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2025年7月23日水曜日

新庄耕『地面師たち ファイナル・ベッツ』集英社、Audiobook版。

 「地面師たち」というドラマがネットフリックスで公開されており、妻の勧めで一話を観て、それっきりになっていた。同名の小説が紹介されていたので試してみる。
 とにかく「気持ち悪い」と「人間が本能むき出しになる瞬間」が交差する。ドラマのエピソードとは異なるのか?とはいえ、ハリソンが主要な登場人物として現れるなど、どちらかがモチーフとなっているのだろう。
 ハリソンの人間描写やちょっと倒錯した性癖など、元アスリートが成績不振をきっかけにギャンブルに身を投じ、通常の思考あるいは本人が落ち着いた時の思考では「ありえない」行動を、自分の欲(感情)に従って選択してしまう様と、その結果によって現実を突きつけられ、後悔と他責と自責が混在して混乱しつつも冷めていく様子など、人間にありがちな感情の動きを、振れ幅大きく、とかく「気持ち悪く」描かれている。
 とにかく「気持ち悪い」のだが「気になる」読み物だ。登場人物一人一人のキャラクターが尖りすぎていて、元気のない時には気持ち悪さが優位になってしまう。ちょっと注意です。

米国戦略諜報局(OSS)著、越智啓太、国重浩一訳『サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質』北大路書房、Audiobook版。

 ちょっと変わった一冊。
諜報(ちょう ほう) 敵の様子をひそかに探り、味方に知らせること。また、その知らせ。(デジタル大辞泉より)

 イメージしやすいのは「スパイ」なのかもしれないが、様々な諜報活動があるなかで、その技術や知見を利用して「組織にダメージを与える」ことを知ることにより、組織の在り方を考えることを促す一冊。いろんな方法で、人間関係や組織の雰囲気に悪影響を与える方法、物理的に物的資産を故障、不具合、破壊する方法、ハードにもソフトにも、様々に紹介されているが、これらの内容は「自分がそれを試してみる」ではなくて「敵はこう考えて組織を壊しにくるから…(どうする)」と続く思考を促す一冊といえる。
 印象に残ったのは以下の部分。
・諜報員が見て、分析する、組織の弱点。
・諜報活動として、質的に円滑さを失わせて不協和音を生む方法と、物理的に資産を壊す方法がある。
・例えば、規則を頑なに守る、というのはそれによってクライアントや組織内に不便が生まれる。頑なに厳守を主張することにより、組織内の円滑さが失われる。
・機械ものは、砂や過剰な油分(ちょっとしたこと、あるいは適量ならば必要なもの)に弱い。

ジェイエル・コリンズ著、小野一郎訳『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』ダイヤモンド社、Audiobook版。

 投資に関する考え方について、資産形成に成功した著者が未来を生きる娘に語る形で説明するもの。謙虚な姿勢が貫かれており、まさに投資のイロハと目標設定、考え方について論じる一冊。奇をてらう内容ではないが、着実にためることによって何を目指すのかということが語られている。要点は以下の通り。

・投資は、基本的に「箱にすべてを入れて待つ」のが、資産形成には有用。

・X%の金利で運用するとした時に、貯蓄のX%が年収に当たるところまで貯めることで、人生のステージが変わる。

・人生に選択肢がある安心感。

・まずは、半年分の収入を貯蓄すること。

2025年5月11日日曜日

木下勝寿『チームX -ストーリーで学ぶ1年で実績を13倍にしたチームのつくり方』ダイヤモンド社、2023年、Audobook版。

 ストーリーという言葉で挑戦してみた一冊。ビジネス小説みたいなものをイメージしていたが、「事実は小説より奇なり」と言わんばかり、実話ストーリーでした。おそらく、著者がこの渦中にいる頃は、次から次へとやってくる課題難題に誠実に大胆に向き合って、悩んで切り抜けてきたからこそ生まれたストーリーであることを感じ取った。
 著者は北の達人コーポレーション代表取締役。自らが実績のあるプレイヤーであった経歴があったこと、組織を率いることの苦労と悩みなどを常に抱えつつ、会社を軌道に乗せてライジングしていった様子を、組織内のかなり突っ込んだ視点で紹介している。思いが共通言語にならないことのジレンマから、共通言語ができあがっていく過程、更に組織内にその「言葉」を通じて「思い」が浸透していく実感が示される。(評価するつもりはこれっぽっちもないが)生々しい言葉で綴るストーリーには、体系化しきれないほどの「思い」があふれており、経験を伝わる形に押し込めた感がある。木下氏には、語り切れないほどの思いと思考と経験が、まだまだたくさんあるのだろうと察する。他の著作にも期待である。
 月並みな感想かもしれないけれども、前例踏襲はあくまで踏み台であって、事業を創る、育てていくという局面においては、他と同じことをしていればいいかといえば、そうではなくて、あくまで目的を見据え、目的を適切にブレイクダウンした目標を一つずつクリアする。目標設定においては、その達成の先に必ず目的に近づくことができるものを掲げること。選択においては、データの収集は必要だが、予測を伴い選択にはデータのみから導かれる結論には要注意。一生懸命取り組むがゆえに視野が狭まっていることに気づきにくくなる状態には注意しつつ、いろんな見え方を大切にすること。議論を尽くして出てきた選択肢はABテスト(ランダム化比較実験)等を含めて検証することなど、基礎・基本の徹底が、結局はよりよい事業を生み出したり、事業がライジングしていく土台となることを、学ぶことができたように感じる。
 項目だけ拾っても、書籍を読まないとわかりそうで、わからないものであるが、要所の引用のみ。
○一瞬にして破滅へ導く「企業組織病」
1 職務定義の刷り込み誤認
2 お手本依存症
3 職務の矮小化現象
4 数字万能病
5 フォーマット過信病
○どん底からV字回復へ導く5つの「Xポイント」
1 KPI
2 教育の仕組み
3 共通言語化
4 タスク管理
5 風土

2025年4月19日土曜日

志駕晃『スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス』宝島社、Audiobook版。

 『スマホを落としただけなのに』『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』の続編。シリーズ第3作。内容はさらに大きく、東京五輪や朝鮮半島との関係など、国際的なスケースに物語は展開していく。さすがにここまでくると、小説としては面白いのだけれども、1作目に感じた「気持ち悪い・怖い」という新鮮な感覚は薄れてくる。エンターテインメントとしては面白い。
 が、しかし、Audiobook版に残念点。AI音声合成サービス「カタリテ」を使用しているとのことですが、これがホラー小説には合わないと感じた。もちろん、内容は伝わってくるし、AI音声合成もいい線いってるな、とは思うのですが、1作目、2作目のあの気持ち悪さ、や想像力を掻き立てて恐怖をあおってくるような描写が、すっきり片付けられてしまった。その意味でちょっと残念な点はあるけども、小説の内容としては面白いです。続きが気になる。

志駕晃『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』宝島社文庫、Audiobook版。

 先日感想をアップした『スマホを落としただけなのに』の続編。第一作がウライの人となりの描写をこれでもかこれでもかと畳みかけるようで、気持ち悪いやら怖いやら、帰宅時の夜道にはあまりそぐわない内容だったのですが、この第一作に負けず劣らずの怖さがありました。テーマが個々人から対組織へとシフトしているので、スケールの大きさが、ウライ本人の気持ち悪さを覆い隠しているようにも感じましたが、彼らを取り巻くほかの悪いヤツもまた怖い、気持ち悪い描写で、小説としては面白いのだけれども、現実との接点を感じると非常に怖い。スマホという電子機器をめぐる知略が飛び交うモチーフの中に、なんとも言えない人物描写がタイミングと鋭い内容で飛び込んでくる。続編にふさわしい内容でした。
(2025年3月25日アップ 志駕晃『スマホを落としただけなのに』)
https://iyokiyeha.blogspot.com/2025/03/audiobook_28.html

2025年3月22日土曜日

Audiobookを中心に、最近聞いたり読んだりしたもの

○池田晶子『14歳の君へ -どう考えどう生きるか』毎日新聞出版、2006年。

○セルバンテス著、牛島信明訳『ドン・キホーテ(前編1)』岩波書店、Audiobook版。

○アレクサンドル・デュマ著、山内義雄訳『モンテ・クリスト伯〈1〉~〈2〉』岩波書店、Audiobook版。

○佐々木常夫『40歳を過ぎたら、働き方を変えなさい』文藝社、Audiobook版。

 自分でやろうとしない。チームを含め、人の力を借りて組み合わせられることが、成果を出す一つの在り方。

○ジェリー・ミンチントン著、弓場隆訳『うまくいっている人の考え方 完全版』ディスカヴァー・トゥエンティワン、Audiobook版。

 自分の気持ちに正直になること。周囲の意見をきちんと確認すること。余計なことまでは確定しないこと、ほとんどのことは、自らの思い込みが作り上げてしまう幻想。

○宮島未奈『婚活マエストロ』文藝春秋、Audiobook版。

○精神科医Tomy『精神科医Tomyの気にしない力 -たいていの心配は的外れよ』大和書房、Audiobook版

志駕晃『スマホを落としただけなのに』宝島社文庫、Audiobook版。

  映画化もされていたと記憶していますが、現代版ホラー小説として、すごい。身近なツールがこんな風に乗っ取られ(る可能性があっ)て強請られるんだな、と、そこは素直に怖かった。シリアルキラーの行動も不気味で怖いし、終盤のどんでん返し(というか「えーっ」と思わせられる種明かし、が更に気持ち悪さを重ねてくれます。聴いていて楽しいものではないのだけれども、とにかく興味をそそられる内容で、一気に聴き通してしまいました。こわいこわい。

岸見一郎『アドラー 人生を生き抜く心理学』NHK出版、Audiobook版

  アドラー心理学って「嫌われる勇気」が、もう10年くらい前に流行った時に知って、ベストセラーを読んだ程度で、身につけるまで読み込んでいない状態が続いているのだけれども、「原因ではなく、目的に着目する」姿勢は、援助業務の中でも使うことがある。原因思考でどうしようもないとき、一般的な原因思考から進めようとするときのツッコミに、視野を広げたり、突破口を探すのに、多分以前読んだ考え方って生きているのだと思う。

 本書は、アドラーの著書(訳書)の主な主張となる部分を抜粋して、その意味や実際の活かし方、みたいなことを解説している。アドラー研究で有名な岸見氏が、その膨大な知識を整理して語ってくれているので、ブームに成ったときに聞きかじったような、私程度の興味でも充分参考になる内容だと思うが、初習者だとこの内容には面食らうかもしれないな、と思って聴いていました。


神山理子(リコピン)『女子大生、オナホを売る。』実業之日本社、Audiobook版。

  書名と表紙イラストがキャッチーなこともあって、一時期話題になっていましたが、内容はマーケティングの実践書。Iyokiyehaは商売はしないのだけれども、市場調査をするときには「できる範囲で、聴き取りをおこなうこと」と、顕在しているニーズだけでなく、潜在ニーズを読み取る努力を怠らないよう、進めていくことが肝要だということ。値段の付け方一つをとっても、そこには考えがあり、手探りでやるわけではない。もちろん、そこで視野を外していたら、進退含めてふりかえっているし、確実なことと、はっきりしなくても仮説を必ず立てて、都度検証している。何かプロジェクトを進める時には、少なからず、こうした確認と検証をセットで行うことについて、イメージができていく。そういうことが響く人とはきちんとつながり、何かあれば相談する必要があるのだろう。


森功『地面師 -他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』講談社、Audiobook版。

 Netflixで話題になっていたドラマ『地面師たち』。第一話を見て、ハリソン(豊川悦司)の演技がすごすぎて、それに加えて、人が死ぬ描写がすごすぎて、万が一にも子どもには見せたくない、と判断し、そのままになってしまっているもの。多分、私はこのまま観ないんじゃないかな。

 原作というかモチーフとなっている本のようだけれども、その内容はルポルタージュのような、「地面師」と呼ばれる、戦後からその存在が見え隠れしている詐欺集団(チーム)の活動を調べ上げているもの。正直なところ、土地の売買に明るくない私にとっては、その内容の巧妙さは読み解けないのだけれども、とはいえ、いわゆる詐欺の内実を知るにつれ、その手腕というか人たらしの技能というか、そういうことについて見習いたくはないけれども、どのようにして学習したのか、身につけたのか、ということは気になる。相手を意のままに動かすには、やはり準備9割、現場1割なのだが、その1割の部分だって、自分のように法制度を根拠に戦えるわけではないなかで、どのように「成功」を収めているのか、そのてんについては本書では読み解けていないのか、取り上げられていないのか、測りかねるところはある。

 とはいえ、読んで(聴いて)いて、そんなに気分のいい内容ではない。しかしながら、日本における裏社会の一旦をのぞくことのできる一冊だと思う。


ちきりん『自分のアタマで考えよう!』ダイヤモンド社、Audiobook版。

  とっても基本的なこと。ある事象に対して安易に反応しないこと。背景を知ること、比べること、自分の頭で考えること、反対意見を知ること。あたりまえのことなんだけど、「これがいい」と思うと、ついつい視野が狭くなってしまうことを改めて自覚した。昨今は、そうした言説が、フィルターを通らずにWebにアップされてしまうから、そうしたものをいくつか読んで「分かった気になってしまう」のが、考えることをやめてしまう一助になっているようにも思う。

 もちろん、様々なことを横断的に考える、比べるためには確かな教養が必要となるため、そうした学習は常に必要なのだと思うが、何をどこまでやったら充分ということはない。今あるものに、とりあえず必要なものを取り入れて、とにかく常に考える、何らかの結論を出す、その結論を検証する、ということを不断に行うことが考え続けることなのだと、シンプルに確認できた本でした。


堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波書店、Audiobook版。

  アメリカにおける貧困は、日本のそれとは規模と質が異なる。福祉の世界に身を置いていると「だから日本はダメ」とか「アメリカだと○○らしい」という嘘か真か分からないような情報が飛び交うこともあるのだが、和をもって尊しとする日本と、ゴリゴリ資本主義国家のアメリカとは、政策の内容に差がある。アメリカでは採用において障害を差別としない、とは言われることだけれども、その代わりと言っては何だが、男女の差別や、人種差別、国民であるかそうでないかによって、線を引いて明らかに身内とは異なる対応をするのもアメリカだと言われている。

 本書を読んでいて気になったのは、私の視点では「ありえないでしょ?」と思えるようなことを、施策として展開していること。貧困層への食料支援に、炭水化物中心のものを配布するとか、戦争をモチーフにしたテレビゲームに自国を称揚するような内容を組み込み、その上で、軍隊に入隊することを、教育機関と接続して宣伝する、など。この点、日本とは全く雰囲気が異なるのだと思うが、「お金を稼ぐために、軍隊に入隊する」という雰囲気がすでに広がっている。そこに、本来の意味での愛国心や、国民を守るんだといった、公益性の高い仕事に就くことへのプライドや、本質を考える、ということが、一部で後退した結果が、アメリカ社会の影の部分として、確かに存在しているように思える。


ヘンリー・キムジーハウス、キャレン・キムジーハウス、フィル・サンダール、ローラ・ウィットワース著、CTIジャパン訳『コーチング・バイブル:人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション』東洋経済新報社、Audiobook版。

 コーチとクライアントの双方が、積極的に協力し合いながら関係を築き、クライアントに本質的な変化を呼び起こす「コーアクティブ・コーチング」の手法を、対話例も交えて解説するもの(詳細より)。

 コーチングの技術を、心構えから傾聴の段階、フィードバックの技術まで、その具体的な方法と背景を説明した一冊だと思った。具体と思想とを行き来する内容で、大変参考になる本だと思った。購入候補に加える。


 

2024年12月29日日曜日

住野よる『腹を割ったら血が出るだけさ』双葉社、2022年(Audiobook版、2024年)

  昔は昔、今は今。「今の若い子たちは、考えることやいろんな見られ方への対応とか、大変だな」と思っていたが、こういう現代小説から感じられる、いわゆる「今の若者」の姿ってやっぱりイメージでしかなくて、結局は個別の感覚なのだな、と思ってしまう。少なくとも自分の土俵とは異なる土俵に皆立っているわけで、同世代の人達が共通認識をもっているのかというと甚だ疑問ではある。案外、いわゆる「今の若者」を仮想敵と仮定したときに、「敵の敵は味方」的に、ワン・プロジェクトっぽく手を結んでいるだけかもしれない。だって、同世代だって物事の捉え方の感覚は個別だから。

 内容は、作中に登場する『少女のマーチ』なる読む人の解釈を許すような小説をモチーフに、自分の本音で生きたいと願いながらそれが成就しない女子高生と、表裏のギャップにアイデンティティを揺さぶられているアイドル、彼女らを取り巻く人間関係が語られる。ミステリとは言い難いが、モチーフに解釈が入り込むために、登場人物の思考が読み切れずついつい引き込まれてしまう。

 Iyokiyehaの人間関係の捉え方とは全く異なるそれを、ある若者の視点を、節毎に切り替えながら一つの物語を組み立てていく。「自分とは異なる考えを押しつけられる」。本書の一節だが、そういうものなのだなと感じる。若者の人間関係なんて、多分理解できないし、自分の考えるそれとは全く異なるものだから、摩擦すら感じるのに、それでも興味深く聴き進めてしまうのは、この作者のプロダクトに対して素直になれたと考えることにしよう。

---(続)

 とはいえ、小説というのはすごいプロダクトなのだと思う。若者達の会話と思考を言語化することによって、人間の感情というものをそれを読む人に重ねながら、空想世界を展開していく。それは「そんなバカなことあるかぃ!」って思うようなフィクションであったとしても、どこか自分の感情に重なったりかすったりするので、ついつい小説の世界にひきこまれてしまう。普段から小説にはそういうところがあったように思うが、感情の言語化とそれが立つ基盤に「解釈」が入り込むというしかけが、こう思う自分を客観視できた一助となっているのだろう。

2024年10月6日日曜日

スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン訳『7つの習慣 最優先事項』キングベアー出版、2015年(Audiobook版、2016年)。

  「7つの習慣」関連の書籍っていくつか聴いているのだけれども、いつも「フツーのことだよね」と思ってしまっていた。だけど、そのフツーが難しい、基本はいつも大事なんだよね。

 優先すべきことは、緊急のことよりも本来は優先しなきゃいけないことなので、いつの間にか雑事に追われて・・・というのは、古今東西誰にでも課題となりうることで、Iyokiyehaも例外ではない。いや、むしろ、面倒事を喜んで引き受けてしまう節もあるよう(←よく指摘されます)なので、むしろ自分のための論考なのかもしれない。要は時間の使い方と目的意識のように考えて、受け止める。

 (Audiobookの紹介より引用)「時間管理の基本を、『いかにスピーディーにこなすか』ではなく、『なぜそれをするのか』という視点から見つめ直します。『なぜそれをするのか』、その目的をしっかりと見据えてプランニングすることで、最優先事項がみえてくるのです」。本書の訴えることは、大体ここに集約される。

 書籍中「コンパス時間」という言葉が出てくる。コンパスが常に北を指していることと、「時間管理のための時間」を批判的に捉えたときの言葉だと理解した。要は、より大きな目的のために行うことを、目の前にあることに適用させたり、場合によっては目の前にあるものを回避することも必要になるかもしれない。ただこなす、ではなく大きな目的を意識して、そのために目の前のことを行う、といったように、優先すべきことを意識して万事目的につながっていることが見えてくると、人生の成果に取り組んでいるといえる。そのことが幸せにつながるのだ、というようなことを文書随所で語っているように思いました。

 今は、いろいろ悩みながら、いろんなことに取り組んでいるけれども、それも人生の糧と思いながら、それでもオーバーワークにならないように「なぜ」を問い続ける姿勢は必要だと思います。

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』太田出版、2015年(Audiobook版、2020年)。

  退屈の反対は楽しさとか楽しいこと、ではなく、興奮である。楽しいことがないのは退屈なのではなく、興奮を伴う刺激に乏しいということ。つまらないことが退屈なのではない。

 熱意は幸福と関係があるが、熱意があれば幸福かということには違和感がある。熱意が暴走して刺激を際限なく求めたところの一つに、戦争という事象がある。(ラッセル?)

 現代は、生産が欲求に先行する。やることがない人にやることを与えるのがレジャー産業の側面でもある。

 なるほど、暇とか退屈というものを、倫理的に哲学的に分析して深めていくと、いろんな感情や事象とつながっていくことができる。暇というのは単にやることがない、ということではないし、楽しいことがないのが退屈とは言い切れない。今を生きる私たちの社会の仕組みと実は密接に関係がありながら、その関係がとても見にくくなっているのが暇とか退屈の本質に近づきにくくしている一因ともいえる。

 Audiobookでなければ、おそらく触れられない一冊。哲学的思考や歴史的な論考が学術的に引用されているので、読み解いていくのが困難だった。聞き流している部分もあるが、それでも上記のような気づきや学びがあった一冊でした。

猪俣武範『ハーバード×MBA×医師 働く人のための最強の休息法』ディスカヴァー・トゥエンティワン、Audiobook版。

  やはり睡眠は大事。量も必要。眠りの質を上げることだけでなく、7時間程度の睡眠時間は認知機能を発揮するためには必須といえる。

2024年8月17日土曜日

本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』太田出版、Audiobook版。

  私が小学生から中学生の頃に、世間?をこんな風に騒がせた人がいたとは、全く知らなかった。いわゆる18禁の世界の話だから、当時知らないのは当然といえば当然だが、まぁ、すごい(といっていいのかな)人がいたものだ。

 「成功者」というのは定義が難しいもので、最近の使い方は、とかく「自分が使えるお金を、サラリーマンよりも多く集めた人」くらいの意味で使われているように思う。そのくらいの意味ならば、本著のモチーフとなっている村西氏は大成功を治めた人に位置付くだろう。しかしながら、この手のセレブが残している読み物や、本著にも村西氏の発言とされている言葉のように、「稼げば稼ぐほど、不安が大きくなる」という共通の感覚があるらしい。不思議な者で、村西氏は体制と戦うことにはモチベーションを保つことができたようだが、どうあれ自由になる金銭を、心理的には持て余していた様子がうかがえる。

 私のようないわゆる凡なサラリーマンの立場で見たら、破天荒とか荒唐無稽、非常識なんて言葉がしっくり感じてしまうエピソードの数々であるが、価値判断を極力抜いて村西氏を眺めた時に、人間の内側からほどばしるようなエネルギー量が、新鮮かつ驚きの連続であり、人間の生き様という一点だけ切り取れば、ここまで何かに打ち込めるというのは、少しばかりうらやましく感じることもある。やっていることはむちゃくちゃだと思うし、いわゆる常識からみたら筋が通らないことを押し通しているようにも見えるのだけれども、生き様偏差値みたいなものがあるならば、到底かなわないところにいる人だなと、素直に脱帽である。

 とはいえ、価値判断を戻すならば、踏み込みたくない領域ではあるのだけれども。。

宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮社、Audiobook版。

  「成瀬シリーズ」第2作。どハマリしている。このすがすがしい聴ききった感が何からくるのかと考えたところ「成瀬あかりを取り巻く人達が、風変わりな成瀬の言動に巻き込まれ、笑顔になっている」と感じること。「どうなるんだろう、どうなるんだろう」と思いつつも、随所にプププと笑ってしまう言動があり、短編のそれぞれのオチは、みんなが笑顔になっている様子が表現されていること。平凡とは言えないが、突飛なことを言う成瀬が、マイペースにやりたいことをこなしていく様子は、聴いていて心地よく「よし、明日もがんばろう!」と思えるから不思議だ。続編も楽しみです。