条件→行動→結果、その結果が次の行動の先行条件になる、とか、作業(行動)分析の手法や応用など、抱負な事例とともに、非常にわかりやすくまとめられている。基礎理論は実験系の心理学なのだろうが、その成果を現実に適用するのに役に立つヒントが詰まった一冊でした。

 Audiobook.jpで、オーディオブック版も販売していたかと記憶しています。併せてご利用ください。