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2009年2月26日木曜日

生活は、いつも刺激的だ(PSW実習9日目)

今回の実習は、いろんな支援を見せてもらえている。
障害者就業・生活支援センターのアウトリーチに同行することもあり、また就労移行・継続支援の現場で利用者と一緒に作業したりと、盛りだくさんである。

雇用支援の立場で「職場訪問」を考えると、どうしてもフォーマルな訪問(事前連絡、訪問、状況確認、打ち合わせ、みたいな)が本流で、インフォーマルな訪問は例外のように考えてしまう。
就生支援センターは、マンパワーが足りないこともあり、「ちょっと顔見せ」のような支援も実施している(せざるを得ない?)。
ただ、こうしたマメなちょっとした訪問によって、思わぬ雑談が聞かれることもある。
地域密着型の支援っていうのは、こういう生活感のあるやりとりが交わされるものを言うのだなと実感。
私自身の支援スタンスも、もっとハイブリッドでいいんじゃないかと思えてきた。
全ては、「ニーズに応じる」ことで形成される。
フォーマルが適した事業所やクライアントがあれば、インフォーマルが大切になる事業所やクライアントもいるはず。
大切なのは、その真意を、変化も含めて如何に把握して、情報更新していくか。
支援チームで、如何にその情報を共有して(同期して)いくか。
原点に返ってきた実感もある。

就労移行・継続支援の現場では、授産活動を如何に獲得していくかというマネジメントスキルも重要である。
重要であるがゆえに、厳しい納期も考慮する必要が生まれ、そのために一人一人を丁寧にアセスメントすることが難しいことが分かる。
Iyokiyehaは実習中に、自動車のウォッシャ液用ノズルの組み立てや、100円ショップで売っているような園芸用の土の袋詰め、同様に鉢植えの札の訂正シール貼りなどに参加している。
もちろん、どれも誰よりも速く作業できます、指導員さんからの評判もいいです(笑)。
さすが、GATB器具M・N検査130%の男です(わかる人は笑うところです)。
ただ、この状況下で利用者を観察して、分析に足る情報が収集できるかというと、少しコツが要る。目の前の作業に没頭したら、観察は不可能である。
なかなかに、難しい。

上記を含めて、生活というのは、結構刺激的なんだなと感じる。
いろんな現場を見せてもらっているが、今回主な拠点は、地域活動支援センターである。
プログラムを持った施設であるが、参加する・しないはメンバーに委ねられている。
この独特な雰囲気は、嫌いではない。
むしろ、好きかもしれない。
そして、やることがなく、メンバーさんと共に、何を話すこともなくソファに座って全体を眺めていると、様々な人間模様が見えてくる。
好いた惚れたの関係あれば、仲良しグループがあり、そこからはじかれた人がいたり、我関せずを決め込んでいる人が、実は他の人の顰蹙を買っていたり、とにかく人の顔色を見る人がいれば、どこまでもKYで幸せそうな人がいる。
地域活動支援センターは、負荷や刺激が少ない場としてこれまで考えてきたが、こうした居場所を利用したり、そこに適応することによって、クライアントが受ける刺激や負荷というのは、結構なものではないのかと感じるに至る。

そして、これらをひっくるめて、クライアントの人生が形成されるのである。
支援者の想いやクライアントとの関係性を含め、経験がクライアント自身の人生の一部となる。
こうした歴史は、決して無下に扱ってはいけないように考えるようになった。

2009年2月25日水曜日

変わり続けられるように、変わっていく(PSW実習8日目)

しばらく、アップはさぼっていましたが、学び多き実習です。
実習で得た気づきを、一度「錨」として記録しておきます。

■変わり続けられるように、変わっていく
本日意識化された、大きな気づき。
私が目指す「成長」の目標となりうる考え方です。

「変わらない」ことが求められているようでいて、実際は「変化」が求められていることは、確実なことである。
環境が変われば、求められることは自ずと変化する。
第44代アメリカ大統領のオバマ氏が、選挙活動中に「Change」と言い続けていたが、まさにこの地点での変化を意味していたのだと思う。

組織でも個人でも、仕事でも具体的な動作であっても、変わらないことは評価されたとしても、変えられないことは評価されるどころか、命取りになることもある。
武道で言えば「居付き」だろうか。
旧体制の組織が、変わることができずに崩壊に至ることは、社会保険庁の解体など日々の報道を見れば明らかである。

Iyokiyehaが目指す成長の一つの目標として、この「変わり続けられるようになる」ことを掲げたい。
ある考え方に固執するのではなく、だからといって芯のない行き当たりばったりでもなく、一つの芯をもちながらも、状況に応じて次々と形や考え方を変えていける、そんな生き方をしたいと思うに至った。

このことは、実習も含め、最近の読書(司馬遼太郎『竜馬がゆく』文春文庫など)の影響もあるのだろう。


■サービスは、タガタメ?
実習先に勤務する、あるワーカーさんから、Iyokiyehaの勤務先に関する手厳しい言葉を頂戴した。
結果として彼は「使えない」と評価をしている。
土地が違えば、事情も違う。
きっと、何らかの理由があって、今の形に至っているのだろう。

上記とも関連するが、しかし、それで本当にいいのだろうか?
法律に「関係機関への助言」が加わったからといって、増員まで確保しているのに、なぜか「それ以前」を意識せざるを得ない機会だった。
全てのニーズに応じることは、人員に制限がある以上、不可能である。
ただ、だからといって利便性を強調した挙句「使えない」となってしまったものを、放置してしまっていいのだろうかと考える。
そのことが、回り回って一番不利益を被るのは一体誰だ?と考えると、しなければいけないことは、自ずと見えてくる。

口では何度も言うが、私は、今の職場に対し「殿様気分でいたら、骨抜きになる」と思っている。
草の根ニーズをいかに汲み取るか。
いかにwin-winの関係を築けるかが、問われているように思う。

話の中で「Iyokiyehaさんはカウンセラーらしくないね」と数度に渡り言われた。
超個人的には、褒め言葉だと思って捉えているが、組織人としてのIyokiyehaは、この言葉に大きな危機感を抱いている。

酒の席ですが、今年度スカウト二件目です(苦笑)。


■支援と言う名の「作業」に関して
興味深い話を聞いた。
ロシアの拷問に、こんなものがあるらしい。
「囚人に、大きな穴を地面に掘らせる。適当な大きさになったら、今度はそれを埋めさせる。何度も何度も繰り返させる」
結構、発狂する人がいたらしい。
拷問の一つとして、こんなことがされていたのですね。

さて、身近なところにこういった「作業」、ありませんか?
私は、昨年あたりから考える感覚が麻痺していたようです。
疑問は持ち続けないと、「居付き」が生じてしまいますね。

2009年2月17日火曜日

生活課題へのアプローチ:PSW実習2日目

Iyokiyehaの現職は、障がい者の雇用/就労支援。
よって、「その」段階にある方が、主なクライアントとなる。

地域生活支援センターでの実習2日目。
申し送りでは、施設で接しているだけでは見えてこない、地域生活における課題を持つ人の話題で一杯になる。
片付けられない方の自宅の写真だったり、金銭管理が難しい方、金銭管理の中でも使いすぎてしまう人だけではなく、お金の使い方そのものや、種類の区別がつかないなど様々。
中には、サラ金に手を出してトラブルになっている方もいるそうだ。

生活支援の難しさは、こういうところにもあるのかもしれない。
果たして、こういった課題に対し、現場のPSWはどのように関わっていくのか?
もちろん、個人やその障害特性にあったアプローチを検討するのだろうが、果たしてそれはどんな内容なのか、非常に興味深い。

というのも、普段Iyokiyehaが接する人には、こうした課題を持つ人が一部いるものの、それが主な支援内容でないことがほとんどである。
それは、職場定着を主な業務としているからであり、ここに障害者職業センターと地域生活支援センターの業務の違いが浮き彫りになる。
そこでは、とうぜん課題へのアプローチや行動変容のための働きかけは変わってくるだろう。
SSTや認知行動療法、それらをひっくるめた職業指導、相談・・・私のオプションで応用が効く部分もあるだろうが、おそらくその方法や姿勢は私のそれと大きく異なるのだろう。

職場ではなく「生活」に関わる支援者の、支援の現場に立ち会えたらラッキーかなとも思う。楽しみです。

2009年2月16日月曜日

精神障害が有する易疲労性:PSW実習1日目

障害者職業カウンセラーとしての眼鏡を外すことを意識すると、今までにない視界が開けてくる。

今日の疑問は、「物言わない人を、どう評価するか」と「易疲労性は、何によってもたらされるか」ということ。

日常の職業相談・職業評価場面では、一時間座って話が出来ない人に対して「耐性なし」の評価を下すことがほとんどである。
つまり、「一般就労のためには、体力面でまだまだ課題がありますよ」ということだ。

PSW講座の実習場所が地域活動支援センターということもあり、プログラム中に中座するメンバーや、机に突っ伏してしまうメンバーが複数人いる。
ここでは、それが珍しくない。
普段の「常識」では考えられないが、そんなことにとらわれていては、本質を見逃してしまう。
質問しても思い通りの返答がなく、会話がちぐはぐになっていく人、反応にムラがある人、反応そのものがない人、寝たり起きたりとにかく落ち着かない人・・・
いろんな人がいて、それぞれに生活をしているわけだが、その一挙一動をどのようにとらえていけばいいのか。
それが、PSWとしてのアセスメントの入り口なのかもしれないと思った。

関連もするが、精神障害を持つ人の「易疲労性」は一体何によってもたらされているのかということが気になる。
実際に「疲れている(疲れを感じさせる体内反応が起こっている)」のか、それとも服薬等の影響により、眠気などの「疲れを想起させる身体反応が起こっている」のか、それとも、そもそも精神障害の身体反応なのか。
うまく言葉で説明できていないのだが、私が何を気にしているのかというと、職業評価にも通ずる「耐性」を評価し、耐性向上のための取組みを計画する際、易疲労のしくみがわかっていないと、結構とんちんかんなことをやってしまうのではないかということである。
環境から受ける刺激に対する耐性というだけであれば、環境負荷を段階的に引き上げ、その段階ごとに適応していくことによって、耐性は向上する。
しかし、易疲労性による疲れが、服薬による脳内反応が擬似的に身体反応を引き起こしているのであれば、障害を持たない人の疲れとはそのしくみが異なり、前述した計画では耐性向上にならないのではないかというものである。
職業リハビリテーション計画を立てる際、単純な例をあげれば、知的障害を持つ方の耐性向上の計画と、精神障害による易疲労性を持つ方の耐性向上の計画というのは異なるのではないかという仮説である。

前者は実習中に生PSWから教えてもらうことで、後者もそれに関する文献を探ることで解決可能だと思われるが、もし、コメントでさらりと解決してくださる方がおられれば、是非コメントしていただけたらと思います。

2008年8月21日木曜日

精神保健福祉士スクーリング(6日目)精神医学

6日目。
現役医師による講義。
第一線の医師から、めちゃくちゃ内容の濃い話が聞けた。
昨日同様、やはり知識の整理と、今後の勉強のためのハシゴをかけてもらうような内容ではあったが、普段触れることのない医療の内容(人の身体のしくみと働きかけの内容)についての講義だった。

昨日と同じように、率直に「考える暇のない」講義だったので、現時点(内容のまとめはじめの今)思索が深まるものではなかったため、「考えたこと」は省略する。一つだけ強く感じたのは、医学情報は大袈裟ではなく「5年で新しくなる」ものであるため、常に情報を更新する必要があるということ。新薬の情報や、医学的な成果は、新聞にそれほど大きく掲載されないため、「無理のない範囲で」自分なりの情報源をもたなければならないと思う。


<講義内容概要>
1.精神医学基礎
(1)勉強する上での注意点
 ①「医学用語」の意味
「医学用語」は、「日常用語」、そして「心理学用語」と、それぞれに共通する言葉を使いながらも、その意味するところが違うことも多い。医学的に用いられる場合の「定義」をきちんと確認する。
 ②Web情報
 学会および公文書(厚生労働省など)といった内容と、それ以外のものとでは信憑性の部分で差があるため、注意する。
(2)入院の形式(レポート講評)
 精神保健福祉法において、入院形態が定められているが、それぞれについて精神科医がどんな判断をしているか理解することが重要。
 ①医療保護入院
  医師は、「本人の病識の有無」を判断する。
  -検討の三点セット(患者、保護者(法的)、指定医)
   病院勤務時、その時点で指定医が不在の場合は安易に救急患者を受けない
 ②措置入院
  医師は、「本人に自傷他害の恐れがあるかどうか」を判断する。
 ③応急入院
  医師は、「②に加え、保護者がいても同意できる状態にあるか」を判断する。
※ちなみに、Iyokiyehaが前回提出したレポートは、無事にパスしました。コメントをくれた皆様、ありがとうございました。
(3)精神疾患の分類
 ①内因性(身体因性)
  障害の原因を「身体」(脳の機能的障害)に求める
  -統合失調症
  -躁うつ病(気分障害)
 ②外因性
  障害の原因を「身体」(外的要因の脳への侵襲、脳以外の身体疾患が原因)に求める
  -器質性精神病(脳に「何か」がある)
   脳腫瘍、脳外傷、脳炎、神経梅毒、てんかん
  -症状精神病(別の身体疾患が原因)
   感染症、膠原病、内分泌代謝疾患
 ③心因性
  障害の原因を「精神的なもの」に求める
  -神経症(身体要因がないもの)
  -心身症(身体要因(原因疾患:胃潰瘍など)があるもの)
―――
 ④人格障害
  発達そのものの異常(①②③が、理由により正常発達が阻害されるのに対する分類)
  -境界性人格障害
  -自己愛性人格障害
(4)その他
 「不安」と「恐怖」の違い
 ①不安
  対象がはっきりしない、漠然としたおそれ
  アプローチ:情報を整理して、対象を明確にする
 ②恐怖
  対象のはっきりしたものに対するおそれ
  アプローチ:認知を切り替えて処理する。環境を調整する。

2.統合失調症
 統合失調症とは、思考内容・思考形式の障害
(1)疫学
 ①頻度:人口の1%程度
 ②年齢:15~35歳がほとんど
 ③病因:多因子遺伝、脆弱性-ストレスモデル、神経科学的研究、ドーパミン仮説
  (これらに限定されていない)
  -ドーパミン仮説(メモ参照)
   ドーパミンが過剰に放出され不必要な情報まで伝達してしまう
(2)分類(統合失調症・分裂病)
 ①破瓜型:10~20代、予後・不良
  陰性症状主体、慢性の経過(パーソナリティの障害)をたどる
 ②緊張型:若年、急性発症、ほぼ寛解だが周期性あり
  緊張病性興奮、緊張病性昏迷
 ③妄想型:30代、予後・ある程度は維持
  被害妄想(体系化される)
 ④単純型:緩徐進行、予後・軽度不良
  陰性症状中心、幻覚はない、パーソナリティの貧困化
(3)症状(略)
(4)診断
 ①病歴聴取
 ②面接・行動観察
  -プレコックス感(重いものを知っておくべき)
 ③精神症状
  -シュナイダーの一級症状(略)
(5)治療
 ①抗精神病薬
  -ドーパミンレセプタをブロックする
 ②生活療法
 ③作業療法
 ④電気ショック
 ⑤その他(アフターケア:デイケア、SSTなど)

(続く)

2008年8月20日水曜日

精神保健福祉士スクーリング(5日目)法学・心理学

5日目。
共通科目の講義は、勉強していない(まだレポート課題になっていない)ので、ちんぷんかんぷんになるんじゃないかと思っていたのだが、講師のスキルも高く、どちらかと言うとあまり好きでない法学も、何度も断片的に勉強しつつも全体像がつかめない心理学も、どちらもいい意味で緊張感のある講義であった。
知識の整理で精一杯だったので、考えたことは少ないが、以下の通り。

■日常の業務に埋没していると、各種法律の改正は二の次三の次になってしまいがちだが、大局観を得るためにも、基本的なことを把握した上で改正の内容は把握しておいた方がいいと思った。精神保健福祉士取得目的の一つでもあったのだけれども、特に福祉関係の法律について、一通りのことは知っていないと、就職を通じたライフプランニングは難しいのだろうなとも感じた。
■前々から感じていたことだけれども、心理療法は形だけ真似してもその本質は掴めない。基礎理論の上に、パッケージ化されたプログラムが開発されているのであって、パッケージを形だけ真似しても、本来のプログラムがターゲットとしている「治療」や「教育」的効果は期待できない。


<講義内容概要>
○法学
1.日本国憲法
(1)憲法のしくみ
 ①基本的人権
  -個別的人権(後述)
  -包括的人権(11、12、13、97条)
 ②統治
  -国会
  -内閣
  -裁判所
  -予算
  -地方自治
     ・・・他
  に大別される

(2)個別的人権
 ①平等権(法の下の平等(14)、男女平等(24))
 ②自由権(「公共の福祉」に反しない限り、法の下に、国民は平等)
  -精神的自由(思想(19)、信教・政教分離(20)、集会・結社(21)、学問(23))
  (内に秘めている限りは、何を考えてもよい)
  -経済的自由(職業選択(23)、財産(29))
  (仕事は何をやってもいいし、私財は守られる)
  -人身の自由(苦役からの自由(19)、財政手続き(31)、刑事的(33-40)
  (拘束されたり、不当な扱いから守られる)
 ③社会権(後述)
 ④参政権
 ⑤受益権

(3)社会権(生存権)
 ①生存権(25)
  -(25-1)最低限度の生活を営む権利(国民の権利)
  -(25-2)(国の責務)
 (重要)朝日訴訟
  ポイント:行政不服審査法、行政事件訴訟法、最高裁判断
  -行政不服審査:行政機関に対する審査請求
  -行政事件訴訟:行政処分の取り消しなど、裁判所判断を求めるもの
  -朝日事件の最高裁判断
   結論:本人死亡により上告は認めず
      ただし、ⅰ:憲法25条は「プログラム規定」
          ⅱ:生活保護基準の設定は行政の裁量
          ⅲ:ⅱについて、本件では行政の逸脱・濫用はない
 ②教育権(26)
 ③労働権(27)

2.成年後見制度(民法)
(1)平成12年改正の経緯
 ①判断能力を否定するような制度だった
 ②戸籍に登記されてしまったことにより、家族が二次被害を受けるケースがあった
(2)改正内容
 ①戸籍登記の廃止(後見登記制度へ)
 ②名称変更(禁治産者から成年被後見人へ)
 ③配偶者後見人原則の廃止
 ④市町村長への申立て権付与
 ⑤複数後見・法人後見が可能となる
 ⑥任意後見>法定後見
         ・・・他
任意後見:自分に判断能力がある時に、公正証書によって信頼ある人に、将来後見人となってもらうことを依頼しておくもの。依頼されたものは、本人の判断能力が不十分になった際、家庭裁判所に申立てをし、家裁の判断により成年後見が開始となる(監督人を別に立てておく必要がある)。
※成年後見制度の効力は「財産取引行為」(「身分行為」は後見人の権限が制限される)


○心理学
1.心理学基礎
 学問的な心理学は、ブントWundt.W.がライプチヒに心理学実験室を創設(1879年)から始まる。
(1)構成心理学
 ブントが始めた、事象を構成要素に分析する
(2)ゲシュタルト心理学
 全体としてのまとまりを対象とする
ウェルトハイマー、ケーラー、コフカ:知覚・思考・記憶など
レヴィン:人格心理・社会心理
(3)行動主義心理学
 客観的で観察可能な行動を対象とする
  ワトソン:刺激(S)→反応(R)
  トールマン、スキナー、ハル:学習の心理
(4)精神分析学
 意識にのぼらない欲求・感情に注目
  フロイト:自由連想法・夢分析→人格理論、発達理論、治療理論
  アドラー:個人心理学
  ユング :分析心理学
 新フロイト派
  ホーナイ、フロム、サリヴァン:自我心理学、対象関係論など

2.動機づけ
(1)過程
 ①欲求need
 ②動因drive(生理的な現象)
 cf:誘因(外的要素)
 いずれも「○○したい」と行動しようとするもの
 「動機づけ」:行動を開始させ、方向づけ、継続させる過程
 ※マズローの「動機の階層説」
(2)内発的動機づけ
 環境に対して、自発的・積極的に働きかけ、効力感を得ようとする動機づけ(ホワイト)
 例:感性動機(感じてみたい)
好奇動機(やってみたい)
操作動機(使ってみたい)
 内発的動機づけの本質は、有能さと自己決定を追及する点にある(デシ)
 -達成動機:優れた基準や目標を立てて、それを達成しようとする動機。
原因帰属が動機づけに影響する(能力、努力、困難度、運)

3.学習
 ソーシャルワークには、対象者への学習を含めた動機づけが必要
 「どう引き出すか」
学習の心理
(1)古典的条件づけ(パブロフ)
  (=一番最初の、レスポンデント)
  無条件刺激に付随する条件刺激により、無条件反応が条件反応となる
  例:音がすると唾液を出す犬
(2)オペラント条件づけ(スキナー)
  (=道具的条件づけ)
  自発的行動によりごほうびを貰うと、自発的行動が「道具」となる
  -強化:行動頻度を増やす(報酬を与える)
   連続強化:毎回報酬を与える。新しいことを覚える時に有効
   部分強化:時々与える。学習を維持するのに有効
  -消去:行動頻度を減らす(無視するなど)
(3)観察学習
  モデルの行動を観察するだけで、実行や強化を行わずに成立する学習
  モデリング理論(バンデューラ)

4.発達の心理
 発達:成熟による変化(学習:経験による変化)
  成熟優位説(ゲゼル)
  環境優位説(ワトソン)
 発達段階
(1)フロイト:性的
  -リビドー
(2)エリクソン:社会的
 ①ライフサイクル(老年まで)
 ②社会の中における発達
 ③対比概念と「社会的危機」
 ④徳(獲得される性質)
(3)ピアジェ:認知
  -能動的発達感

5.臨床心理
(1)対象者理解
 ①観察
 ②面接
 ③検査(観察が内包されている)
(2)援助
 ①精神分析
 -無意識の心の動きを対象とする
 -幼年期の体験に原因を求める
 ②行動療法
 -学習のしくみを利用し、セラピーに役立てる
 -適切でない行動が学習されているから、消去する(例:不安の軽減)
 例:SST
 ③人間性心理学
 -ロジャース:来談者中心療法(クライアントの意思を重要視)
        後年、エンカウンターグループへ発展

2008年8月19日火曜日

精神保健福祉士スクーリング(4日目)精神科リハビリテーション学

4日目。
スクーリング折り返し地点である。
率直なところ、思っていたよりも熱のこもった講義が立て続けに並んでいるので、心地いい疲れに襲われている。
これまでのところ、講師は皆PSWとして現場を作ってきた人たちで、理論を具現化し、現在は教育に携わっているということで、内に秘めた「熱」(スピリッツとか、パッションとかとほぼ同義)が抱えきれずにほどばしっているようにも感じられる。

講義を受けて考えたことは、以下の通り。
■「常識を疑う」ことについて、私はそれほど抵抗がない種類の人間である。しかし、私が持っている情報そのものが、常に更新されていなければ、比較判断する材料それ自体が信用できないものになってしまう。抗精神病薬がドーパミン受容体を増やしているという情報を知っているのと、知らないのとでは、私が取り得る支援方針の幅も大きく変わってくることになる。継続して、勉強が必要である。
■「クライアントの真のニーズに合った支援を組むことができれば、失敗しない」という持論が、それほど間違っているとは思わないし、「『できない』と言わない」という私の目標設定も、実現不可能とは思わない。ただ、これまで「病気を治したい」というクライアントに対しては「それは無理」と言ってきた。職制としては、間違った答えではないのだけれども、今回勉強して少し見えてきたのは、本人の「治った像」と、「それに近づくための戦略」、「医者との付き合い方」といったところで、ニーズを整理することができるのではないかということ。現段階ではまだメモ程度です。
■PSWは「クライアントの力を引き出す」ことが役割であるとのこと。この定義は、Iyokiyehaにとって「ぴったり」くるものである。エンパワメントしていくという姿勢は、現職でも忘れないようにしたい。
■「絆」というキーワードがあった。Iyokiyehaは現職の中でも、本人の「真のニーズ」を引き出すための「絆」は大切にしているつもりである。ただ、周囲の評価として「踏み込みすぎ」や「本人より」とされることもある。もちろん、組織の論理をいつも破るわけではないし、これまで批判されながらもやってきたことは、「人」としては決して間違っていないとは思っている(とでも思わないと、やっていられないということも正直なところだが・・・)。しかし、この点についても、常に自己確認しなければ危険域に思わず踏み込んでしまうかもしれない。メタIyokiyehaを鍛えることも大切だと思っているが、身近にモニタリングをしてくれる人の存在も大きいように思う。
■ちょっとした言葉の使い方。真意をよく知った上で使わないと、思わぬところで誰かを傷つけてしまうことになりかねない。


<講義内容概要>
1.精神疾患とは何ぞや?
 答え:未だにはっきりしないもの。
 専門家でも、「未だによくわかっていない」のが現状。19世紀終わりから20世紀にかけ、クレペリンという人が、精神疾患の分類を試みた。きっかけは「うつ病の診断の一致率が低かった」ことによる。その成果が「操作的診断基準」と呼ばれるもので、現在ではDSM-Ⅳ-TR、ICD-10が用いられる。
 原因が近いものを取りまとめ、病名を分類しているが、臨床的には「境界例」が数え切れないほど報告されており、実際には分類しきれないのが現状。
 また、薬物療法に関しても、抗精神病薬の服用により、ドーパミン受容体を増やしているといった論も提出されており、薬物療法に意味がないとは言わないが、医療だけでは精神疾患からの回復に限界があるかもしれないという状況もある。そこで、専門家の仕事としての医療ケアだけでない「非医療的サポート」という概念が打ち出される。

2.非医療的サポート
 「専門家」だけでない人も、本人のサポートには必要
 「治療しないサポート」とも言われる
 「患者さんが、何をニーズとして求めているのか、側にいて向き合い、声を聞く」ことを通じて、提供されるサポート
 それは、専門家(PSWを含む)が、頭で考えたニーズではなく、自分と本人との「関係の中で聞いた(患者さんの)声」である。本人が、何を訴えようとしているのか、人と人との関係の中で聞こえる「声」を大切にしなければ、非医療的サポートにはなりえない。

3.言葉
(1)障害者 Disabled Person
 日本語では「障害者」と訳される。この場合「人の中に障害がある(障害=人)」という意味になってしまう。
 (例えば、Black Cat(黒い猫)と同様、猫と黒いことは切り離せない)
 以前(日本では、行政用語としては現在も使われている)は、障害を持った人を指して使う言葉であったが、アメリカでは差別用語として扱われる(州公文書でも下記のwithが用いられる)。
(2)障害を持った人 Person with Disabilities
 「障害を持った人」と訳される。まず「人 person」であり、人とは切り離された「障害」を何らかの理由で持ってしまった、というニュアンスが含まれる。当事者による運動(Person First Movement)の結果、アメリカでは州公文書でもこちらの語が用いられる。
(3)リハビリテーション Rehabilitation
 個人は「違う」ことを前提に、尊重する Everyone is Equal.の考え方を内包している。EqualではなくSameになると「全て同質」という意味が強くなり、個性を含む「違い」は認められなくなる。
 リハビリテーションは、「個別支援」で提供される
(「違い」を認めるため)
リハビリテーションの目標は、「リカバリー」
 (一度は失ってしまった、機能、生活、自尊心、人生、を回復すること)
 機能障害の回復には限界があるが、他のものについては「新たな人生の発見」により「回復」することができるとする。

4.障害分類
 要点は、「能力障害」をどう捉えるか
(1)医療モデル
 原因となる疾病により、機能障害が発生し、機能障害が「能力障害」(○○ができない)を生み出すとし、「能力障害」は個人内に存在するものと考え、社会的不利(ハンディキャップ)を克服するために、個人の能力を向上することのみ考える。
 例)乙武氏は、両上下肢の機能に制限があるため、予備校入学を断られた
(2)社会政治モデル(≒エンパワメントモデル)
 「能力障害」は、個人と環境との相互作用の中であらわれるものと考える。つまり、能力障害は、個人内にあるのではなく、個人が環境と接する時に個人の外であらわれるものとして捉えるため、社会的不利の克服には環境調整が大きな役割を果たす。
 例)乙武氏は、両上下肢の機能に制限があるが、K大学は氏の入学にあたり校舎をバリアフリーとしたため、授業を受けることができた。
(3)ICF
 ①従来のICIDH
  疾病または変調 → 機能障害 → 能力障害 → 社会的不利
 ・「障害」に着目し、障害者と健常者を二分した
 (例:足の一部に障害がある人を「足の不自由な人」とした。階段が上れないことを「階段が上れない人」とし、能力障害がその人の中にあると捉えた)
 ②ICF International Classification of Functioning

       健康状態
  ______↑____
  ↓       ↓     ↓
心身機能 ⇔ 活動 ⇔ 参加
身体構造
  ↑____↑____↑
     ↓    ↓
   環境因子  個人因子

ICIDH:機能障害・能力障害・社会的不利
        ∥    ∥    ∥
  ICF:心身機能・ 活動 ・ 参加
      (身体    人   社会:を表す)
 ICFには「障害」など、マイナスイメージの言葉がない。「21世紀型」の分類とされ、個人の病気や機能上の低下があっても、その人と環境が変わることによって、特に双方の接触面(インターフェイス:生活)が改善されることで、活動や社会参加は促進する。
 ・「人はいつか障害を超えるもの」という前提で、健康なところに着目して「人」を見ている
○心身機能・身体構造
 機能障害があるのは、身体の一部であって「人」全てに障害があるわけではない
○活動
 身体の一部に心身機能の低下があっても、その人には活動できる「生活」がある
○参加
 参加があって、社会は生まれる

5.リハビリテーション再考(相互依存)
(1)従来のリハビリテーション
 ①医学リハビリテーション
 ②心理リハビリテーション
 ③社会リハビリテーション
 ④職業リハビリテーション
 これらはいずれも「専門家主導」のサービスであったといえる
(2)これからのリハビリテーション
 専門家に求められるのは「エンパワメント」
 「教育」は本来の意味(本人の潜在能力を引き出す)で実施されるべき
 目指すのは、「エンパワメント」を通じた「トータルリハビリテーション」(全人的復権)
 ・「自立」とは?「孤立」させることではない。
 ・「依存」を含めた(相互依存、相互協力)、本人の「復権」(地域に根付く)を目指す
(3)「超職種」
 治すこと以外を考えた支援
 ≒心理社会的サポート
 服薬や生活支援は必要だが、「復権」を考えるためには、専門家としてではなく「人」としての関わりが不可欠 = 「絆」
 (心・気持ちの通い合う「絆」作り)
 例えば、服薬をとっても以下の段階がある。
 ①コンプライアンス(遵守)
 ②アドヒアランス(本人の意思により服薬しようとする姿勢)
 ③コラボレーション(ともに歩む)
 コラボレーションを目指す。

6.ACT Assertive Community Treatment
 (包括型地域生活支援プログラム・日)
(1)内容
 ①多職種、訪問を主とするチームアプローチ
 ②重い障害を持つ人が対象(従来、退院の対象とならなかった患者)
 ③スタッフ:本人=10:1程度
 ④24時間、365日のケア体制
 ⑤期限なし、On Goingで支援する
(2)歴史
 1950年代 抗精神病薬が開発される
 1960年代 アメリカで脱病院化が進められる
      「ケネディ教書」
     結果:退院者にホームレスが増加
 1972年  ウィスコンシン州で始まる
(3)要点
 「待ち」から「出前」へ
 (Waiting modeからSeeking modeへの切り替え)

2008年8月18日月曜日

精神保健福祉士スクーリング(3日目)精神保健福祉論(Ⅲ)

3日目。
少し疲れも出てきた。
この高校生みたいな生活は、心身ともに疲れることに気づく。
勉強って体力が必要だなぁ。
高校生って、すごいね。

講義を受けて考えたことは、以下の通り。
■以前から「ストレングスstrength」は、静的なものではなく可能性を含む動的なもの(本人を行動に駆り立てる「意欲」など)を含む概念ではないかと思っていたが、「潜在能力」を含むICFに基づく概念であることが確認できた。Iyokiyehaの仮説は当たらずとも遠からじといったところだろう。
■職場の支援の中では、時々使っている考え方だが、「知覚-認識-行動」のそれぞれの間には、それぞれを連動させるものがある。「能力」なのか、「神経」なのかわからないが、「知覚」「認識」「行動」の関係を厳密に示すと「(環境―◎―)知覚―○―認識―●―行動」となる。Iyokiyehaは仕事柄、「行動で評価」しているが、行動に至る流れを前述のように示すのであれば、○でつまずいているのか、●でつまずいているのかによって、同じ「行動」が表れても意味が変わってくる(◎は、聴覚障害者や視覚障害者、発達障害者など、感覚機能の障害により、情報そのものを感じる段階)。今日の講師が「精神障害者は嘘つかないよ、うまく言えないだけだ」と言ったことが、すごく響いた。確かに、私が今まで「虚言癖」と評価していた人の中には、それが「上手く言えなかった」だけの人もいるかもしれない。というか、ひょっとしたら人格域と診断される人の多くが、●の流れが「非常に」うまくいっていないのかもしれない。これはIyokiyeha仮説です。
仮説だけれども、例えばこの図で、身体障害者の一部は◎、知的障害者は○、発達障害者は◎と●、精神障害者は●(認知機能であれば○が追加)が課題となるのかもしれない。乱暴な整理だけれども、意外とわかりやすいかも。
■職業リハビリテーションにおいても、「ストレングス」は強調されるが、実際の業務の中では、それが活かしきれていないようにも思う。もちろん、ワーカーとIyokiyehaの仕事は、厳密には立ち位置が違うし、業務評価やら制度やら財源やらで、がんじがらめにされていることが原因であるように言われることもあるけれど、しかし、それが全てか?というと、個人的にはマンパワーにも課題はあると思う。もちろん、Iyokiyeha自身を含めてではあるけれども、職業リハビリテーションを構成する一人一人が、意識して視野を広げて、知恵を使うことを意識しなければ、考え方は硬直化してしまうように感じる。制度上の縛りを積極的に破ることをよしとするわけではないが、確かな実績を作って然るべきところに提案するだけの力は、つけておきたいものである
■ソーシャルワーカーの立場も、職業リハビリテーションの立場も、クライアントに対する態度に大差はないと思う。本人ニーズに基づく支援を実施する点では同じといえる。ただし、就労支援を考える時に大切なのは、ニーズが本人だけでなく、事業所からも同様に示されることだ。
■職業リハビリテーションを含む就労支援を考える時に、よく「本人側に立つか、事業所側に立つか」という選択肢が提示されるが、これについても今後考えなければならない。本人―――事業所と、よく単一軸で示され、そのどこに支援者が立つかという議論がされるのだが、本人と事業所の間にあるのは「事業所の作り出した環境」であり、就労支援とはこの意味の「環境」に本人が適応できるか否かというところが核となる。この「環境」はもちろん、事業所の「ニーズ」によって形成されるものであり、本人の配慮「ニーズ」は、「環境」の変化可能域内でのみ意味を成す(範囲外であれば「環境」に入ることが許されない=雇用されない)。


1.ストレングスモデル
(1)従来のソーシャルワーク
 精神障害者を世間から排除しようとする背景があった。パレンス・パトリエ(国親)の考え方(みんながやろうとしないから、国が法に基づいて支援する)に基づき、ソーシャルワークの概念が生まれる。
 伝統的医学モデルによる、パタナリズム(父権的温情主義 例:退院してもロクなことがないからずっと病院にいなさい)が問題視される。クライアントを「能力なし、無力」と捉えがちな考え方。

(2)ストレングスモデルの概要と要点
 伝統的医学モデルの対立概念として提出される。原則は6点、ケアマネジメントから生まれたもの(注:ケアマネジメント(英)「支援(ケア)」を何とかする。ケースマネジメント(米)「個人(ケース)」を何とかする。視点・立場に違いがある)。
・ストレングスモデルによるケースマネジメントの原則
 ①精神障害者は回復し、彼等の生活を改善し質を高めることができる
※②焦点は病理でなく個人の強さである
※③地域は資源のオアシスとしてとらえる
 ④クライアントは支援プロセスの監督者である
 ⑤ケースマネージャーとクライアントの関係が根本であり本質である
 ⑥我々の仕事の場所は地域である
(※印の二つが核となる)
重要なのは、考え方や資源をRe-framing(リフレイミング:再構成)すること。

(3)ストレングスの要素(空間、個人、環境)
 ①生活空間(Niche:生存適所)
  個人の勝手ができる空間を作り出す
 (空間の質が生活の質を決定する)
 ②人々の側の条件-個人の強さstrength
  -願望(目標と夢がある)
  -能力(願望を達成するために、彼らの強さを用いている)
  -自信(目標に向かって次の段階に移る自信を持っている)
  -潜在能力
  -希望
     など
 ③環境の側の条件-環境の強さ
  -資源(目標達成に必要な社会資源への接近方法を持っている)
  -社会関係(少なくとも一人の人との意味ある関係を持っている)
  -機会(目標に関連した機会への接近方法を持っている)
 ④その他
  -エコロジカル視点(人と状況の全体性に着目)
  -ノーマライゼーションの実現
  -回復(リカバリー)
 これら①②③④を通して、クライアントを権利主体者とし、エンパワメントenpowermentしていくのが、「ストレングスモデル」に基づくソーシャルワークであるとする

2.コミュニティ・ソーシャル・ワーク(Community social work)
 「コミュニティワーク」は、「地域援助技術」と訳される。大橋謙策氏が提唱する「コミュニティ・ソーシャル・ワーク」とは、大橋氏が理想とする「ジュネリック・ソーシャルワーク(一人でいろいろな支援(ケース、グループ、コミュニティ)を実施するソーシャルワーク)を基盤に、本人の主体性を尊重し、「生活者」支援を実施するソーシャルワーク。
 アメリカの徹底した分業主義による「ケースワーク」の対立概念として提唱される。

2008年8月17日日曜日

精神保健福祉士スクーリング(2日目)精神保健福祉論(Ⅰ)(Ⅱ)

2日目。
精神保健福祉士養成カリキュラムの中核科目。
スクーリングの時間数も、レポート提出回数も多い。
専門科目の中の、いわゆる「基礎科目」ということにでもなるのだろう。
講義を受け、考えたことは以下の通り。

■歴史は、覚えるしかないのだけれども、排除・隔離から、治療・病院収容、保安処分との絡みもありながらも、地域生活・支援・社会復帰・参加といった方向へ、法的に目指していくものが変化していることはわかる。制度が充実しているかどうかについては評価しかねるが、精神障害を持った人であっても「参加の機会」はあることがわかる。同時に、「参加しない自由」も保障されていることは忘れてはならないと思う。
■インフォームド・コンセントについて。Iyokiyeha自身が果たして、「適切な説明」をしているのかどうか見直すきっかけになった。同意能力のアセスメントも必要ではあるが、クライアントが適切な説明の下で、正確な理解をして、それに基づく選択ができているか、今後各クライアントに対しても確認する必要がある。


<講義内容概要>
○精神保健福祉論(Ⅰ)(Ⅱ)
1.精神障害者処遇の歴史「排除からノーマライゼーションへ」
(1)排除の歴史
①養育院(東京)
 ロシア皇太子が来日予定時、地域生活をしていた精神病者を収容した。
②癲狂院
 養育院に収容された者が、後に収容された場所。養育院に収容されていた者が、より重度の者の世話をするなどの状況があった。
 ③村山全生園(@多摩)
 ハンセン病者を隔離するために作られた施設とされている。
 上記施設はごく一部とされていたが、この頃は社会復帰といった発想はなく、収容され治療されていた。元々、宿屋であったものが、寺や神社・仏閣といったものを併設し、治療に当たっていたとされる。治療には、灌漑療法など「水」を使ったもの(打たれたり、浸かったり)が目立つ。

(2)法整備とそれに関する出来事の推移
 ①1900年 精神病者監護法
  ・私宅監置(座敷牢)
  ・親族の監護義務(現在の「保護者」)
 (この頃、呉秀三らの調査がある)
 ②1919年 精神病院法
  ・道府県に公立精神科病院の設置を命ずる
 (しかし、国の予算は軍備に回される時代で、設置は進まなかった)
 ③1950年 精神衛生法
  ・措置入院制度の整備
  ・同意入院制度(現在の「医療保護入院」)
  ・精神衛生鑑定医を設ける
  ・私宅監置の廃止
 (私宅監置を公的監置に置き換え、長期間の隔離が目的)
 ④1964年 ライシャワー事件
  ・精神障害をもつ19歳の少年が駐日アメリカ大使を刺したことにより、「野放し」となっている精神障害者を「治安的取締りの対象」とする警察庁長官答弁
 ⑤1965年 精神衛生法改正
  ・保健所を精神保健行政の第一線機関として位置づけ、精神衛生相談員を配置
  ・通院医療費の公費負担(2分の1)
  ・措置入院者が離院した時の届出義務
 (治安的要素の濃いものとなり、在宅精神障害者の把握が強調される)
 ⑥1969年 Y問題
  精神的に不安定だったY少年を、家族の依頼により公的機関のソーシャルワーカーが警官二人とともに訪問し、入院させた
  ・PSWの倫理だけでなく、精神医療の必要性まで議論される
  (精神科病院があるから、精神病が存在する:不要論)
  ・PSW協会で議論(結果として協会解体、再建)
 ⑦1970年 『ルポ精神病棟』
 ⑧1984年 宇都宮事件
  入院患者2名が看護職員の暴行により死亡する
 ⑨1987年 精神保健法
  ・国民の精神的健康の保持増進を図ることを目的とする
  ・人権擁護と社会復帰促進が明記された
  ・任意入院制度が設けられた
  ・社会復帰施設(生活訓練施設、授産施設:2類型)
 ⑩1993年 精神保健法一部改正
 ⑪同年   障害者基本法
  ・精神障害者が障害者施策の対象として位置づく
 ⑫1995年 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)成立
  ・精神障害者の自立と社会経済活動への参加の促進のための援助が加わる
  ・精神障害者保険福祉手帳の創設
  ・社会復帰施設追加(福祉工場、福祉ホーム:4類型)
  ・通院患者リハビリテーション事業の法定化
 ⑬1999年 精神保健福祉法改正
 ⑭2005年 障害者自立支援法成立
 ⑮同年   精神保健福祉法改正

2.人権と人権を支える思想(ノーマライゼーション)
(1)インフォームド・コンセントの歴史
 1947年 ニュルンベルク綱領(患者の同意について)
 1964年 ヘルシンキ宣言(患者の利益・福祉を優先する)
 1983年 インフォームド・コンセント(アメリカ)
(2)インフォームド・コンセントの要素
 ①クライアントの同意能力の有無
 ②主治医が適切な説明をしているか
 ③クライアントが理解しているか
 ④クライアントの任意の意識的な意思決定がなされているか
 つまり、厳密には、説明するだけでも、同意を得るだけでも、インフォームド・コンセントは成立しない。クライアントにわかる、適切な説明をした上で、クライアントがそれを理解し、他の選択肢も含め検討した上での同意でなければならない。
(3)具体的な質問項目(スカッリーの質問16項目)
 クライアント(患者)やその家族が知りたいことはどんなことか。(スカッリーらの質問項目 T.scully & C.scully)
 ①私に起こっているのはどんな病気ですか? 病名は?
 ②この病気はどの程度重いのですか?
 ③どんな検査を考えているのですか?
 ④なぜその検査を進めるのですか?
 ⑤その検査の危険性は? その検査の結果は治療法の決定に必要なのですか?
 ⑥どのような治療法を勧めるのですか?
 ⑦その治療の目的はなんですか? それで治るのですか? 痛みを和らげられるのですか? 社会復帰できるのですか?
 ⑧その治療法の危険性はどのくらいですか?
 ⑨その治療法が私の場合に成功する確率はどのくらいですか?
 ⑩それは一時的な効果ですか? 持続的な効果ですか?
 ⑪その治療を断ったら私に何が起こりますか?
 ⑫別な治療法はないのですか?
 ⑬どれの治療法を効果と危険性とから比較するとどうなりますか?
 ⑭どれがベストだと思いますか?
 ⑮あなたが私と同じ状況にあったとして、あなたやあなたの家族にどの治療を選択しますか? それはなぜですか?
 ⑯参考になる読み物はありませんか? 情報センターはありませんか?
(2)ノーマライゼーション Normalization
 ①バンクー・ミッケルセン(1950年代)
  「ノーマライゼーション」
  知的障害者の生活を可能な限り通常の生活状態に近づけるようにする
  (知的障害者をノーマルな人にするのではない)
 ②ニィリエ B.Nirje(1967年)
  「暮らしの条件」
  ⅰ 一日のリズム
  ⅱ 一週間のリズム
  ⅲ 一年のリズム
  ⅳ ライフサイクルに沿う
  ⅴ 自己決定
  ⅵ 好きな人と一緒にいること
  ⅶ 適切な住環境
 ③ヴォルフェンスベルガー(1972年、1984年)
  1972年 可能な限り、文化的に通常となっている手段の利用
  1984年 社会的役割の実現に転換する
       ソーシャル・ロール・バロリゼーション Social role valorization
 ④谷中輝夫
  「当たり前」
 ノーマライゼーションを支える考え方として、エンパワメントempowerment、ストレングスstrengthなども注目

2008年8月16日土曜日

精神保健福祉士スクーリング(1日目)精神保健福祉援助各論

ケアマネジメントの手法を概観しながら、PSWとしてクライアントに対する姿勢について、以下の内容を、豊富な事例で説明する講義だった。

講義を受けて考えたことは以下の通り。
■「ストレングス strength」について。「強さ」と訳させることが多く、クライアントの「できること」を指して使うことが多いようだが、テキストを読み、本日の講義を受けながら考えたところ、「興味あることについて、自らを変化させることのできる力」のようなイメージが浮かんだ。もちろん、その人の「長所」とする見方もできるだろうが、もう少し範囲が広いのかと思う。
■視点を変えるためには、支援者自らが様々な経験を積み、多彩な発想で物事を考えプランニングする必要がある。たとえ、それが選択されないプランであったとしても、考え、説明するのが望ましい。
■「真のニーズ把握」にこだわるべきとのこと。このことはPSWに限らず、カウンセラーの仕事にも直結する。フォローアップ研修の時から考えているように、Iyokiyehaの仕事にひきつけて考えると、ニーズは常に2つ以上の方向(多くは、本人と事業所)から発せられているのであり、そのいずれもないがしろにはできず、どちらかに偏った場合にはもう一方の側の信頼を損ねる。
■「伝える」ことにこだわる姿勢も、Iyokiyehaが普段こだわっていることと、共通していた。ただし、伝える「内容」だけでなく、伝える「時」がとても大切ということを知った。「伝えようとしているかどうか」を自己確認するとともに、「伝わっているか」を常に確認しながら相談や計画策定を進めるべき。
■ソーシャルワーカーは、いわば「夢を与える」存在。自らが夢を持ち、かつクライアントの夢を描き、クライアントが大きな夢に向かうことのできるよう、小さな「見える」夢をたくさん見せることが、クライアントのストレングスを活かすことになる。
■「治るんでしょうか?」と不安気に聞いてくる患者や家族に対し、「治ると信じています」と言い切る前向きさも必要か。


<講義内容概要>
1.ケアマネジメントの前提となる考え方
 ①世の中、全てのもの(本人を含む)は「社会資源」である
 ②「上手に生きる」とは、「資源の使い方が上手い」こと
 ③ケアマネジメントは、人と社会資源をつなぐ活動
 ④全ての人は、自分なりにケアマネジメントしている
-精神保健福祉士(以下、PSW)は、たとえクライアントの代弁者となっても、言いなりになってはいけない。
-相手を見ながら、対応を変えていく
-(講師私見)生理学、社会学、医学、心理学的なアプローチを学ぶことは、PSWにとって意味がない。(補足:もっと基本的な「人と人とのやりとり」がある)だから、99%の無駄をやった方がいい

2.PSWとは
(1)PSWの機能(4+1)
 ①援助と支援
 ②連絡・調整
 ③企画・調整
 ④予防活動
 ⑤教育・育成
現場では、とかく①に偏りがち。②~④にもっと取り組むべき
また、スーパーバイズの体制を整えるなどして、⑤はもっと強調されるべき。
(2)ソーシャルワーカーの役割(16項目)
 ①調査者
 ②診断者(ニーズ診断)
 ③望みをかなえる人
 ④ケア提供者
 ⑤社会治療者(社会を治す)
 ⑥支援を動員する人(一人で全てはできない)
 ⑦助言者
 ⑧カウンセラー
 ⑨仲介者
 ⑩インストラクター
 ⑪代弁者(アドボカシー)
 ⑫運営管理者
 ⑬弁護者
 ⑭情報提供者
 ⑮オルガナイザー(主催者)
 ⑯リーダー
どれも当てはまるが、少なくとも「カンファレンスで発言できない人は、ソーシャルワーカーの資格なし」
-退院に長年の調整を有したケース。ようやく実現した退院後、順調に地域生活に移行したかと思っていたが、「何も起こらないこと」に家族が抱いた「不安」を本人が敏感に感じ取ってしまい、自ら命を絶ったケース。

3.クライアントの視点
(1)クライアントに教えられる
 ①ちょっとしたことで安心感を得る(足を回すなど)
 ②ドイツ人の「プライベートスペース」と、説明・許可の必要
 ③ケーキ屋で実習し不採用という結果に対し、「精神障害者って怖くないって言われた」ことを素直に喜べる
 ④食事を取らないクライアントにレクリエーションを提案し「腹減った」
(2)自らの思い込みを捉える
 ①第一印象は数年続くこともある(ルビンの壷と娘と老婆)
 ②人の性格は変わらないが、見方を変えることによってストレスは減る
 ③情報混雑時に、ちょっとしたヒントがあると整理される(James:ダルメシアン)

4.「伝える」こと
(1)丁寧になると言葉が増える
 ①まず大切なのは、「伝達したい情報」が正確に発せられること
 ②結論-理由の順番
 ③さらに、「対象の焦点化」が必要
 ④伝えるべき「時」を逃すと、伝わるものも伝わらない
(2)二重の「感情」
コミュニケーションとは「ずれ」が生じるもの。
AがBにXという情報を伝える時、AはXを「記号」として発するが、そこには必ずAの感情Yが加わる。Aから発せられたXYは、Bに聞こえたときにはZという感情が加わって認識される。もちろん、XYはいずれも完全にBに伝わるわけではないので、変数cが差し引かれる。
よって、Aが伝えようと思っていた「X」をBが認識する場合、Bには(X+Y)-c+Zとなり、伝わらないものも少なくない。
コミュニケーションは知識だけでなく、感性も大切。
冷静に広い視野を保つことと同時に、相手に自分の感情をわかりやすく届けることも、コミュニケーションを充実させる大切なことといえる。

5.まとめ
前提として、人は思い通りにならない。恋人や夫婦であっても、それは同様である。支援を考えるときも同様に、クライアントが支援者の思い通りになると考えない方がいいし、またクライアント自身のニーズに合わず、納得の得られないプランでは、意図した効果はあがらない。
ストレスは、先の結果がわからないことによって「ストレス」になる。将来を見えるようにするのが、ストレスの軽減には有効。
よりよいプランニングのために、必要なことは以下の4点。
(1)視点を変える
(2)伝わっているか、伝えようとしているか
(3)「人」としてクライアントに接するのが基盤となる
(4)「真のニーズ」は何か、常に把握しようとする