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2008年11月9日日曜日

法学

テーマ:わが国における行政救済法制について略述した上で、行政争訴2法(行服法、行訴法)の内容および異同を説明しなさい

1.はじめに
 日本における行政救済法制は「行政により自己の権利・利益を侵害されたとき」に、「その是正を求める」ために定められている(参考文献1、166ページ。以下本文中のページ数は同文献)。公権力の行使と、公共の福祉とが相反するものである場合や、個人に対する行政処分がその個人の権利や利益を著しく侵害する場合に、行政機関の暴走を抑制するための制度といえる。
 本稿では、行政救済法制の概要をまとめた上で、特に行政不服審査法(以下「行服法」)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」)の二法の内容をまとめる。

2.行政救済法制体系
 日本における行政救済法制は、以下の三つに分類できる。一つ目は国家補償、二つ目は行政訴訟、三つ目は苦情処理制度である。行政訴訟は次章で説明する。
(1)国家補償
 国家補償には、国家賠償制度と損失補償制度がある。
 国家賠償制度はさらに、公権力の行使に基づく責任と営造物責任との二種類に大別される。前者は、行政機関に勤務する公務員が、その職務の中で故意又は過失により、違法に他人に損害を加えた時に、国又は公共団体がその損害を賠償する制度である。後者は、公の営造物(道路や河川など)の設置や管理について、その要件が欠格していたり、されるべき管理がなされていない等の条件により、他人に損害が生じた場合に、国又は公共団体がその損害を賠償する制度である。
いずれの場合も、通常公務員個人は責任を負わないが、故意または重過失である場合のみ、国や公共団体が当該公務員に求償権を行使できる。
 一方、損失補償制度は、公権力講師が適法である場合の特別な犠牲に対し、それを調整するための財産的補償である。
(2)苦情処理制度
 行政に対する苦情処理には、行政相談制度がある。総務省が行う、行政全般についての苦情や相談、意見・要望を受け付け、その解決や実現を促進するために、必要なあっせんや行政制度および運営の改善に反映させる制度である。

3.行政訴訟
 日本における行政訴訟は二つある。一つは行服法に基づく行政不服審査制度、もう一つは行訴法に基づく行政事件訴訟制度である。
(1)行政不服審査制度
 行政上の不服申立てに関する一般法を意味する。行政庁の違法や不当処分等に関する不服申立てに対し、簡易迅速な手続きにより救済を図ることを目的としている。
 不服申立ての種類には三種類ある。不服申立ては、ある行政庁の処分が対象となるが、一つには、当該行政庁以外の行政庁に対し不服申立てする審査請求、二つには、当該行政庁に対し不服申立てする異議申立て、三つには、審査請求の採決に対し不服がある場合に、さらに上級庁に提訴する再審査請求である。例えば、市町村長による処分に不服がある場合、市町村長に対し不服申立てをするのが異議申立てで、都道府県長に対し不服申立てをするのが審査請求、都道府県長の採決に不服がある場合に、当該処分を所轄する大臣に対し不服申立てをするのが再審査請求と説明できる。このことから分かるように、行服法は不服申立ての請求先を、処分庁・上級庁を含む行政庁としている。
 審査・再審査請求に対する裁断は裁決、異議申立てに対する処分庁の裁断は決定であるが、裁決・決定の種類は、それぞれ却下、棄却、事情、認容の4種類である。判断の対象となるのは、当該処分・不作為の適法性と妥当性で、手続きは書面審理が中心となっている。
(2)行政事件訴訟制度
 ある行政処分及び不作為について、その適法性を裁判所に問うための制度である。基本的に民事訴訟法に従う内容となっているが、行訴法を付け加えたものにより行政訴訟は構成されている。よって、当該申立てについて、地方裁判所の判決が不服であれば控訴して高等裁判所が裁判し、さらに高等裁判所の判決が不服であれば最高裁判所に上告することができる。よって、行訴法における不服申立て請求先は裁判所である。
 訴訟の類型は、行訴法第3条から6条に規定されている(その他のものについては第7条)。
 判決は、行服法とほぼ同様に、却下、請求認容、請求棄却、事情の4種類である。判断の対象となるのは、当該処分・不作為の適法性で、手続きは口頭弁論を伴う対審制となっている。

4.まとめ
 以上、行政救済法制について、特に行政訴訟に関する二法を中心に説明した。二法の特徴を端的にまとめると、ある行政処分・不作為について不服申立てを行う際、行服法に基づく行政不服審査制度は、その申立てを行政庁が簡易・迅速・低廉に審査するのに対し、行訴法に基づく行政事件訴訟制度は、その申立てを裁判所が客観的・公正中立的な立場から審査するものであるといえる。
 私個人としては、私生活においても、精神保健福祉士となった後の業務においても、活用せずに済むのが最もありがたい制度といえる。ただし、私生活および業務の中で、個人の権利・利益を不当な行政処分により侵害された際、その是正を求める正当な手続きがあることを覚えておきたい。



 
(勉強メモ)

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2008年11月3日月曜日

精神保健福祉援助技術各論(2)

テーマ:ケアマネジメント過程をまとめ、考察せよ


1.はじめに
 「ケアマネジメント」は、1960年代に欧米で勧められた脱施設化によって新たに発生した問題(退院した患者がホームレスになってしまう、または症状が悪化して再入院となる、など)を解決する手段として体系化された。定義する人により、ニュアンスに多少の違いはあるが、その意味するところは「従来の支援を超え、地域をベースに、利用者の生活ニーズを起点として、その充足のために必要なあらゆる社会資源を調整し、組み合わせて、その人らしい地域生活ができるように調整する新たな支援技法」といえる。
 本稿では、ケアマネジメント過程を7段階に分け、それぞれの要点を整理した上で、精神保健福祉士が目指すべきケアマネジメントについて、私自身の体験を交えて考察する。

2.ケアマネジメントの段階とそれぞれの要点
(1)インテーク(受理面接)
 ケアマネジメントの導入を判断する。主に初回面接のことを指す。クライアントの主訴を把握し、問題解決のための大枠を見立てる。
 具体的な支援には至っていない段階であるが、今後の支援を円滑に実施するためにも、クライアントのとの信頼関係を築くことが重要である。
(2)アセスメント(ニーズの把握と評価)
 様々な手法により、クライアントの生活ニーズの把握と、当該クライアントの状況からニーズ充足の方法や利用可能な社会資源の検討を実施する。
 ここで重要となるのが、「できる」「できない」に留まらず、クラアントやその置かれた環境の持つストレングスに注目しつつ、広く全体を評価することである。クライアントの生活領域毎のニーズそれぞれについて、セルフケア能力だけでなく、社会資源の利用・対応状況も含め、全体としてどんな状況なのかということを評価する必要がある。
(3)プランニング(ケア計画の作成)
 これまでの過程で得られた情報に基づき、クライアントのニーズを充足させるための目標を設定し、利用する社会資源やサービス、それぞれの役割分担や責任の所在、取り組みの期間を調整・確認する。
 目標は一つに絞り込むのではなく、ケアマネジメントによって実現が不可能としても、それがクライアントの真のニーズであるならば「大目標」としておき、大目標に近づくための現実的かつケアマネジメントによって対応可能な目標を設定する。その現時的な目標を達成するために、当面取り組むことを「小目標」として設定し、それに基づき具体的な計画を作成する。
(4)介入(ケア計画の実施)
 プランニングで作成した計画に沿って、クライアントとその周辺の環境に対し、直接・間接に支援を意図的に実施していく。直接支援は、クライアント本人のセルフケア能力を向上させるために実施される。例えば、コミュニケーション能力の向上のためのSSTへの参加を促すことがあげられる。間接支援は、クライアントを取り巻く社会資源に対し、その改善や、個々のサービス担当者の役割を明確にするなどして、サービスの適正化を図る調整があげられる。
 直接・間接支援の双方を必要に応じて実施することが重要となる。アセスメントで全体を評価することによってそれは可能となる。課題を本人のセルフケア能力のみに起因させず、社会資源の調整を視野に入れる点がケアマネジメントの特徴であるといえる。
(5)モニタリング(進捗状況の把握と評価)
 支援を実施した後、それらが計画通り進行しているか、支援によって新たな課題が発生していないか等、追跡調査を実施する。
 モニタリングの結果、目標達成のために計画の大幅な変更が必要と判断された場合には、再度アセスメントの段階に戻り修正する。
(6)エバリュエーション(総合評価)
 実施された一連のケアマネジメント支援全体をふりかえる。
 これまでと同様、クライアントのセルフケア能力がどの程度向上したか評価するとともに、クライアントをとりまく社会的な支援ネットワークをどの程度拡充・向上させたかについても適切に評価する必要がある。
(7)ターミネーション(終結)
 エバリュエーションにおいて、これまでのようなケアマネジメント支援が必要でないと判断された場合に、フォローアップ体制を整えて支援終了とする。
 ケアマネジメントは終了するが、ケアは必要に応じ次の段階へ移行するなどの引継ぎを確実に実施する。

3.考察
 以上、ケアマネジメントの段階とそれぞれの要点について概観した。改めて整理すると、困難を抱えた人に対し、何らかの援助活動を実施する場合、ほとんどこれと同じ段階を経て実施していることがわかる。私が普段業務としている雇用支援も例外でない。
 その上で、二つのことを取り上げて本稿を結ぶ。
 一つは、ケアマネジメント支援における「環境」への注目である。もちろん、クライアント自身のセルフケア能力向上は重要である。「その人らしい地域生活ができる」ことを考えた時に、重要なのはクライアントの能力だけでなく、その人を取り巻く資源をいかに活用しその人が能力を発揮できる環境を調整するかという視点が重要となる。例えば、「仕事をしたい」と言ってくるクライアントの主訴が、「安定した収入が欲しい」ということであれば、障害年金の受給も視野に入れるなどの対応が求められるだろう。
 もう一つは、人と関わる上で大切にしたいこととして、ケアマネジメント支援がクライアントの人生をどう方向づけるのかという視点である。課題・問題のある現状へと至った経緯は人それぞれであるが、その解決を通じて、クライアントはどんな人生を描いているのか。プランニングの大目標の設定に通じる部分であるが、そうした大きな目標にどのように近づいていくかという視点があって初めて、クライアントがエンパワメントされ、セルフケア能力も向上していくのだと考えられる。ケアマネジメント支援は、クライアントが置かれている生活上の困難を解決するために実施されるものであるが、その解決は本人の希望する人生に近づくためのものとして取り組むことが求められるのではないだろうか。
 人と関わる以上、その人の今後の人生を視野に入れた計画作成が必要といえる。さらに、全ての人や環境は変化する力(≒可能性)を持っていることを考慮し、ケアマネジメント支援を実施することが、精神保健福祉士が目指すべき支援のあり方であるといえる。



(勉強メモ)
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精神保健福祉論レポート(3)

テーマ:精神衛生法から精神保健福祉法の2005年までの法改正経過をふまえ、それぞれの意義と主なポイントについて述べなさい


1.はじめに
 精神障害を有する者に対する処遇に関する、この100数年の法改正を概観すると、彼らを社会から隔離・収容(自宅や病院)する社会防衛思想に基づいていたものが、地域生活を目指すものへと変化してきたことがわかる。
 本稿では、精神衛生法制定から現在までの法改正を取り上げ、それぞれの意義をまとめ、上記変化について整理する。

2.法改正とそれぞれのポイント
(1)精神衛生法制定(1950年)
 欧米からの最新の知識を導入し、公衆衛生の向上・増進を目的として成立した。しかし、精神障害を有する者を「社会生活を破壊する危険性のある者」とし、従来の私宅監置を、精神病院に収容する手続きを定めた法律と評価されている。ポイントは以下の通り。
①私宅監置の廃止
②措置入院と同意入院(現在の医療保護入院)を新設
③精神衛生鑑定医の設置

(2)精神衛生法改正(1965年)
 欧米で「脱施設化」運動が起こり、ケアマネジメントの手法が注目されるようになったことを受け、日本でも「地域ケア」が検討されていた。しかし、駐日アメリカ大使が、精神分裂病の診断を受けていた19歳の少年に刺され(1964年のライシャワー事件)、政治的対応も含め、精神障害を有する者が再び「市民的秩序を破壊する危険性を持つ者」とされる。こうした背景の中、精神衛生法は改正された。ポイントは以下の通り。
①保健所を第一線相談機関とし、精神障害を有する在宅者の訪問指導・相談事業を強化
②精神衛生センターを都道府県に設置
③通院医療費公費負担制度を新設
改正の結果、同法は治安的要素が強くなり、警察による精神障害を持つ者への取り締まりが強化されることになる。

(3)精神保健法成立(1987年)
 入院患者は増加の一途をたどる。この期間中、複数の精神病院における実態や事件が報道される。その中でも、宇都宮病院事件(1984年)は、国内だけでなく海外でも日本の精神医療現場の問題として取り上げられる。こうした国際的批判を背景に精神保健法は成立した。ポイントは以下の通り。
①任意入院制度の新設
②人権擁護制度の新設(退院・処遇改善請求および、精神医療審査会の設置)
③社会復帰施設の法定化
 任意入院は、後に入院形態の主流となる。ただし、「精神障害者」の定義や、保護義務者の負担については先送りされた。

(4)精神保健法改正(1993年)
 精神保健法成立後、国内では障害者対策に関する長期計画が打ち出され、国際的には国連原則が採択される。こうした背景と見直し規定により法改正される。ポイントは以下の通り。
①大都市特例(1996年から)
②医療・福祉・行政の連携と協力に関する義務規定
③保護義務者の名称を「保護者」に改めた(実態はほとんどかわらない)
④精神障害者社会復帰促進センターの創設

(5)精神保健及び、精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」)(1995年)
 精神保健法改正後、障害者基本法が成立し、精神障害者が障害者施策の対象として位置づく。また、保健所法も地域保健法へと改正され、精神障害の発症から社会復帰まで、一貫したサービスの提供を保健所が担うことになった。また、当時入院患者数の増加も指摘されていた(約33万人)。
 これらの背景を受け、精神保健法が改正され精神保健福祉法が成立した。ポイントは以下の通り。
①目的に、精神障害者の自立と社会経済活動への参加の促進が加わる
②精神障害者保健福祉手帳が創設
③精神病院への指定医必置
④社会復帰施設の追加(福祉工場、福祉ホーム)
⑤精神障害者社会適応訓練事業の法定化
 ①により、社会参加の視点が目的に加わり、それに基づく法整備であるといえる。

(6)精神保健福祉法改正(1999年、2002年、2005年)
 精神保健福祉法成立後、「障害者プラン」が打ち出され、精神障害者に関わる施策は医療から福祉へと切り替わっていく。これらの背景、これまでの課題への対応、および構造改革の流れを受け、1999年に精神保健福祉法は改正される。ポイントは以下の通り。
①保護者の義務の緩和
②市町村が福祉サービスに関する相談を実施する
③ホームヘルプ、ショートステイが在宅福祉事業に位置づく
 居宅生活支援が制度の中に位置づき、地域における在宅福祉施策が展開されるようになった。
 2002年には、市町村保健福祉業務の開始に伴い法改正された。
 2004年に、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」が打ち出される。精神障害者に関する課題は「精神保健福祉の改革ビジョン」に基づき取り組むとされた。こうした流れの中、2005年に障害者自立支援法が制定された。それに伴い、精神保健福祉法も改正される。ポイントは、障害者自立支援法への統合(通院医療費公費負担制度や社会復帰施設に関する事項)である。

3.まとめ
 以上から、冒頭で述べた、精神障害を有する者に対する処遇の変化がわかる。
 本稿では、精神障害を有する者の支援に関する法律を概観してきたが、障害者福祉全体の流れがこれと同様、地域生活を支える視点へと変化しつつあるといえる。法律の変化だけでなく、その根底にある「住民参加と協働に基づくサポートネットワークの形成による共生社会の実現」を見据えた取り組みが必要となるといえる。
平素から、障害を有する方への支援をしつつ、こうした大局を見据える姿勢を忘れないようにしたい。




(勉強メモ)
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2008年10月5日日曜日

精神科リハビリテーション学2(草稿)

テーマ:「包括的地域生活支援プログラム(ACT事業)と既存のプログラム(訪問看護、ケアマネジメントなど)との違いについて論じなさい」

1.はじめに
 精神障害を持つ人々が、病院や施設で生活するのではなく、地域で生活することを目指す取り組みが注目されている。古くは1970年代に欧米で始まった脱施設の取組みに端を発するが、近年特に注目されているプログラムに「包括的地域支援プログラム Assertive Community Treatment」(以下、「ACT」とする)がある。我が国では2002年から研究事業が開始され、2008年からは民間事業として実施されている。
 本稿では、ACTと既存のプログラムとの違いについて、訪問看護とケアマネジメントを例に論ずる。

2.ACTの概要と支援の視点
 ACTの原則は、以下のようにまとめられる。
(1)支援は精神障害を持つ人が暮らす場所に訪問して実施される
(2)決まったサービスはなく、利用者のニーズに合わせてサービスを形成する
(3)1人の対象者に対し、必要に応じた10人程度の他職種の専門家によるチームでアプローチする
(4)24時間、365日、必要に応じいつでも支援し、危機介入にも対応
(5)支援の対象となるのは主に重度障害者(従来の医療・福祉サービスでは支援困難とされた者)
 さらに、援助理念として、障害を持つ人個人のエンパワメントや自立が強調され、地域生活を維持するための支援が展開される。障害によって生じる「能力障害」は、個人と環境の相互作用で発現するという視点(社会政治モデル)で関わり、支援の対象は障害を持つ個人だけでなく、その個人を取り巻く環境も含む点が特徴といえる。
 具体的なサービス内容を列挙すると、「薬の処方と提供、病気と服薬を自己管理するための支援、個別の支持的療法、危機介入、入院期間中の継続支援、住居サービスに関する支援、日常生活の支援、身体的健康に関する支援、経済的サービスに関する支援、就労支援、家族支援、社会的ネットワークの回復と維持のための支援」等となっている(参考文献1.116ページ)。
既存の支援では対応できなかった重度障害者に対し、いつでも、いつまでも、ニーズに応じた支援を調整・実施する、集中的・包括的な支援モデルの一つとされている。

3.ACTと既存のプログラムとの違い
 本章では、精神障害を持つ人々への従来の地域支援プログラムとして、訪問看護、ケアマネジメントを例に、ACTとの違いをみていく。
(1)訪問看護とACT
 1965年の精神衛生法改正時に法制化された「訪問」は、地域生活支援の方法の一つで、1986年に診療報酬制度に位置づき、「訪問看護・指導」と呼称されるようになった。
 具体的なサービス内容は、先にACTのサービス内容としてあげたものと類似しているが、西尾雅明はACTとの違いを、リハビリテーションの視点と原則から、以下の2点にまとめている(参考文献1.116ページ)。
①訪問看護で直接提供されるサービスの内容は、服薬管理や症状の観察など医学的な対応が主となる医学モデルである
②訪問看護の場合、サービスの質が各機関の裁量にゆだねられる(対象者、ケースロード、時間、頻度)

(2)ケアマネジメントとACT
 イーゼンバーグによると、ケアマネジメントの定義は「さまざまなサービスや資源を調整かつ統合し、利用者および利用者グループの機能の向上を図るように支援すること」とされる(参考文献1.114ページ)。日常生活において困ることを、具体的に支援する生活支援の技法の一つであるが、障害を持つ人々の多様なニーズに応じ、適切な支援を調整・実施する手法である。
 西尾雅明によれば、ACTとの違いは以下の2点である(参考文献1.116ページ)。
①(サービスの)斡旋・調整機能が主となる
②サービス提供に時間枠がある

4.まとめ
 以上、ACTの概要と既存のプログラムとの違いについてまとめた。
 ACTは、既存の支援プログラムを統合し、誰にでも(重度の障害を持つ人)、いつでも、生活の場に訪問して、支援することをプログラム化したものと言える。繰り返しになるが、重要な点はサービスの内容ではなく、クライアントのエンパワメントを促す「社会政治モデル」の視点に立った支援プログラムであることだ。生活上の困難の原因を個人の持つ障害だけに起因するのではなく、制度やサポートの不足といった環境要因をも対象とし、双方に対し積極的にアプローチしていく点が、既存のプログラムとの一番の違いといえる。




(勉強メモ)

※なお、この文章をコピーしてレポートとすることを禁じます。

2008年9月6日土曜日

精神保健福祉論(草稿)

1.はじめに
 精神科病院では、患者の持つ疾患の特性上、必要に応じて患者本人の意思や希望に反する強制的な医療行為や行動制限が実施される場合がある。
 本稿では、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、「精神保健福祉法」)に規定されている、本人の同意なしに実施される可能性のある医療行為と行動制限を確認し、それぞれについて用意されている法制度上の配慮をまとめる。なお、本稿において法律を特定しない場合の条項番号は、精神保健福祉法を表すこととする。

2.精神科病院における強制および行動制限
 精神保健福祉法には、場合により本人の同意なしに行われる医療行為として「強制入院」と「行動制限」が規定されている。
(1)強制入院
①退院制限(第22条の4第3項、4項)
任意入院した精神障害者の退院申請に対し、指定医が入院を継続する必要があると診察する場合、72時間に限り退院を制限できる。なお、「特定医師」の場合は、12時間とする。
②措置入院と緊急措置入院(第29条、同条の2)
指定医2人以上の診察の結果、その者が精神障害者で、かつ、入院させなければ自傷他害のおそれがある場合に、都道府県知事はその者を精神病院に入院させることができる(措置入院)。また、上記手続きを採れない場合、指定医の診断により72時間に限り入院させることができる(緊急措置入院)。
③医療保護入院(第33条)
指定医による診察の結果、入院の必要がある者の内、病識の欠如や判断能力の低下等の理由で、任意入院の手続きがとれない場合、保護者の同意によりその者を入院させることができる。また、特定医師の診察による場合は、12時間に限られる。
④応急入院(第33条の4)
 指定医による診察の結果、緊急に入院が必要な場合で、任意入院の手続きが採れず、かつ、保護者の同意も得られない場合、72時間に限りその者を入院させることができる。特定医師の診察による場合は12時間に限られる。
⑤医療保護入院のための移送(第34条)
 指定医による診察の結果、入院の必要があるとされ、任意入院の手続きが採れない場合に、保護者の同意により医療保護入院させるために、本人を精神病院へ移送することができる。
(2)行動制限(第36条)
 精神病院の管理者は、入院中の者に対し「その医療又は保護に欠くことのできない限度」で、必要な制限を行うことができる。

3.強制及び行動制限に対する配慮
 強制や行動制限は、本人の同意なしに実施される。よって、本人の症状が軽減することや、判断能力が回復する等の状況により、医療の原則である本人の意思に基づく医療行為を受けられるよう、制度上の配慮が用意されている。以下、精神保健福祉法で規定されている配慮事項を説明する。
(1)退院等の請求(第38条の4)
精神病院に入院している者、あるいはその保護者は以下を求めることができる。
①都道府県知事に対し、当該入院者を退院させること
②精神病院管理者に対し、当該入院者の退院を命じること
③精神病院管理者に対し、当該入院者の処遇改善を命じること
 ①の求めを受けた都道府県知事は、都道府県に設置される精神医療審査会に請求内容を通知し、その者の入院措置や処遇について審査を求めなければならない。第三者機関が独立的、客観的判断できるしくみである。
(2)行動制限の制限(第36条2項、3項)
 精神病院では、入院患者の行動制限を認めているが、厚生省告示(昭和63年第128号)に基づき、以下の制限は禁止されている。
①信書の発受
②都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員並びに患者の代理人である弁護士との電話
③上記②の者及び、患者又は保護者の依頼により患者の代理人になろうとする弁護士との面会
 また、以下の行動制限については、厚生省告示(昭和63年第129号)に基づき、指定医が認めなければ実施できない。
④患者の隔離(12時間を超えるもの)
⑤身体的拘束
(3)入院時の通知
 精神障害者が入院する場合、精神病院の管理者は当該精神障害者に対し、精神保健福祉法施行規則に基づき、以下のことを告知するよう定められている。
①患者の入院形態に関する説明
②第36条に規定する行動の制限及び処遇に関する事項
③第38条の4に規定する退院等の請求(任意入院の場合は、第22条の4第4項)

4.まとめ
 以上、精神科病院における強制及び行動制限と、それらに関する法制度上の配慮をまとめた。治療に関して不満があれば、その改善を求めることができ、本人が退院を希望すれば請求が可能となっている。また、精神科病院の監視体制も、厚生労働大臣および都道府県によって整えられ、必要な基準も定められている。制度上は、本人の意志と人権を尊重したものとなっている。
 しかし、病識が欠如する、判断能力が低下する等の障害の特性により、治療方針を本人の意志に委ねることが、医療及び保護に有効か、さらには自傷他害のおそれはないか等、現場で判断に迷うことが予想される。
制度的には様々な配慮がされているとはいえ、それを生かすのは当事者と医療従事者一人一人といえる。精神保健福祉士も、支援者の一人として、人権確保のチェック機能を果たせるよう意識したい。



(勉強メモ)
※なお、本投稿をコピーするなどしてレポート回答とする等の行為はやめてください。

2008年8月18日月曜日

PSW国家試験用 年表

私の国試対策の一環として、ちまちま年表を作ることにしました。
「使いたい!」という奇特な方は、どうぞご利用ください。
転載・配布は自由ですが、間違っているなど、何か問題があったとしても責任は取りませんので、あしからず。

<精神保健福祉関係年表>
(●:法律 ○:重要事項)

●1900年 精神病者監護法
・私宅監置(座敷牢)
・親族の監護義務(現在の「保護者」)
(この頃、呉秀三らの調査がある)
●1919年 精神病院法
・道府県に公立精神科病院の設置を命ずる
(しかし、国の予算は軍備に回される時代で、設置は進まなかった)
●1950年(昭和25年) 精神衛生法
・措置入院制度の整備
・同意入院制度(現在の「医療保護入院」)
・精神衛生鑑定医を設ける
・私宅監置の廃止
(私宅監置を公的監置に置き換え、長期間の隔離が目的)
○1964年 ライシャワー事件
精神障害をもつ19歳の少年が駐日アメリカ大使を刺したことにより、「野放し」となっている精神障害者を「治安的取締りの対象」とする警察庁長官答弁
●1965年(昭和40年) 精神衛生法改正
・保健所を精神保健行政の第一線機関として位置づけ、精神衛生相談員を配置
 ・精神衛生センターを設置
 ・通院医療費の公費負担(2分の1)
 ・措置入院者が離院した時の届出義務
  (治安的要素の濃いものとなり、在宅精神障害者の把握が強調される)
○1969年 Y問題
 精神的に不安定だったY少年を、家族の依頼により公的機関のソーシャルワーカーが警官二人とともに訪問し、入院させた
 ・PSWの倫理だけでなく、精神医療の必要性まで議論される
  (精神科病院があるから、精神病が存在する:不要論)
 ・PSW協会で議論(結果として協会解体、再建)
○1970年 『ルポ精神病棟』
○1984年 宇都宮事件
 入院患者2名が看護職員の暴行により死亡する
●1987年(昭和62年) 精神保健法
 ・任意入院制度が設けられた
 ・国民の精神的健康の保持増進を図ることを目的とする
 ・人権擁護と社会復帰促進が明記された
  (退院・処遇改善請求、精神医療審査会設置の新設)
 ・社会復帰施設(生活訓練施設、授産施設:2類型)
●1993年(平成5年) 精神保健法一部改正、障害者基本法
 (精神保健法改正)
 ・大都市特例(政令指定都市は平成8年から)
 ・保護義務者を「保護者」に変更
 ・グループホームの法定化
 ・社会復帰促進センターの新設
 (障害者基本法)
 ・精神障害者が障害者施策の対象として位置づく
●1995年(平成7年) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)成立
 ・精神障害者の自立と社会経済活動への参加の促進のための援助が加わる
 ・精神障害者保険福祉手帳の創設
 ・通院医療費公費負担制度を保険優先とした
 ・市町村の役割の明確化
 ・精神科病院への「指定医」の必置
 ・社会復帰施設追加(福祉工場、福祉ホーム:4類型)
 ・通院患者リハビリテーション事業の法定化
●1999年(平成11年) 精神保健福祉法改正
 ・地域生活支援センターの法定化
 ・移送制度(法34条)の新設
 ・保護義務の緩和(自傷他害行為防止監督義務が削除)
 ・市町村精神保健福祉業務の実施(居宅支援事業等・平成14年から)
●2002年(平成14年) 精神保健福祉方改正
 ・市町村精神保健福祉業務開始(居宅支援事業等)
 ・政令指定都市に精神保健福祉センター設置義務化
 ・精神保健福祉センターへ「通院医療費公費負担制度」「精神保健福祉手帳制度」審査事務移管(精神保健福祉センターが権限を伴う行政機関となる)
●2005年(平成17年) 精神保健福祉法改正、障害者自立支援法成立
 ・精神分裂病から「統合失調症」に診断名変更
 ・手帳制度の改正(写真添付)
 ・通院医療費公費負担制度、社会復帰施設関連事項の「障害者自立支援法」への統合
  (自立支援医療、地域生活支援事業)
 ・任意入院患者の適性処遇(定期病状報告書の提出を求めることができる(条例が前提))
 ・地方精神保健福祉審議会の必置性の緩和
  (条例を定め、他の医療保健審議会と合流させる、名称設定の柔軟化)

2008年8月10日日曜日

精神科リハビリテーション学(草稿)

WHOの障害構造モデルと国際生活機能分類(ICF)の生活機能構造モデルの違いを述べ、その違いが実際の支援にどのような違いとなって表れるか述べなさい。

1.はじめに
 精神障害者が社会復帰を目指す時には、社会生活技能の向上や、治療履歴に対する偏見からの復権等、個々の課題に応じた取り組みが必要となる。その人の希望や、自己実現に向かうための専門的支援として、精神科リハビリテーションは位置づく。我が国では、社会参加や活動に制限があったり、症状の変化が続くなど、長期に渡り生活の困難がある人達が、その対象となる。
 本稿では、精神科リハビリテーションを実施する上で不可欠となる、「対象者理解」に焦点を当て、精神障害を持つ人の「状態」を把握するための二つのモデルを紹介し、その違いを説明する。また、その違いが具体的な支援に与える影響を説明する。

2.障害構造モデルと生活機能構造モデルの観点
 世界保健機関は、国際疾病分類(ICD)の補助として、1980年に国際疾病分類(以下「ICIDH」)を発表する。ICIDHでは、個人レベルの障害を、「疾病または変調」、「機能障害」、「能力障害」、「社会的不利」に分類する。障害によってもたらされる「社会的不利」の原因を、その人の「疾病・変調」だけに求めず、その人の機能や能力に応じた代替手段や訓練を検討することを示唆するモデルとして捉えることのできる一方で、その人の生活全体における障害を理解するには不十分であると指摘された。
 数度に渡る検討を経て、2001年5月には国際生活機能分類(以下「ICF」)が採択された。人間の生活機能と障害との関係を「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の側面から考える。その人の抱える困難は、個人の能力改善や機能障害を補完する技術により改善されるだけでなく、その人を取り巻く環境の調整により困難が改善されていくという、個人と環境との相互作用が強調されるモデルとして捉えられる。
 ICFは、個人の「できること」に焦点を当て、活動や参加を可能とする方法を環境調整にも求め、結果として社会参加の実現を目指す。ICFは、ICIDHよりもノーマライゼーション理念が反映され、目指すべき社会の姿を示唆している。

3.具体的な支援
 具体的な支援場面では、ICIDHとICFの考え方がそれぞれどんな違いとなって表れるか、私の経験を振り返り、精神障害者の就労支援場面を考える。ここでは、「人間関係の不調」を理由に離転職歴が多い精神障害者の支援を取り上げる。
 気分障害のAさんは、面接を突破し就職はできるが、慣れた頃に「他の従業員からどう思われているのか」が気になり、不安が高まる傾向がある。その結果、1~2ヶ月で離転職を繰り返してきた。
 ICIDHの枠組みで支援計画を立てるならば、継続就労が難しい(社会的不利)理由を以下のように分類して考える。障害により気分の落ち込みが大きく(疾病または変調)、また気分が落ち込みやすい(機能障害)ことと、周囲の状況をやや被害的に受け止めてしまいがちな考え方の癖(能力障害)が気分の落ち込みを生んでいると考えられる。よって、薬物療法により気分の落ち込みの程度や頻度を抑えつつ、認知療法等により気分の落ち込みを生む原因となっている考え方の癖について修正を図っていく計画が立てられる。
 一方、ICFはどうか。上記支援と平行し、職場に対する働きかけを計画する。就労(参加)を妨げているのは、状況を被害的に捉えがちな認知の癖(個人因子)の他に、Aさんが誤認識する原因が職場(環境因子)にもあると考える。個人因子の改善と共に、例えばAさんの上司にAさんの特性(やや被害的な捉え方をすることと、相談により気分の落ち込みは軽減できること、等)を伝えることにより、日常声をかけてもらう、相談に乗ってもらえる体制を整え、Aさんは自分が気になることを確認できる(活動)ようになる。その結果、気分の落ち込みの頻度も少なくなる(心身機能・身体構造)。また、Aさんの気分の波による欠勤時も、不必要な不信感を他の従業員に与えずに勤務できるかもしれない。

4.まとめ
 ICIDHとICFの違いは、支援により本人の変化を促進するだけでなく、それと平行して環境調整を実施することで本人の困難を改善し、その向かう先にはノーマライゼーションが強調されている点であるといえる。
 精神障害者の就労を例にとれば、その人の就労を促進するために、個人の能力や障害の向上や改善だけでなく、職場環境を改善し変化させることも平行して実施することにより、精神障害者の就労継続が可能となる。
 このことは、精神保健福祉士の本来の役割にも合致している。こうした支援を実施するためには、本人のアセスメントだけでなく、本人を取り巻く環境についても正確な把握が必要となる。幅広い観点から、本人のニーズにより近づいた支援計画を立てられるようになりたい。




(勉強メモ)


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2008年7月6日日曜日

精神医学(草稿)

統合失調症、躁うつ病、神経症の三疾患について、病因、症状、治療について、各疾患ごとにまとめなさい。
1.はじめに
 本稿では、統合失調症、躁うつ病、神経症の病因、症状、治療について、テキスト『[増補]精神医学』(へるす出版)を参考にまとめる。

2.統合失調症
 統合失調症は、精神障害の中でも最も発病危険率が高い(0.8%とされている)。内因性の障害とされているが、病因は不明とされており、個人差の大きい様々な症状に対し、生物・心理・社会学的な治療を実施することにより、社会復帰を目指すことになる。慢性進行型とも言われ、進行し続ければ「荒廃」と呼ばれる状況に陥る可能性もある。以下、各項目に沿って説明する。
(1)病因
 前述の通り明らかになってはいないが、有力な仮説として「脆弱性-ストレスモデル」があげられる。これは、心理的ストレスが遺伝的な素因で規定された発症脆弱性を上回ることにより、脳内の神経伝達に障害が発生するという説である。現在も様々な研究がされており、発症の病因は、遺伝子による脆弱性の規定だけでなく、多因子であると考えられている。
(2)症状
 初期、急性期、慢性期と分けて考えられることが多いが、その症状は個別に異なる。
代表的なものをあげると、初期には、疲労感やうつ状態、不定愁訴に相当する症状が表れる。急性期には、妄想知覚や関係妄想、さらに幻覚(幻声)といった、陽性症状と呼ばれるものが表れる。これらの症状が治療によって改善されると、病前に戻ることもあるが、それ以外の人には残遺症状が残り慢性期となる。その症状は陰性症状と呼ばれ、代表的なものには、感情平板化や意欲減退がある。
 詳細は省略するが、その症状は「感情障害」「思考障害」「意欲・行動の障害」「自我意識の障害」「幻覚」の5つに大別される。
(3)治療法
 治療法は、前述した3つの側面を「身体療法」「精神療法」「社会復帰のための治療法」と分類する。症状や、個人の特性に応じ、組み合わせにより治療する。
①身体療法
大別すると、薬物療法と電気けいれん療法とに分類される。前者はより一般的で、抗精神病薬の服用により、神経伝達物質の障害(主にドーパミンD2受容体、セロトニン受容体、その他の遮断)を改善する。鎮静作用等の副作用もあるが、総じて、副作用を上回る症状の改善が見られるといえる。最近では、より副作用の少ない非定型抗精神病薬が開発されている。効能にも個人差があるとされ、症状の改善・安定と副作用との調整のため、服薬の調整が必要となる。
 後者は、前者による改善がみられない場合や、昏迷状態が続く場合、または自殺の危険が高い場合にのみ適応となる。
②精神療法
 支持的心理療法が基本とされる。心理教育などを含め、病気の説明、薬物の服薬管理、再発防止、家族の対応など、病気に対する具体的な対処を身につけてもらうことを目的に実施する。
③社会復帰のための治療法
 社会生活能力の低下を防止し、回復を促進するための取り組みとなる。具体的には、以下の4つがあげられる。日常生活の基本的な事柄について具体的に指導する「生活指導」。通常は集団で、対人関係の取り方や基本的な社会生活技能、それらを包括した問題解決技能等を身に付け、環境への適応力を高めることを目的とした「社会生活技能訓練(SST)」。スポーツやゲームを通して、活動性や関心を高める「レクリエーション」。勤労作業を通して、意欲、自発性、社会性等、障害された精神機能を回復することを目的とした「作業療法(OT)」

3.躁うつ病(気分障害)
 躁うつ病は、統合失調症と共に二大精神病の一つとされている。発病危険率は約1.4~1.6%と推定される。気分障害の中で、症状により双極型と単極型に大別される。「躁うつ病」というと、主に双極型を指す。基本的に感情の障害とされ、適切な治療を受けることにより、ほぼ病前のように回復する例もあるが、再発する例も多い。
(1)病因
 解明されていないが、これまでの研究から、内因性の病気であり、脳の機能的障害に、精神的ストレスや身体面のストレスが加わった時に発病すると考えられている。機能的障害は、家族や血縁といった遺伝素因もさることながら、病前性格と言われるその人の性格が影響すると考えられている。
(2)症状
 躁うつ病の症状は、「うつ病相」と「躁病相」とに大別される。躁病相からうつ病相に移行する時等に「混合状態」と呼ばれる、双方入り混じって出現することがある。
 躁うつ病の症状は、以下の4つに分類される。「感情」「思考」「欲動」「身体症状」である。例えば、「感情」では、うつ病相では、抑うつ、絶望感、希死年慮などが表れるが、躁病相では、爽快感、楽天的、攻撃的などの症状が表れるなど、「思考」「欲動」「身体症状」でもほぼ同様に、概ねうつ病相と躁病相とで逆転したような症状が表れる。
(3)治療法
 「薬物療法」「電気けいれん療法」「精神療法」に大別される。多くは「薬物療法」と「精神療法」を組み合わせて治療に当たる。「電気けいれん療法」は重症かつ自殺の危険が強い、または薬が使えない場合に用いる。
 薬物療法は、抗うつ薬と抗躁薬を症状に合わせて服用する。薬の効果が出るまでに1~2週間かかることが多く、口渇や眠気、だるさといった副作用が生じることもある。抗うつ薬の分類として、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬がある。前者ほど、より副作用が少ないとされているが、効能は個人差があり、医師による服薬調整は必要である。
 精神療法は、主に薬物療法と併用することにより行われる。要点は、本人の気持ちに共感し、否定的なものの見方を主とした考え方の癖に気づかせることとされている。
また、躁病患者に対しては、勢いにつられることなく冷静に接することが望ましいとされ、うつ病患者には、本人が怠けているわけではないことを理解し、安易な励ましや、気晴らしを進めることも、本人の自責や自信のなさを刺激することにつながるため、避ける方が望ましいとされている。

4.神経症
 従来の診断で言うところの神経症は、現在使われている診断基準では統合再分類されている(ICD-10ではF34とF40~45、F54、DSM-Ⅳ-TRでは300と308、309が該当する)。従来の神経症に該当する診断名は、「神経症性障害」とされ、ICD-10では「ストレス関連障害」と「身体表現性障害」を含めた包括群となっている。この包括群の大部分は「心因性」とされており、この点が、前述した二つの障害との大きな違いといえる。「神経症性障害」の代表的な診断には、特定の場所や環境について不安が生じ、動けなくなるなどの症状が表れる「恐怖性不安障害」や、ある考えが繰り返して想起される「強迫性障害」などがある。包括群で見れば「解離性障害」や「持続性気分障害」も含まれる。
(1)病因
 診断名によって具体的な原因は異なるが、大部分に共通することは、通常、危険でない具体的な環境に対して、その人なりの考え方により、不安が誘発される。その考え方は、過去の具体的な経験が影響して形成されることもあれば、根拠のない考えにより形成されてしまうこともある。
(2)症状
 その人なりの考え方や、特定の状況に対する経験などにより発生した不安や恐怖により、身体症状や制御できない行動が発生する。
 例えば、人前で話すことに対し強い不安を感じ、その場に立ちすくんでしまったり、動悸や息苦しさを伴い、意識が遠のいていく等がこれに当たる。他にも、公共交通機関を利用することに対する恐怖が拡大し、外出できなくなり、完全に家にこもってしまうこともある。これらのように、特定の場所や状況に対して症状が表れるだけでなく、何についても過度に心配し、将来に対する懸念により、慢性的な不安状態が続くことも、これに含まれる。
(3)治療法
 躁うつ病の治療に準ずる治療が実施される。すなわち、「薬物療法」と「精神療法」の併用による。精神療法により、考え方(認知の歪み)の是正や、それと同時にサポートを受けながら曝露(不安状況に対し、回避せずに接していく)していくことにより改善を図る。身体症状が顕著な時には、抗うつ薬が処方されるようになった。

5.まとめ
 三疾患についてまとめてきた。各疾患の共通点と相違点を三点から整理する。
 まず、病因について。神経症の一部については、過去の具体的な経験が認知の歪みを形成すると考えられるが、その他の疾患や、統合失調症および躁うつ病については、明確な病因は特定されていない。しかし、統合失調症や躁うつ病に共通して言えることは、何らかの要因による当該疾患の「かかりやすさ」があり、それに精神・身体的なストレスが過剰に加わることにより症状が表れる、内因性の疾患である。
 次に症状について。病因とも関連するが、これらの精神疾患のいくつかの症状は、診断名に関わらず共通して表れる。例えば、考えがまとまらないことや、不眠などである。しかし、その症状が出る理由は患者毎に異なる。統合失調症や躁うつ病であれば、脳の機能の不全によるものも疑われるし、神経症では認知の歪みの内容とその理由による。患者毎に異なる症状を、できるかぎり正確に把握した上で、有効な治療や働きかけを検討したい。
 最後に治療法について。三疾患のどれもについて、薬物療法と精神療法が用いられる。このことは、これらの疾患が、身体的な機能の不全と、精神的な認知の歪み、そして社会的な参加の障害によって構成されており、そのそれぞれを改善することで、社会復帰が実現することを表している。
 現職でも、この三疾患の患者を対象にカウンセリングを実施することがある。最新の知識を正確に把握し、医療から現在に至るその人の状況を掴み、その人にあった対応と社会復帰に向けた計画を提案できるようになりたい。

(勉強メモ)


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2008年6月14日土曜日

精神保健福祉援助技術各論(草稿)

家族への個別援助についてまとめ、考察する。


1.はじめに
 精神保健分野の援助活動は、特に「援助を必要とする人(以下「本人」とする)」と本人が関わる「環境」への援助を意識する必要がある。
援助計画は、本人の「こうなりたい」という「本人ニーズ」を基に作成されるが、もう一つ重要なのは、本人を取り巻く環境に対する援助である。本人支援は、専門家による支援の後、社会生活の中で日常関わる人の適切な配慮が継続されるのが望ましい。援助計画を作成する際、こうした援助体制を築くことも、念頭に置く必要がある。本人を取り巻く環境の代表的なものとして家族がある。
 本稿では、家族への個別支援に焦点を当てる。テキスト『[増補]精神保健福祉援助技術各論』(へるす出版)を中心に、個別援助の過程をまとめ、その上で家族への個別援助の必要性をおさえ、家族への個別支援の在り方について考察する。

2.個別援助のプロセス
 援助の手法としての個別援助は、以下の段階をたどる。
 (1)インテーク
 (2)情報収集
 (3)アセスメント
 (4)援助計画(の策定)
 (5)援助介入
 (6)モニタリング
 (7)終結
 もちろん、全ての段階で考慮すべきことがあり、どの段階も重要だが、本章では家族への個別援助を考察するため、特に(1)~(4)について取り上げる。
 援助は策定された計画に沿って実施される。よって、この段階では、援助対象者の求めを的確に把握し、実施可能な援助メニューの中から最も効果的なものを提案し、援助対象者から了解を得なければ援助は開始されない。
 では、援助対象者のニーズ把握時、支援者が特に意識すべきことは何だろうか。
 テキスト10ページには人間理解のために必要とされるフロイトとランクの説が、13ページにはソーシャルワーカーの基本とすべき姿勢が7項目あげられており、いずれも対象者ニーズを把握するために意識すべきことと考えられる。
 ここで示唆されていることは、対象者ニーズの把握は、質問項目だけではなく、言動や仕草、本人の変化や支援者との関係など、様々な要因によって多角的に把握されるものと解釈する。つまり、言葉にならないニーズも存在し、そこに援助対象者の真のニーズが隠れていることもある。援助計画は、この真のニーズが把握できて初めて、効果的なものとなる。

3.家族への個別支援の必要
 精神障害者の社会生活を援助する時、家族の協力の有無は大きい。しかし、本人ニーズ実現のためだけに家族に大きな負担を強いるわけにはいかない。本人ニーズを満たすために、本人を取り巻く環境(としての家族)が疲弊すれば、結果として本人の再発リスクも大きくなる。
 よって、援助活動は、本人もその家族も幸せになることが、その終結といえる。この実現には、本人援助にあたり、家族が抱く不安を取り除くことが求められる。本人援助同様、家族ニーズの的確な把握と、それに基づく社会資源や制度等の情報提供等が必要となる。
家族へ個別援助を実施すると、家族が精神的な余裕を持つきっかけになる。家族が、本人の生活を支えるために過度な責任を負うことなく、本人とともに幸せを求めることができる。

4.おわりに
 さて、精神保健分野の援助活動について二つのことを述べた。一つは、援助対象は本人と環境(≒家族等)であること。もう一つは、援助計画は対象者の真のニーズが把握されて初めて効果的になるということだ。
 精神保健福祉士の役割は、生活全般に関わる。そのため、本人ニーズだけでなく、家族ニーズも正確に把握して初めて援助計画を立てられる。私には、2.で取り上げた個別援助プロセスの(2)(3)が、本人のそれと家族のそれとが平行して実施されるイメージとして整理できた。
正確なニーズ把握に基づく的確な援助ができるよう、本人だけでなく家族からも信頼を得られるような精神保健福祉士になりたい。
(勉強メモ)

2008年6月7日土曜日

精神保健福祉学(草稿)

ライシャワー事件を取り上げ、精神保健法改正の要点をまとめ、精神保健福祉法との比較をしなさい。


1.はじめに
 日本における精神障害者の処遇は、その当時の世相を反映した法律によって定められてきた。成立順に、1900年の「精神病者監護法」、1919年の「精神病院法」が、1950年の「精神衛生法」へと集約され、国内外の様々な動向を受け、1995年に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下「精神保健福祉法」とする)が成立し今に至る。この約100年の動向をまとめると、「精神障害者を危険な者と捉え、公的な管理と隔離を実施する」ことから、「精神障害者を社会参加が困難な者と捉え、本人の意思と地域生活を支えていく」ことへと、大きく変化してきたといえる。
 この変化は、順次段階的に変更されてきたわけではなく、法改正により精神障害者の管理・隔離が強化されたこともある。
 本稿では、この代表的な例としての「ライシャワー事件」が1965年の精神衛生法改正に与えた影響を整理した上で、その内容と精神保健福祉法の内容とを比較し、現行法がどのような考え方のもとで施行されているかをまとめる。

2.ライシャワー事件による法改正への影響
1950年に成立した精神衛生法は、精神障害者を「社会に害をもたらす危険性があり、監護・治療すべき」存在とし、本人の同意によらない入院手続き等「社会から隔離」するための内容を含んでいた。
 1960年代には、「脱施設化運動」等を受け、精神疾患の予防から治療、社会復帰を視野に入れた法律改正の検討が始まった。その矢先1964年に、駐日アメリカ大使が少年に刺されるライシャワー事件が起こった。
 この事件により、上記検討は従来法をより強化する方向へと向かう。このことは、1965年の法律改正時に追加された以下の内容によって裏付けられる。
 (1)保健所職員による、精神障害者の訪問指導や相談業務を強化
 (2)通院医療費公費負担の導入
 (3)警察官と精神病院管理者に精神障害者に対する通報・届出制度を強化
 これらは、在宅精神障害者の把握と、その指導体制を強調した。(2)の対象者は(1)の対象である。ライシャワー事件の影響は、医療体制の充実ではなく、精神障害者の管理・隔離を強調する内容に反映された。

3.現行精神保健福祉法との比較
 1964年の改正により入院患者は増加した。しかし、一方で保健所等に人員が配置され、通院医療費公費負担が整備されたこと等により、精神障害者が入院だけでなく地域生活の中でケアされる体制も整ってきた。
 1970年代から1980年代には、入院治療中の精神障害者に対する暴行事件や不正行為が複数発生し、再度法改正が検討された。1987年には任意入院制度等を定めた「精神保健法」が、1993年には「障害者基本法」、1994年には「地域保健法」が相次いで成立し、1995年には精神保健福祉法が制定される。この法律は、数回にわたる改正を経て現在に至る。現行精神保健法の要点は以下の通り。
 (1)法律の目的に「精神障害者の社会復帰と自立、社会経済活動への参加の促進」が明記。
 (2)社会復帰施設の充実(精神障害者地域生活支援センター等の追加)。
 (3)在宅福祉事業の充実(ホームヘルプサービスやショートステイ等の追加)。
 内容はこの他多岐に渡るが、精神保健福祉法の内容は基本的に「本人意思尊重と地域生活を支える」考え方に基づいている。

4.おわりに
 現在、社会に少なからず存在する、精神障害者に対する差別や偏見は、過去の法整備が、精神障害者の「管理と隔離」を合法化してきたことによる影響が大きいと言える。しかし、紆余曲折を経て成立した精神保健福祉法の理念は、精神障害者の社会復帰を通した自立と社会参加を支えていくためのものといえる。
 精神保健福祉士として、精神障害者本人の支えとなるのと同時に、様々な機会を通じ、社会への働きかけを積極的に行う存在となりたい。


(以下、レポートメモ)





2008年5月11日日曜日

精神保健学(草稿)

「精神保健とは何か」をまとめる


1.はじめに
 「精神保健」とは、「メンタルヘルス」と呼ばれる「心の健康」を表す。また、WHO憲章(1948年)の前文にある「健康」の内、心理面を対象とするものを「精神保健」という。
 本レポートでは、テキスト『臨床に必要な精神保健学』(弘文堂、2008年)の内容を中心に、「精神保健」の目指すものとその対象、「健康」の概念についてまとめる。

2.精神保健の目指すものとその対象
 テキストでは、精神保健活動の枠組みと方向性を示すものが精神保健で、それを元にして行われる実践的活動をメンタルヘルスとしているが、これらは基本的に同義といえる。
その上で精神保健の目指すものとして、5項目をあげる。以下、その内容を要約する。
 (1)穏やかに健やかに日常生活を送り、さらに健康度を増進させる
 (2)生活の中で、心の健康に悪影響を与えるものに気づき、「心の不健康状態」となる前に対処できるよう援助する
 (3)(2)の対処がうまくいかない場合に、その状態を早期発見できるよう援助する
 (4)(3)と平行し、早期に治療的対応の援助をする
 (5)精神障害者の希望を考慮した社会復帰を目指し、また、そのための社会資源の整備を行う
 このように、精神保健の対象は精神障害者に限らず、心理的に健康な者や、病気ではないが不安や苛立ちを感じている半健康な人も含む。また、人が生活する「場」も対象となる。
 ただし、現在、精神保健のサービスや活動として実施されているものの中には、精神障害者のみ対象としたものもある。テキストでは、目的は「国民の精神的健康の向上」をあげつつ、内容の多くが精神障害者を対象としている精神保健福祉法を例に説明している。このように、精神障害者の治療や社会復帰のみを対象とする精神保健を特に「狭義の精神保健」とする考え方がある。この場合、前述した5項目によって目指す精神保健は、「狭義の精神保健」を包括した「広義の精神保健」とされている。

3.精神保健が目指す「健康」とは何か
 前述した5項目により、精神保健が主に目指すものは、健康度の増進、「心の不健康状態」の予防、その早期発見・治療、精神障害者の社会復帰といえる。本節では、ここで使われる「健康」の概念を整理する。
 WHO憲章では、以下のように定義されている。
健康とは、身体的、心理的(精神的)、社会的にもwell-being(よい状態)な状態をいうのであって、単に病気や虚弱でないことをいうのではない
 これは、「社会で人間らしく生きる」ことを含んだ考え方で、健康が個人の責任によってのみ獲得できるものではなく、国や社会の協力を含めて初めて獲得できるものであることを示す。
 例えば、仕事に就きたい人が、精神障害の症状により長時間勤務が難しい場合、適切な就労支援により、事業所に理解を得た上で短時間勤務から仕事ができる場合、その人は社会的によりよい状態(well-being)になるといえる。これは、その障害者の努力や意志も去ることながら、適切な支援制度があって初めて実現する健康といえる。
 WHO憲章では、健康の絶対的な理想像を定義づけているが、現実には相対的によりよい状態を目指すことになる。

4.まとめ
 精神保健とは、精神障害者に対するサービスの考え方や実践だけではなく、身近な生活の場所を含む、ありとあらゆる人と場所の健康を維持・増進する考え方や実践であるといえる。
 よって、精神保健福祉士が取り組む精神保健の現場も、精神障害者の医療・保健・福祉だけでなく、私の身近な職場や地域社会、生活を支える制度等、人々の絆、物理的環境、制度の調整も含まれる。私が関わる全ての人が、自分なりの健康を維持・増進できる調整も、確かな精神保健だろう。時と場所、場合に対応した様々な精神保健を実践できる精神保健福祉士になりたい。



(勉強メモ)


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2008年5月10日土曜日

精神医学(草稿)

精神保健福祉法による精神科入院形態のうち医療保護入院と応急入院、措置入院と緊急措置入院を比較して違いをまとめる。


1.はじめに
精神障害者の入院形態は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」)で定められている。
医師が当該精神障害者(以下「本人」)に対し、入院が必要と診断し、それに本人が同意すれば入院となる(任意入院)。しかし、本人の同意が得られない場合や、精神障害により本人が入院に関する妥当な判断ができない状態と精神保健指定医(以下「指定医」)が判断した場合、保護者の同意や、指定医の判断等により、本人を入院させることができる場合がある。以下、精神保健福祉法で定められた任意入院以外の入院形態をまとめる。

2.医療保護入院と応急入院の違い
 医師は入院が必要と診断したが、本人は入院に同意しない場合、精神病院の管理者は以下の条件により、本人を入院させることができる。
(1)指定医が入院は必要と診断した
(2)保護者(精神保健福祉法20条による)またはそれに準ずる者(同法34条2項)の同意がある
(3)上記(1)の診断の内、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障があると診断される
本人の同意なく入院させる場合、条件(1)は必須項目である。その上で(2)の有無を確認する。保護者の同意により「医療保護入院」となる。また、保護者がいない場合は、本人の扶養義務者の同意により、家庭裁判所が保護者の選任をするまでの4週間に限り本人を入院させることができる。
 さらに、医療および保護の依頼があった者について、急速を要するために、保護者等の同意を得られない場合、指定医が本人を(3)と診断することで、72時間を限度に本人を入院させることができる。これを「応急入院」という。

3.措置入院と緊急措置入院の違い
 指定医が入院を必要と診断したが、本人が入院に同意せず、かつ保護者等の同意も得られない場合、都道府県知事は、指定する指定医が本人を「医療および保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある」と認めた場合に、国等の設置する精神病院又は指定病院に入院させることができる。これを「措置入院」という。
2人以上の指定医により入院が必要と診察すれば、通常の措置入院だが、急速を要する場合に1人の指定医の診断で入院させることもできる。この場合は「緊急措置入院」となる。入院期間は72時間に制限され、その期間内に通常の措置入院とするか否かの決定が必要となる。

4.まとめ
精神保健福祉法は、その性質(本人の同意なく、本人以外の者の同意や措置で入院させることができる等)や、人権への配慮とそれを擁護する観点から、数度に渡り改正されてきた。近年の統計(平成8年~16年、『精神医学』238ページ。)によると、入院患者数は減少しており、任意入院者が全体の6割強を占め、措置入院者の割合が減少し、医療保護入院者の割合が増加している。このことから、インフォームドコンセントが意識され任意入院が適用されていることや、本人に対する当事者の理解の広がりや深まりを読み取ることができる。
 また、医療保護入院や措置入院は、精神医療審査会(都道府県知事が任命する委員によって構成)が定期的に報告を受け、診断の妥当性を審査する。さらに、本人や保護者は、退院や処遇の改善を都道府県知事に請求できる。その内容も精神医療審査会が審査し、適切に対応する。このように、本人や保護者等の希望に沿いつつ適切に判断できるよう、専門家が適切に介入するしくみとなっている。
 以上まとめた通り、精神保健福祉士は精神障害者の入院を直接判断する立場にない。しかし、指定医が本人の入院の必要を判断するのに必要な情報を、正確かつ的確に把握し伝達する役割は課せられていると考えられる。精神保健福祉法の目的を実現できるよう、当事者と向き合っていきたい。




(勉強メモ)


(入院形態のフロー)

※なお、公開されている文章をコピーして提出課題とするのはやめてください。

通信講座のレポート(草稿)をアップしていきます

この春、2008年4月から、Iyokiyehaは今のお仕事と平行して、日本福祉教育専門学校の精神保健福祉士養成通信課程なるところに籍を置いています。
この課程は、ほとんどが自宅学習で、レポートを提出する形で学習を進めていきます。
私はこのレポートをパソコンで作成していくので、その内容を今後もアップしていこうかなと考えているところです。
提出する原本をアップするのもどうかと思うので、草稿段階のものをアップします。
なお、同じ課題を課せられている方が、ここで公開されている文章をコピーしてレポート作成するのはやめてください。

目的は、以下の2点。
1)人目につく場所に自分が作成した文章を置くことで、質の維持を図る
2)Blogを読んでくれている友人や専門家のみなさんから、コメントがもらえたら儲けもの


1)は、Iyokiyeha自身に対する縛り。
2)は、コメントでも面と向かってだったり、メールだったりでレスポンスがあったら、素直にうれしいのと、重要な指摘がもらえたらレポートの質もあがるかなというねらいです。


このBlogを介したコメントの残し方は、2008年4月13日投稿「コメントの残し方」(画面右側:ラベル欄の「コメントの残し方」をクリックするか、下記を参照)をご利用ください。
http://iyokiyeha.blogspot.com/2008/04/blog-post_5917.html
コメントは書き込んでも、全てが公開されるわけではありません。
Iyokiyehaが目を通して「承認」したものについて公開されます。
「公開しないでください」の文言がないものは基本的に公開したいですが、遠慮なくご利用ください。


以下、PSWの通信講座を受けようと思ったきっかけと、それにまつわる近況です。

学部、大学院と、教育学の世界に身を置きながら、課外活動として野外活動をやってきたIyokiyehaには、福祉の素養がありません。
唯一、学生時代に静岡市に登録し、無資格ヘルパー(当時は、そんな制度もあったんです)をやっていたという実績はありますが、特定の人の支援しかやっていないため、対象者の病名も当時はよくわかっていなかったというくらいの、お粗末な実績です。


そんな私が、市民活動で教育に関連した仕事を経て、今の仕事に就いているというから、人生何が起こるかわかりません。
今の仕事も、福祉の現場というわけではないのですが(労働行政に位置づいています)、その性質上、医療・福祉現場の方とやりとりすることも多く、勉強不足を感じているところです。
ちまちまと対処療法的に勉強していくのも悪くないですし、むしろ自分の専門である職業リハビリテーションをきちんと勉強した方がいいのかなとも思うわけですが、私の性格上「一つのことだけ集中して」やっていくことがどうもできないので、いい意味で自分を追い詰めるために挑戦した次第です。
追い詰めて試験(小論文ですが)を受けてみたら、受かってしまった。
入学手続きをしたら、秋に父親になることが発覚してしまった。
そんなうれしいハプニングも起こっていて、いろんな意味で「追い詰められて」いるわけですが、最近はそれすら「おもしろがって」考えられるようになってきています。

いろいろ考えながら、裾野を広く取り組んでいると、目標となっているものに対する認識も深まるものだなぁとつくづく感じます。
時間と作業量の調整は常にしないといけませんが(これが苦手だったりする)。
合気道やりながら、身体と思考の関連について認識が深まったり、思考の変化により行動が変化するという一般的な認知-行動の考え方に留まらず、行動から思考に変化を生むなどという仮説が浮かんだり(誰かこの手の理論知っていたら教えてください)。
手話の勉強をしながら、コミュニケーションの成立や不成立を考えたり、本当の意味での「わかった」の感覚を考えてみたり、通訳をするときの「手話-音声」「音声-手話」のモードの切り替えが、きっと脳の神経系のしくみの違いによって成立しているのだろうと考えてみたり。
職業リハビリテーションに携わりながら、人の生活を成立させるための条件とか、仕事をする意味とか考えてみたり。

昨年度のIyokiyehaは、好奇心一杯でいろんなことをしていた自覚がありますが、どちらかというと、置かれた環境も手伝って「アウトプットoutput」していた一年だったように思います。
今年度のIyokiyehaは、環境が変化したこともあるので、もう一度「インプットinput」を意識してやっていこうかなと思っています。
もちろん、だからといって引きこもってがりがりやるだけではないですが、意識だけは少しシフトしようかなと思っています。


このBlogも、そんな意識の変化と共に、トーンが変わっていくかもしれませんが、生身のIyokiyehaと共に、どうぞ今後ともよろしくお願いします。