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2015年8月30日日曜日

職業リハビリテーション学会メモ

職業リハビリテーション学会 8/22,23

雑駁なメモですが公開します。

○研修基礎講座A「研究における倫理に関する考え方」
 愛知県立大学 吉川雅博

・大学では不正防止の研修会を開催している。
・大学関係者にとってはホットな話題である。
・看護学部(医療関係)は厳しい。看護学部の基準で考えられてしまう現状。
・不正が絶えない。守るべきことは守るべき。

・新たな「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」
・日本介護福祉学会の研究倫理指針(改訂予定)。
・看護と福祉(就労支援の現場)とでは考え方が異なるものの、研究倫理を考える上で参考になる。(レジュメ・Web参照)
・記載事項は当たり前のことばかり。内容に目新しさはない。
・インフォームドコンセントは口頭ではなく書面で確認する。
・(知的障害者であっても)本人の了解を得るのが原則。
・どれだけ変なことを考えてると思っていても、3人くらいは同じことを考える人がいる(先行研究について)。
・先行研究の知見と自分の知見とを区別して述べる必要がある。
・引用は原典を原則とする。原典が入手できない場合等のみ「孫引き」が許される。
・盗用と「ひょうせつ」。他者の行った研究成果をそのまま、あるいは僅かに変えただけで自分の論文に使用した場合。糾弾・告発される行為である。
・匿名性の確保。対象者を特定できないように匿名化する。介護過程、内容のリアリティを損なうことがない程度に事例を加工して用いる。加工している場合にはその旨を明示する。
・事例使用の場合は、当事者から文書で承諾を得ることを原則とする。
・調査研究と実践研究とでは手法が異なる。調査研究は統計処理により結果がでる「つもり」になってしまうので、注意が必要。
・改竄・捏造:代表的なデータのみを示す場合には、その選択の客観的な基準を明示する。


○基調講演
 厚生労働省事務次官
 村木厚子
・障害者雇用支援法3条、5条の面白さ。昭和35年から変わらない条文。
・障害者雇用率は「宿題」の制度。
・法定雇用率の算出に関して、失業障害者が増えれば雇用率は上昇する(分子に入る障害者数は「失業している」者。


○教育ワークショップ5
 企業の勘所を理解するために
 就労支援で必要な労務管理の基礎を学ぶ
 白矢桂子(社会保険労務士)
 眞保智子(法政大学)コーディネーター
・社会保険労務士としてではなく、企業の人事担当者としての立場で話をする。
・労働法、労務管理について。「ざっくりわかる」内容。
・障害者雇用対策における雇用義務。2010年4月~200人超、2015年7月~100人超。
・企業従業員規模別企業数(総務省・経済産業省 経済センサス2012年)
 100-299人規模  1%
 300-  人規模 0.4%
・100人前後規模の企業は本当に中小企業。
・厚生労働白書「若者の意識を探る」より。働く目的の変化。
※価値観の多様化ではないか?
・人事の仕事とは?「労政時報」
 仕事は多岐に渡る。すべてわかっている人はまれ。
 人事マネジメントは企業における経営機能の一部である。したがって、人材マネジメントは経営に資することが求められる。
・労働法とは総称。労働三法とは、労働組合法・労働基準法・労働関係調整法。
・要となるのは労働基準法。1947年。
・労基法で保護すべき人は、年少者と妊産婦。障害者は別の法律。労基法の基準は最低のもの。
・「給与支払いの5原則」。「ノーワークノーペイ」、働いた分だけ支払うのが会社の考え方。
・労務管理について。
 就業規則=労務管理の根幹。経営者と従業員の間の無用な争いを未然に防ぐもの。あらかじめ労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準を定める。
・絶対的必要記載事項=労働時間関係、賃金関係、退職関係。
・相対的必要記載事項=退職手当関係、臨時の賃金・最低賃金額関係、費用負担関係、安全衛生関係他。会社によって定めることができる。就業規則や契約書に記載したら効力が発揮される。
・常時10人以上の労働者を使用する事業場において、これを作成し、所轄労働基準監督署長に届け出る。(変更の場合も同様)
・企業単位ではなく、事業場単位で作成。
・共通するものはあまりなく、法律に従ってさえいれば各会社が自由に設定できる。(儲かる会社の源泉であることも多い。なかなか開示はされないもの)他者の就業規則をそのまま使う、厚労省などの雛形をそのまま使う、などの方法もある。
・労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者の意見を記し、記名押印のある書面(意見書)を添付する。
・労働者がいつでも見られる場所に設置する。電子媒体可。
・人事としては、働きやすい環境を作る、能力を発揮できる環境を作る視点とともに、有能な人材に如何にきてもらうか保護するかという視点で考える。また、がんばらない人にどのように退場してもらうか。
・「試用期間」は法的には2週間。就業規則に「三ヶ月」と記載があっても、法が優先される。
・退職に関して円満退職にあたり、1~2ヶ月の猶予が推奨される。
・一般的な労務管理のキーワード。
 営利目的
 No work No payのルール
 就業規則=労務管理の根幹であり、利益の源泉

・『仕事の経済学』小池和男2005より
 仕事はもちろん
 人生の一部にすぎないが
 まことに重要な一部であり
 人生におよぼす仕事の影響は
 計り知れないほど深い
・『たとえぼくに明日はなくとも』石川正一1973より
 もしも人間の生きる価値が
 社会に役立つことで決まるなら
 ぼくたちには
 生きる価値も権利もない
 しかし どんな人間にも差別なく
 生きる価値があるのなら
 それは 何によるのだろうか
・障害があっても働きやすい会社になると、部署全体の生産性があがる。障害者雇用は「会社が儲かるため」のしくみづくりにつながっている。会社は人を高める場所。

・障害者の労務管理について、実践は進んでいても研究が進んでいない。
・知的障害者の能力が「伸びる」という発想。
・「短時間労働を命じることがある」の一文を入れておく。従来の就業規則を援用できる。
・個別的人事管理の方が生産性が高まるのではないか?(眞保)「個別化」
・合理的配慮(理にかなった、一般の人が聞いておかしくない範囲)を採用段階から取り組んできた実践報告を発表予定。支援者が当事者の尊厳を守って提案していく役割を担うことになる。役割は重要。
・試用期間二週間以内ならば、同意のみで契約解消可。二週間を超えた場合は解雇の手続きとなる。30日分の給与支払いを取り付け退職する。
・障害者のパフォーマンス向上のために人事ができること。IDを腕章化する案について「他の従業員と同じがいい」という返答。配慮の内容が必ず正しいわけではない。その人が望んでいることを明らかにして、できることとそうでないことを整理する。できることに取り組む。
・辞めたい本人と辞めさせたくない親と何とかしたい担当者。会社としては儲かるかどうか。損益計算書に良い影響があるか?労働法上は指導を重ねた上でなければ辞めさせられないが、その人が戦力になることにより会社は更なる利益が得られると思う。
・できないと思うことこそ、儲けの源泉となりうる。


第6分科会
○海老田大五朗
・エスノメソトロジーとは、相互作用を明らかにする研究法。
・「現場でやっていること」を言語化する。概念を明らかにして説明力があがるのではないか。暗黙地、経験値を言語化する。
・今後は、デザイン・調整の部分。ある実践や研究を自分に取り込む時に、そのままでは取り込めない部分。

○牧裕夫
・「試行錯誤」は排除すべきものとしてとらえられがち。失敗は少ない方がいいとされることへの疑問。
・常に逐次的な相互作用が発生している。
・研究で取り上げられないやりとり。
・「存在のおもしろみ(和気藹々)」に支援者の「真の挑戦(牧さんの挑戦)」が加わることにより、「個人の成長」が促される。(E・ライアン)
・目標達成されなかったときに「希望」があるか。希望の共有がされているか、支援者が真の挑戦をしているか。
・評価・計画・目標達成と併せて現場の可能性は、共有と結果。
・拍手の教えかた。状況論。行動だけを切り取るのではなく、状況に基づく結果(よかった、楽しい、を伝える。グルーヴ)
・改善は螺旋型。マックロリー

○山田
・タブレット端末を使った喫茶サービス。


○シンポジウム
(小川)
・支援の増加に対する人員の増加が認められるが、十分かどうかは未整理。
・研修や経験が蓄積される仕組みは乏しい。
・現在行われている研修が現状に合っているか?
・職業リハビリテーションや就労支援の専門性をどのようにとらえるかに関する議論が不足しているのではないか。
(野崎)
・専門職としての知識・経験に加え、地域住民として地域
に接近する力が求められる。
・一緒にまちの課題に向き合い、「周辺」に参加し続けること。参加の方法は様々。
・仕事を作り出す、地方型の就労支援。
(千田)
・増え続ける求人にどう対応するか。
・地域に暮らしている人の視点が不可欠。
・就労支援員でありながら、生活支援・個別面談が優先されてしまう現状。
・医療と就労支援のそれぞれの意見を「すりあわせる」ことが必要。
・医療からは「環境」がわからない。環境との相互作用を理解したい。介入できない。就労支援に期待するものの、思い通りにならない。
・孤独に仕事をすると、独りよがりになりがち。
・協働・連携になっているか。立場の違いから、方針が完全に共有されることはあまりないはず。それを超えていくことが必要だと思うが。
・「流れ」に乗っていれば、何となく仕事が済んでしまう現状と不全感の蔓延。
○井口修一
・リソースを成果につなげる、人材育成の順番が入れ替わった。人材育成が優先。
・社会的な役割、資格・教育システム、知識体系がある。
・基本的にはOJT。指針に沿って計画的なOJTを実施する。
(朝日)

・就労支援と職業リハビリテーションの理念をどう共有するか。整理するか。就労支援はどんな理念に基づいて行われているのか。就労支援の裾野は確実に広がっている。
・障害者に向き合う部分と、働く環境に向き合う部分、双方に対象がある。宿命。働く環境へ向かう部分が弱いのではないか。経験が不足しがちな宿命にある。
・生活支援と就労支援の連続性の中で就労支援の専門性をどう位置づけるか。
・専門性が「法制度に規定(縛られて)されすぎている」のではないか?

・就労支援の専門家って誰?広い意味では対人援助。
・専門性と非専門性の連続性(グラデーション)。忘れられるのがいいジョブコーチ。
・状況を俯瞰できる包括力。

・人材育成をどのように位置づけるか。エクスキューズでない計画的な位置づけ。
・キャリアパスの明確化。
・誰のための専門性か?

○現場の実状を確認しよう。
・略
○どんな技術が必要なのか。
・町の課題に関わること、地域に関わることは職リハなのか?→核ではないかもしれない。(野崎)
・→職リハか就労支援かという整理は不明。ただ、その人その地域でレシピ入手が就労支援とどう関わるか、という視点は必要(朝日)何が最適なのか?と考えた時には位置付くこともあるのではないか(千田)。事業が増えていてすべてできる人がいない現状もある。基本的なプロセスを押さえる必要がある。対象者に合わせてプログラムが発生する。(井口)
・職業リハビリテーションなのか、ソーシャルワーカーなのかわからないキーワード。ここでは職リハを整理する。レシピをどう位置づけるのか。周辺のような気がする。
・裾野が広がっている。グラデーションは核がなければごちゃまぜ。核は何か?(小川)
・→那須地域で働く人については核になる可能性がある。一人の対象者をどうとらえるか、という視点と関連。(野崎)実践上の整理と理論的な整理とでは異なる。実践的なことは地域により異なる。(小川)就労支援だけでなく周辺を如何にやり続けるかを考える。(野崎)
・職業評価、計画策定が基本。相談・アセスメント・計画ができて、企業にアドバイスができること。(井口)
・グラデーションは一人の対象者について、連携を通じてどのような色合いを出していくかという文脈の言葉。ILOに照らした時にも、状況に応じて柔軟に変わっていくものではあることが示唆されている。人によっては生活から入ることもある。ただし、職リハとして取り組んでいく切り口みたいなものはあるだろう。(朝日)
・相談・アセスメント・計画のプロセスは基本だと思うが、機能しているか?(小川)
・プロセスとして共有できるケースが少ないのが残念だが実際かもしれない(千田)。イメージはしているが、平行して進んでいるとその場の対応になっていることもある(野崎)。基本に忠実な支援ばかりだと物足りなさがあるかもしれない。基本を大事にするといっても、縛られないことも大切ではないか。(朝日)
・支援はある機関が全部やるというのは不可能。他機関、他職種で一緒にやったりつなげたりすることも大切。他職種で検討する機会がもっと必要か。(井口)
・否定する内容は何もないが、では連携で関わっているかというととたんに不安になるような現状もあるのではないか。(朝日)他職種で関わっていく機会はあるが、それが機能しているのか?プロセスの中で検証していく仕組みにはなっていない(小川)

○方法と技術の向上(方策)。
・専門機関の連携はそれほど多くない。支援員は少ない。あるものしか使えない。制度の継ぎ目の問題もあるが、シームレス、一体化したものが必要だが、それに向けて孤軍奮闘している。それで不安になっている。迷っている層と意識低い層それぞれどうするか(野崎)。
・アプシ(CRCの他にあるジョブコーチの協会、米国の組織)の集まりに参加。独自の資格をとっている人達の雰囲気を感じた。そういう場がほしいなと思った。互いに切磋琢磨できる場がほしい(千田)。
・中核要素を整理して研修と達成度確認を行うことで資格制度になる。(補足:小川)
・段階・対象に応じた研修制度が必要であること。機構が担うところではある。助言・援助業務の理解。(井口)
・基本プロセスを押さえる内容はどの部分か?(小川)
・レベルに応じた対外的な研修、必要な要素は網羅されている。(井口)
・流れに乗っていれば過ぎてしまうという千田さんの指摘が印象的。形式的な評価はあるが、「いい支援か」という評価はまだされていない。いい取り組みを評価する仕組みがあると、想像的な場面に向き合えるのでは?承認を受ける、評価を受ける仕組みが必要なのではないか。
○学会としてどう取り組むか
・スーパーバイザーの育成。(井口)
・ブロック理事活動で何かできるのでは?(野崎)
・スーパービジョンに関することは報告にもあがってる。本学会は学際性を基盤としており、学術性・実践性の融合を謳っている。他職種が様々に発言して、実践手法の普遍化・共有化を図り、確認していくことが必要か。資格を示すのは簡単かもしれないが、先を見据えた内容にするためには準備が必要。(朝日)
・薄まっている気がする。グラデーションの元は何か?(小川)

2015年5月10日日曜日

高次脳機能障害 実践的アプローチ講習会

東京高次脳機能障害協議会(TKK) 高次脳機能障害 実践的アプローチ講習会に参加してきました。
12月の会には登壇することになっているので、偵察を兼ねて勉強してきました。以下メモです。


1:
○舘野歩氏(精神神経科医師)
・易怒(いど)性、衝動性が社会生活において影響する。
・薬物療法で救われる患者も多い。
・森田療法にも取り組む。
・症状を基礎に考える。障害名ではない。

・妄想とは現実に無い内容を確信していて、訂正不能な思考である。
・一日中起こっているものなのか?
・昼間訴えはなく、夕方から夜間にかけて起こる場合には「せん妄」を疑う。器質的、身体的原因を検索する。セレネースの処方。長谷川式の日中・夕方の結果の差で判断する。
・一日中続く場合は器質的妄想性障害を疑う。セレネースとリスパダールを処方する。
・不安・易怒性の背後にうつ病が潜んでいる場合、鎮静系のうつ薬を処方する。リフレックス、パキシル、レクサプロなど。
・うつ病だと、午前中に症状(落ち込み)が強い。休日にも日内変動がみられる。ほとんど毎日かつ2週間以上、がカットオフポイント。
・不安易怒性の出現時には原因を検索する。
 日中変動(夕方に強い)はせん妄。
 持続する場合には器質性妄想性障害。
 背後にうつ病の可能性。
 それぞれに治療方針が異なる。
・行動療法は、誤った学習の結果を学習によって修正する立場をとる。
・認知療法は、認知の内容に働きかけ感情を変化させる短期の精神療法。
(森田療法)
・不安の裏側には欲求がある。
・あってよい感情をなきものとして知性で排除しようとしてしまう。自然な感情を理性で制御しようとすると不自然な状態に陥る。注意が集中してしまうことで、自律神経が緊張し、不安気分が増強する(悪化の連鎖)。
・生の欲望を発掘する。症状がよくなったら「どんなことをしたいか?」と問う。不安の裏側には生の欲望がある。不安を「あってはならないもの」としてとらえるのではなく、「自然な感情」として理解する。不安から逃げると不安は大きくなる特徴がある。不安を持ちつつ本来の自己実現をしていく。あるがまま。
・症状に固執しているエネルギーを他に向けることを得意とする療法のため、症状に興味のないケースには向かない。(例:解離性の症状など)
・作業期のプログラムでは、環境に適応することや状況をみて行動を調整することを体感する。役割の変化(後輩から先輩へ)にも取り組む。
・不安を抱えながら必要な行動をとれるようになることを治療の目標とする。症状をなくすことではない。
・症状へとらわれているエネルギーを建設的な行動に向けていくことを目標とする。
・認知を変えるのではなく、距離をとっていくACTの手法が欧米で注目されている。
・ACTでは真正面からアクセプタンスを促す。森田療法では独自の人間観を基礎に建設的な行動へと向ける。
・現状の変化を求めるのではなく、不安を抱えながら必要な行動をとれるようにしていく。森田療法の観点。
・刺激と反応の系統で考えるだけでなく、本人の「ーしたい」気持ちを引き出してみる。自発性を引き出す。
・能動性を強調している第二世代の認知行動療法ではなく、受動性と能動性をブレンドさせていくことが、患者本来の力を引き出す大切な視点ではないか。

Q&A
Q1暴言、暴力への対応。
・鎮静系の薬物療法が基本。環境を変えることも有効な場合がある。
・暴言・暴力について、何がきっかけになっているのか?抑える対応だけでなく、怒りの発散という観点で代替手段を取り入れてみる。
Q広島だと退院を促され、薬物で抑えられてしまう。他の治療法はないのか?
・程度の問題はある。初期に大量投薬して適量調整をしていく方法がある。最近では早いタイミングで外来治療へ移行する方針にはなっている。

Q2デパスへの依存が疑われる場合
・切れ味がいい分、抜けにくい。他の薬物を併せて処方し、デパスを減らしていく。

Q3せん妄など身体的理由が疑われる家族としてのアプローチは?
・通院間隔があいているのであれば、主治医とよく相談するべき。

Q4下半身不随で動けるようになりたいためリハビリ導入したが、受け入れられずにリハビリも拒否するようになってしまった。
・下半身不随が全く動かないのか?
・検査結果として下半身の神経反応は落ちている。上半身は多少回復がみられた。けい癌ワクチン?
・現在の医学で説明できないこともある。患者さんが受け入れられないものもある。受け入れることを促すのではなく、現状の中で何ができるのか?というアプローチをとれないだろうか。


2:
○山口加代子氏(臨床心理士)
・「模擬会議プログラム」の著書、参考となった。
・「心理的サポート」とは何か?意外と文献がない。

・高次脳機能障害者の8割に社会行動障害が発現している。
・病識欠如・自己意識性の障害がも、患者全体の6割程度。
・「失うもの」、変化への気づき。認知機能だけではない。
・脳損傷による二次症状にも注目する。うつ的な症状。
・家族にもストレスがある。家族支援の目的は、心理的サポートと心理教育が必要といえる。家族そのものが求めている支援と家族が本人の支援者として機能する。
(Aさんの事例)
・かなひろいで物語文が低くなるのは注意配分がうまくいかない傾向を表す。
・喚語困難と錯誤。思考の柔軟性の低下。傷病部位。
・右脳損傷により、表情の読みとり、注意の切り替えが困難になる。頭頂葉回路網の病変は、内的データを過度に信頼する傾向がある。客観的事実よりも思いこみが優先されてしまう。
・注意容量の低下により、長い説明というだけでイライラしてしまう。
・失語もあり、聞きながら考える(注意)が難しい上に、言葉の理解および表出に問題がでてしまう。
・Aさん「わかっているのに、認められない」あり。
・ステータスを下げたくない。下げられない。
・高次脳機能障害の疑似体験。ラジカセでガンガン音楽をかけながら説明をしてメモをとってもらう。伝言する。
・妻の一言「欲がある内はリハビリが進まない」。本人とぶつかってしまう。
・高次脳機能障害が家族に起こるのは「まれ」なこと。まれなことを理解できる・受け止めることができるよう、当事者・家族の認知面・感情面に配慮して伝える。

Q&A
Q1医師から「高次脳機能障害ではない」と言われてしまう事例がある。
・脳外科医が高次脳機能障害のことを知っているのは2~3割というデータがある。
・入院中にはわからなくて、社会生活でいろんなことをやってみてわかることも多い。
・リハビリテーション医療が受けられるところで、神経・心理学的検査を受けるのを勧める。

Q2家族の訴えは聞きやすいが、患者本人からの訴えを聞き出すのが大変難しいと感じる。どのように引き出すか?
・入院中は患者さん。できないことを自覚する機会がない。(左半側無視くらい)
・外来やその後の関わりの中で、簡単な失敗体験をしてもらう。かなひろいで左側が欠けたときには、欠けた部分を赤鉛筆で表し用紙をひっくり返す(気づかせる)。どんなことが起こっているか一緒に確かめてみましょう。はっきりとフィードバックしないこと。

Q314年前に頭蓋が割れて治療を受けた。意志表示できない事例、どうすればいいか。
・今後のことというと、いろんなことがある。
・言葉で伝わらないのであれば、ほかの手段(言葉以外のメッセージ)を読みとってあげること。
・楽しみ(水泳)があるということで、様々な楽しみ方を広げていく。
・たばこをやめさせたいと思うのもわかるが4本ですんでいるのは、家族と本人が折り合っているとも思える。

Q420年前に症状がでた子供について。当時は医師にも理解がなくいろいろ言われた。親が高次脳だとも言われた。信頼できる医療ケアを受けたい時にどう探せばいいか?
・嫌な思いをされればされるほど過敏になってしまう。
・いい専門家に出会いたいと思うのは自然。
・各都道府県に高次脳機能障害者支援センターが設置されえている。相談してみてはどうか?
・あるいは家族会では口コミ情報がある。そういったところを活用してみては。


3:
○森戸崇行(社会福祉士)
・制度は、あるから使うものではなく、どう暮らしたいか・どうしたいかがあって、それを実現するためにどんな制度が使えそうかと考える。
・言葉にひっかかってしまうときにはメモに「年月日」を記入する。
・相談支援:相互の話し合いによって、助力を必要とする人の問題解決を支援すること。主体は「本人」
・その人らしい生活の実現をお手伝いするのが目的。
 ○○したい、○○したいができないで困る
  →実現のために適切なサービスを導入する。
・制度には優先順位がある。
 損害賠償>業務災害補償>社会保険>社会福祉>公的扶助
 その人が制度の対象となるかどうか確認の上で情報提供する。
・社会制度が支えるのは、暮らしの一部分。
・希望する暮らしを実現するための支援や困り事から生じる必要な支援などに対しコーディネートする。

Q&A
Q1手帳取得に関して。複数取得のメリット?
・高次脳の方では、精神と身体を取得するケースがある。精神だけでは受けられないサービスについて、身体で受けられることもある。
・療育と精神では制度的なメリットはない。ただし、18歳未満の時に療育対象だったことを証明することだったり、本人が取得にこだわりがあるなどの場合には取得することもある。

Q2障害年金1級から3級になったケース。障害が軽くなったということを喜ぶ側面と、受け入れ切れない側面とがあった。審査請求期限(60日以内の手続き)がきてしまったがどうしたものか。本人は母親に任せていた。一部検査では改善がみられた。
・本人の障害状況が年金1級→3級に納得できるかどうかが重要。
・通知内容の受けとめ方について、支援者と本人・家族との受けとめ方がそれぞれ異なる。

Q3労災と自賠責の選択。当事者は答えられないと思うがソーシャルワーカーが相談するのか?途中で切り替えることはできるのか?
・リハビリセンターにくるケースはそれが整理されているが、急性期ではそういうこともあると思う。
・途中の切り替えはやらないと思う。労災は認定が関わってくる。59ページ。


4:
○石川篤氏(作業療法士)
・高次脳機能:覚醒度を保つことで外界の情報を受け取り、発動性を保ことで外界に働きかけている。この入力と出力が常道や注意などで高度に制御され、複雑な情報を処理し、記憶し、実行することができる。
・高次脳機能は障害の有無に関わらず、自分の延長線上にあるものといえる。
・自分の高次脳機能を活かす方法が支援にも活かすことができる。高次脳機能障害は身近なものではないか?
・高次脳機能障害は環境因子や個人因子の影響を受けやすい。そのため、機能だけでなく包括的な視点での評価が必要。
・「とらえる」とは状況を整理すること。道に迷うのは、記憶なのか地誌的障害なのか道が複雑なのか。
・高次脳機能障害は、原疾患が高次脳機能障害を引き起こし、背景因子(環境因子、個人因子)を経て症状として発現する。
・ビジネス書はやる気や行動制御、問題解決力など高次脳機能を効率的に働くかヒントが詰まっている。
(事例)
・交通事故による高次脳機能障害とADHDを合併。遂行機能障害、固執傾向が強い。本を大量購入してしまう。医師からは「部屋を片づけてください」との処方がでる(困る)。父親からは感情的に「片づけろ!」といってしまう。片づけ本を参照。
・毎日15分本の背表紙が見えるように本を積み上げる宿題を提示。翌週きれいになった写真を見せてくれた。
・脱抑制により人前でふさわしくない行動をとってしまう。鼻にティッシュを詰めて現れた。
・客観的に振り返る機会を作るために、自分も鼻にティッシュを詰めてOTで提供した。
・発動性の低下。やりたいことを問うと非現実的な夢(世界に貢献、陶芸など)を述べる。choice-makingするが世界貢献を選ぶ。
・ペットボトルのキャップを集めてワクチンにする。チラシ・プラカード作成。関連団体に登録してキャップの個数が見えるようにする。
・その人の能動的な動きを、その人の段階に併せて促していくことが必要。
・環境を段階的に調整した事例。ICFに乗っ取って整理する。脳損傷の状況、神経心理学的評価。
・取り巻く環境(環境因子)の評価。両親は「作業所に行く気がない」「何度いっても無駄」など。
・個人因子の評価。デパ地下に寄ってしまう、風呂に1時間入ってしまう。遅刻してはいけないことはわかっているようだが、行動が伴わない。
・OT室の評価。ねじのゆるみや物の置き方がとても気になる。何かを気にするとそれ以降の話は聞けなくなってしまう。
・生活評価。ひげ剃り、風呂、トイレが長い。ひげ剃りはそり残しが気持ち悪い、風呂は依然から長い、など。
・行動の自己修正が困難(注意障害、固執)
・目標:時間通りに行動し、規則正しい生活リズムの獲得。
・タイマーを使った代償手段訓練、生活方法の評価・検討、地域資源を活用し時間通りに通う。
・普段我々は、行動の微調整を行っている。ケース例はそれが困難。まずはタイマーを10分毎に鳴らす。鳴っているのはわかるが行動がかわらない。
・前夜にゆっくりやろう案。時間のかかる動作項目を前夜に行う。動作項目をとばす案。整髪、歯磨きをとばすことができた。デッドライン案。とにかく出発時間を厳守する。
・遅刻は減ったが、自宅から作業所に通うことにあたり家族からの声かけは必要である。それが元でもめてしまうこともあった。
・心が動けば、体も動く by.三好春樹
・Occupational therapist=夢中にさせる、など
・症例2。
・一方的な会話から、
 フリージア園の写真があった。
 お肌を褒めたら、にやついた。
 美空ひばりはきらい。
 なくなった旦那さんの話は時々する。
 の4つの情報を入手。
・フリージアを購入し、左側(無視側)に花と鏡を設置。都はるみのCD、旦那さんの話は時々する。
・身だしなみに対する意識は高まり、マニキュアをつけたりスチーマーを使う。仏壇の掃除を促す、手を合わせる時には左手を探す。行動が変わってきた。行動性の向上と左手への意識が向くようになった。

・その方がどんな方でどうしたいのかというのを探りながら取り組んでいく。
・高次脳機能障害は良くなる。
・各対象者に対して、何が「良くなる」ことなのか真剣に考える。

Q&A
Q14歳の時に高次脳機能障害の診断を受けた子ども。今までは高次脳機能障害だからしょうがないと思っていたが、考えると環境がどうかというところ。娘に意欲はない。どうしたら遠くまで公共交通機関を使ってでかけられるようになる意欲がでてくるか?
・行動範囲を広げたい。
・車に乗るのが楽しいと、運転して遠くへいってしまう。
・子どもさんにとって「楽しい」と思えること、行動したくなるようなことについて、一緒にいってあげて「行きたい」という目的がないと動きにくい。行きたいところを探す。
・サポーターを見つけていくことも大切。まずは周りの人だが、駅員さんやお店の人と話をしながら進めていくなど。

Q2ジョブコーチ。支援期間が3ヶ月間。本人が大切だと思ったことに対して行動するが、期間が短いことと会社の中で行う支援であるので、方針をコロコロ変えるわけにはいかない。
・症例2の介入は1ヶ月半。
・医師、コメディカルが診断して目標を明確にしていたことが大きい。
・支援する側の方向性を定めないとうまくいかない。

Q3老人ホームにいるが、おだやかに暮らせない。年に1度暴言してしまう。ずっとではなく、時々症状がでる人の支援方法はあるのか?
・何かエピソードがあるかどうか見極めが必要。
・損傷の場所にもよるが、気分を害するスイッチがあるのかどうか。
・元々怒りっぽい性格だが、障害なのか、性格なのかということもある。体調が悪い時にありがち。
・体調が悪いときにはそっとしてあげるなど。


・リハビリテーションは脳機能の回復を方向づける。

2012年1月16日月曜日

原発は推進できないなぁ・・・

「(人差し指を立てた左手と、3本指を立てた右手を出して)1と3で13。」
「4と5で45」
と娘とやっていて、
「5と5は?」と聞かれたので「55」と答えたら、「ぶっぶー。5と5で10でした~」と真顔で言われたIyokiyehaです。急にルール変えるなんてずるい。

さて、先日山梨で開催された小出裕章氏の講演会をYouTubeで視聴しているところです。
今まで原発については、
・CO2排出の少ないクリーンエネルギー
・環境負荷が少ない
・危機管理をしていれば膨大なエネルギーが得られる夢のような発電
ということを見聞きしつつ、子どもの頃には「SimCity」という名作ゲームにおいて原子力発電所が火力発電所より優位にあることを体験してしまったことからくる、なんとなくのイメージで物事を考えていました。
経済効果を考えると安易に反対するのもなぁ・・・なんて『社長島耕作』を読みつつ思っていたり。

今視聴している講演会でこの点だけはうまく打破できました。
海に放出される熱量だけでも環境負荷は大きすぎるなぁと。
私がやや反原発の立場をとる情報としては十分でした。っていうか、そんなことも知らなかった自分に少しへこんでいます。最近凹むことが多いなぁ・・・

まだメモ程度ですが、この線で原発について今後も考えていきます。

2011年10月19日水曜日

緊急フォーラム パパが発信する“子どもの被ばく問題”

緊急フォーラム
パパが発信する“子どもの被ばく問題”
~パパ・ママ・家族は放射能とどう向き合えばいいのか?~
http://www.fathering.jp/activity/04.html

2011/10/11に参加してきました。
レポートもそろそろアップされるかと思いますが、内容をTwitter風にご紹介。

○開会挨拶
安藤氏
・放射能問題は母親視点で語られがち
・子育てに参加する父親から発信することを目的に開催するフォーラム

○基調講演1
瀬川氏
・高木学校:高木仁三郎の意志を継ぐ取り組みを展開
・その根底にあるのは、科学技術は本来一般市民がわかるものであるはずという「当たり前」のこと
・科学を市民の目で見る、「科学を市民が取り戻す」ための活動をしている
・本来そうあるべき、当たり前のものが、そうなっていない現状。
・原子力発電の問題は、
1大きすぎる熱量
2核分裂が止まっても熱を発し続ける
3放射性物質
・全部合わせると、原爆の10,000倍くらいの熱量になる
・見えない放射性物質が最も大きな問題
・200キロ以上はなれた首都圏でも確認される
・放射能をもった放射性物質がある/でる
・光源と光の関係=放射性物質と放射線
・光は人の表面で反射するが、放射線は通り抜ける
・放射性物質の量=ベクレル
・浴びる量=シーベルト
・100ミリシーベルト以下が基準
・250ミリシーベルト以上で急性症状が現れることもある(福島原発の作業者)。
・怖いのは急性症状だけでなく、晩発生障害(何年も後に症状があらわれる)
・CT検査で10ミリシーベルト
・放射線を浴びても痛くも熱くもないのに、なぜ内部被爆が起こるのか?
・人間の細胞は約60兆個
・細胞の核に含まれるDNAには初めの受精卵から受け継いでいる遺伝情報が含まれる。
・DNAは基本的にコピーされる。よって、60兆個ともDNAは同じ
・放射線は細胞核を貫き、DNAを切断してしまう。
・急性症状は一気にDNAが切断された状態
・DNAは修復するものの、コピーのエラーが起こってしまう
・放射線量が多ければ多いほど、破戒されるDNA量が増える=エラーが増える
・変異が増えていく、貯まっていく=ガンのメカニズムと同じ
・子どもの場合は、その影響が大きい
・放射線は「量に応じた影響がある。量に応じた対策が必要。どんなに少なくて
も影響は現れる」
・変異は細胞分裂が盛んなほど影響が大きい。
・よって、若ければ若いほど、細胞分裂があ盛んであればあるほど影響が大きい。
・チェルノブイリでは、子どもの高血圧や内分泌系が発生した追跡調査がある。
・原因不明のがん、体調不良が起こっている。
・被爆量を知ることが重要
・シーベルトの年間量は?
量×8760時間
・放射線量の減少は「半減期」を参考に
・1年間1ミリシーベルト以下に抑える
・対策は原発立地等の特別会計から捻出されている??


基調講演2
天笠氏(ジャーナリスト)
・今回ジャーナリズムのひどさが露呈された
・もう一つ残念なのは、忘れてしまうこと
・放射線問題を追い続けてきた。80年代から取り組んでいる。編集していた雑誌はなくなった
が、追い続けている。
・原爆と原発の仕組みは同じ
・核分裂の時に大量の熱と死の灰、中性子が2,3個飛び出す。
・中性子が次の核分裂を誘発する。
・核分裂連鎖反応=1000分の1秒単位の管理が必要
・チェルノブイリはこの(核分裂連鎖反応)コントロールミスによるもの
・よってコンピューター管理が必要で、電気がなければ話にならない
・以前原発で火災が起こったときに、原子炉を止めずに消火活動を行ったことがあった
・日本の原発は経済性を優先する傾向がある(再起動に時間がかかるため、運転停止に至らないことが多い)
・燃料棒2m×2cm径くらい
・燃料棒の中心部は2600度
・さやの融点は1900度(ジルカロイ)。燃料棒の温度に耐えられる物質がない。
・水蒸気により原子炉内の圧力が高まるため、それを抜く(ベント)必要がある。
・蒸発により燃料棒が露出し融解してしまう。溶けて原子炉下部に溜まる。
・ジルカロイが触媒の役割をしてしまい、水を酸素と水素に分けてしまう。
・その影響で水素爆発が起こる
・晩発性放射線障害=しきい値がないとされている
・被爆に応じてリスクは高まる(が、たばこの害と同じで、リスクは個人差があ
る)集団被爆線量という考え方。
・人・シーベルト、という単位
・1万人シーベルト=1万人が1ミリシーベルトを浴びた時のガンの死者数は、
最低値で100人
最高値で4255人 と推定されている
・DNAの中で働いている部分が「遺伝子」
・10ミリシーベルトの場合には、2%前後でガン患者が増加する試算がある
・自然状態でガン発生が2倍になる放射線量=倍加線量
胎児期は20ミリシーベルト
小児期でも200ミリシーベルト
成人期でも500ミリシーベルト
・暫定基準決定の不明瞭さ
食物の暫定基準値を引き上げると、出荷停止量を減らすことができる
・公的補償との兼ね合いか?
・暫定基準値(ヨウ素)の国際基準は100のところ日本では2000。
・輸入食品と食の安全。日本の消費者は、米の2倍もトウモロコシを消費している
・残留農薬、遺伝子組み替え、食品添加物の問題は輸入食品が引き起こしている
・食品添加物に含まれる不純物はチェックされていない
・添加物もカクテル化されている。添加物同士の化学反応は見過ごされている。
発ガン性物質が生成されている可能性あり
・電磁波と電離放射線(携帯電話と送電線など)は遺伝子を傷つけ、修復を阻害
する可能性がある。
・放射線障害は遺伝子を傷つける
・遺伝子が原因で起きる病気は1万種以上あるため、何が起こっているかわからない
・放射線被曝に特有な病気はない(老化のようなもの)


○パネルディスカッション

吉田:埼玉県でも状況がかなり異なる。三郷などはホットスポットとされている。
田嶋(欠席):ビデオメッセージ
6月~8月対策本部長として福島に駐在。心配なのは子どもと妊婦さん。不安
な状況は続いている。それぞれの家庭で納得のいく解決が必要。政府の対策とし
て引っ越せない人には、何らかの経済的補償が必要となる。安心して教育が受け
られるプログラムに関して予算化できたが、これで充分と思っていない。現在
チェルノブイリに出張。
上田:(江戸川区)
・母親からのメッセージ
・働きながら子育てするママ達の応援団
・勝間和代氏の「麦畑」の初期メンバー
・2007年から江戸川区議員
・3/12水素爆発のニュースを受け、子どもの屋外行事中止を申し入れるも、対応
はまちまち。
・江戸川子どもを守る会の立ち上げ、江戸川ママラボの活動
・母親としては「風評被害によるヒステリー」という見られ方に直面するが、学
習会を企画
・中部大学武田教授「こどもたちの未来のために」9/11
・母親としては、行政の温度差、夫の態度が感じられた。
・放射能の話をすると、夫婦喧嘩になる
・夫が自分勝手で妻が精神不安定に、という構図。
・「100ミリシーベルト以下は、政治哲学だ」との行政の姿勢
・父親としてできること、妻に向き合う
・除染とまでいかずとも、放射能問題にできることに取り組むこと
・インターネットがつなぐ新しい絆

安藤:
・福島の原発問題が引き金となり、夫婦仲が悪くなった知り合いもいる
・とんだ二次被害

上田:
・悪いのは旦那でも母親でもなく、東電
・できることは家の掃除
・男性は任務を与えると働く。ガイガーカウンターは顕著
・9/11参加者の男性構成は、現役よりもイクジイ世代

安藤:
・夫婦の温度差を埋めたいという思いもある

岩松:
・食品に含まれる放射性物質の表示がないので、安心して買えない。子どもに食
べさせられない。
・専門家としてではなく、父親としての悩み。
・カロリー表示はあるのに、ベクレル表示はない。なんで?
・選べない
・現在の日本の基準値乳児100は、国際基準の原発排水基準の90より高い。なんで?
・わからないならわからないと言って欲しいよね?
・右肩上がりは「わからないから」という説もある
・持論を語るのはいいけど、「基準はこうですよ」と言ってもらわないと困る。
・何が困るかというと、今日本がそれをやっている。
・基準値が様々な中で、どちらが正しいというつもりはないが、子どもにはより
安全なものを食べさせたい
・「わからないもの」は「わからない」と言ってください。事実がわからないなら。
・ベクレル表示してよという希望
・疑心暗鬼。数字の操作、グラフの操作、図りかた。
・学校、幼稚園、保育園で使う食材は、ベクレル表示のないものは使わないでほ
しい。

安藤:
・男性はデーターに反応するから、わかりやすい

吉田:
・ふつうに生活すると、感受性は弱くなってしまう
・生活者視点を如何に取り込むか

瀬川:
・岩松氏のプレゼンに間違ったところというのはないと思う。
・市民科学者を名乗る必要はないと思う
・市民は専門家と違っていい。自分にとって必要なことを知れればいい

天笠:
・食べ物を扱う団体に知り合いが多い
・自分の取り組みも、そういったところからの情報によるところが多い
・食品検査の依頼が多い。生協や産直など、食べ物にこだわってきた団体には検
査体制が整ってきている
・ただし、基準は難しい
・国の基準は仕方がないというのは共通している
・検査して数値を出す、というのは基本だと思う。
・子ども、子育て世代も大変だが、福島で農業をやっている人が大変。
・その支援になるかわからないが、数値を出すことは必要。
・農家は農業をやりたい。既に米作りは再開している。
・どうしたらいいか悩ましいところはある。

石川:
・FJ会員。福島から北海道に移住。一級建築士。
・事実を突きつけられた気分
・パパはITリテラシーを身につけて家族を守れ
・家を建てた家族の笑顔と、家を手放す家族の涙を見てきた。
・家を作るときには、予算面・金銭面もケアしないといけないという思いから、
6年前から活動を始めた。
・被災地から避難できる人とできない人とで分かれる
・住宅ローン支払い中でも貯蓄は大切ということを伝えてきた
・自分のクライアントはほとんど移住している。
・貯蓄があるから移住できる。
・7ヶ月たってわかってきたこと
・国内の情報はバイアスがかかっている
・リスク軽減は情報収集による
・1日に2時間くらいは情報収集にあてている。
・海外の情報と国内の情報は全く違う
・緊張感を保つために情報収集に時間を割いている
・関東、関西の方は無防備
・関西では、福島産の野菜を入荷するキャンペーンが行われている
・善意が健康被害となって現れる可能性がある
・「福島は安全」キャンペーンが張られている
・本当の情報を見抜くためには、見比べる必要がある
・東電や政府はパニックをおそれて情報隠蔽しているように思っているが、実は
政府や東電も「何が起こっているかわからない」のではないか?
・冷温停止のニュース映像は間違い
・意識的な汚染範囲(Googleより)東北の人は被災地のみ、関東では関東を除く
東日本、関西では関東以東、北海道は北海道を除く関東まで、東電は汚染地域な
し、政府は30キロ以内、海外は日本全部。
・汚染地域は日本全国のように思われる
・汚染や内部被爆に対し、なぜのんびりしているのか、というのが海外メディア
の大半を占めている
・今回の事故を経て、子どもに申し訳ない気持ちがある
・自分は逃げ切れても、子どもの世代にツケを残してしまった。健康被害だけで
なく、解決に向けた手だてを課題として残した。
・アスファルトにのこった放射性物質は、除染作業で高圧洗浄を10回やっても
30%しか減少しなかった

安藤:
・情報が如何に分断されている様子がよくわかる

Q1(フォロワー)
・小出氏の論は年齢別に基準値を定めて欲しいというもの
・年齢別に食べるものを選んでいくということについてどう考えるか

瀬川:
・ベクレルと産地を両方表示してほしいという意見が大半だと思う
・トレーサビリティが前提になるように思う。表示を詳細にして、選ぶのは個々
人の責任で。

天笠:
・年齢別の話題は危ういところがある。老人の施設に汚染食品をまわすという考
え方になりかねない
・単に年齢別に設定するという話にはなりにくい
・加工食品に関して、消費者庁が食品表示を一括する庁としてできた。食品表示
(JASや保健特定など)が一元化されることにより、新しい法律ができるとこ
ろ。加工食品の原料原産地表示が一つトピックになっている。

石川:
・ガレキ処理を分散するという発想は日本的。一カ所に閉じこめるしかない

岩松:
・横浜市は海に捨てようとした。市民がくい止めた経緯がある。耳を傾けること。

上田:
・政治が動かしていくことになってしまう。選挙で変えていくしかない。数です。

天笠:
・原発事故は必ず起きる。小さい事故は頻発している。ハインリッヒの法則。無
理なもの。原発は止めなければいけない。

瀬川:
・汚染地域から汚染物質を動かさないという論調もある。福島から東京に汚染物
質を持ってきて東京の人が避難するのがいいんじゃないか?東京のゴミが福島へ
行っている、東京が電気を使っている。福島の人に移住しろという前に東京の方
がいいんじゃないかと思うけれども、非現実的ですね。

安藤:
・わからないことはわからないという
・自分で判断できるための情報収集が求められる
・こういった中でも子育てをしなければならない
・子どもの笑顔、家族の笑顔のために。

2010年10月24日日曜日

101022ペンギンパパ・産後うつセミナー Vol.1

タイトルのセミナーに参加しました。
以下、簡単な記録です。
「資料」は当日配布の資料です。アップはしませんので、あしからず。
(WEB: ペンギンパパ・プロジェクト)



■ペンギンパパ・産後うつセミナー Vol.1
パパ同士で、産後うつを学ぶ・語る会
2010/10/22

(安藤さん)
・ペンギンパパPJを立ち上げた
・目的の一つは、父親に産後うつを知ってもらうこと
・他にも、情報発信
・支援ネットワークの形成
・今回は、FJと日本助産師会のコラボ企画
・コウテイペンギンはブリザードからママを守る=ペンギンパパプロジェクト
(市川さん)
・うつに至らなくても、女性は産後苦しんでいる
・家族で支援ができればと思っている
(棒田さん)
・女性が一人で抱え込んでしまうことが、とにかく大変
・なってからも大事だが、予防が大切
・パパが入手できる情報がない
・「周産期メンタルケア」←キーワード


第1部 産後うつを学ぼう
講師:市川香織(日本助産師会事務局長)
・助産師の役割は、出産だけじゃない
(資料2)
・Midwife=女性に寄り添う者
・子育て、思春期、不妊、などなど
・虐待の状況(心中以外の数=67)
(資料3)
・ここに至る母親の気持ち、背景などと、産後うつが関わっているということであれば、事態は深刻。
・産後うつの見分け方
(資料4)
・マタニティ・ブルーズ=産後3日目くらいから起こり、数週間で収まる
・3ヶ月~6ヶ月くらいは周りもサポートしてくれる
・産後うつは、その頃から
・身体症状は、マタニティ・ブルーズとほぼ同じ
・自己肯定感が下がる
・みじめになる、不幸せな感じ、不安・恐怖、自分を責める+眠れなくなる
・症状が似ているので、はっきりと区別することは難しい
・身体的に、眠りにくい、イライラが続くようであれば、注意
・氷山になっていても、治療を受けてる人はほんの一握り
・産後うつの人へのNGワード
(資料6)
・「母親になったのだから、しっかりしなさい」
・「がんばれ」
・すでにがんばっている。ど子かで認めてあげることが大切
・「親になったのだから赤ちゃんがかわいいはず(という態度)」
・人に価値観を押しつけない
・「今はそっとしておこう(と距離をおく)」
・産後うつのリスク(8割がマタニティ・ブルーズ、内1割が産後うつ)
(資料7)
・女性の学歴向上、キャリア、社会進出による出産年齢の高齢化。
・上記高齢化による、親も高齢化しており、サポートが得られない(頼れない)
・パートナーが働き盛り(頼れない)
・自分で何とかしてきた女性が、思いとおりにならない経験の少なさ
・子供に理屈は通用しない
・まず相談してください(医療従事者の切なる願い)
(資料8)
・産後うつの専門は、精神科
・精神科はハードルが高いため、まずはかかりつけ医を頼る
・万が一産後うつであっても「紹介状」がもらえるので、その後がスムーズ
・そこまでいかなくても、カウンセリングや育児サポートへつなげることもできる
・産後ケアの効果
(資料9)
・EPDSスクリーニングは12.1%(1割が産後うつ、の根拠?)
・産後1ヶ月のスクリーニング陽性者がケアを開始した場合、産後4ヶ月の時点で8割が改善。
・行政サービスもある
(資料10)
・妊娠中から情報を収集しておくとよい
・産後体験をふりかえって、吐き出しておくことが効果的(産後ケアセンター桜新町)
・退院後~4ヶ月くらいまでがいい
・のどにつかえていたものがとれた感じ
・自律(マズロー)
(資料12)
・下位欲求が満たされなければ次にいけない
・どの段階が足りていないか。パパが注意することでもある
・医療機関の選び方
(資料13)
・近いこと、は大事
・医師との信頼関係が重要
・きちんと相談できるか、薬などの説明をしっかりしてくれるか
・予防と準備
(資料15)
・「誰でもおこりうる」
・子育ては力を抜いて
・SOSを出せる相手をピックアップしておく
・行政サービスは積極的に活用。いろんな人を家庭に巻き込んでいく
・妊娠中に産後のイメージトレーニングを家族でする

Q医療機関の探し方。精神科の中でも、産後うつに強い人はどう探す?
A「周産期メンタルヘルス」の学会やシンポジウムなどに参加されている先生をきっかけにする
A精神科の中では「産後うつ」は対象になっていないこともある。広尾、横浜労災など。
Aママブルーさん(横浜)は、少しずつネットワークしつつある

Qこの程度は違うんじゃないか?自分のイライラは産後うつじゃないと思ってたが、ふりかえれば産後うつだったということもある。
Aエジンバラの評価表の他の項目も注目。イライラだけでなく、例えば「自分自身を傷つけたくなった」など。
Aママからパパへの期待度が高いほど、実際にしていないときのギャップが大きいので落ち込みやすい、など。個人差が大きい。


第2部 産後うつの体験・悩み・不安をパパ同士で語ろう
※プライバシーに関わる情報を元に情報交換が進んだので、記録はとりませんでした。以下、自分の経験含め感じたこと。
・パパがよかれと思ってやることは、大体「外す」。(資料6前後)
・家事を肩代わりしてやること=育児参加ではない(大事だけど)。
・ママ(女性)にとって、父親に求めることの一つに「家にいてほしい」というものがある。
・自宅に「いる」ことの意味が、父親と母親とで全く違うことを意識してもいいのではにか?
・仕事を「持ち帰り」しても、帰宅時間を早くしたことは、逆説的かもしれないが、女性にとっては「大きな意味」があることかもしれない。

2010年8月10日火曜日

緊急フォーラムへ参加してきました

最近、その活動に注目しているFJことFathering Japanによる「産後うつ」をテーマとした緊急フォーラムが開催されるということで、仕事帰りに参加してきました。

意外と知らない「産後うつ」。
一応、専門家ですので、そういう症状があるということは知っていましたが、まさかまさか、こんな現状だったとは・・・と、目からウロコの2時間半でした。

詳細は、Twitterの実況中継ばりに記載したメモ(以下の投稿)にゆずるとして、要約するとこんな感じかと。
1.その数。「産後うつ」の診断を受ける人は、出産後の女性の内10人に1人と言われている。
2.しかし、診断されない10人中9人のうち、8人くらいは「自分ではコントロールできない感覚」を経験している。
3.日本には「産後ケア」の専門家がいない。知見も蓄積されていない。伝えられる機会がない。

という現状と、

4.当事者(経験者)が統計よりも圧倒的に多いことの理由には、「できない」がいえない風潮も影響している。
5.子育て世代間ギャップもストレスの一因になることがある。身内のケアがあればいいというものではない。
6.産後うつ予防のためには、しくみとしての行政的な支援だけでなく、民間専門家の知恵や知識を戦略的に束ねていくことも大切。
7.「一般的な」母性(、父性)の押し付けは、ストレス以外の何者でもない。夫婦による「母性」「父性」を、その夫婦なりに創っていくことが大切である。

といった課題が提示されていたように思います。

いろいろと感じたこともあり、興奮して目がさえてしまったため、本日は少し寝不足気味ですが、一専門家としても、一個人としても、非常に有意義な時間でした。

NPO法人 Fathering Japan
http://www.fathering.jp/index.html
さんきゅーパパプロジェクト
http://www.fathering.jp/sankyu/index.html

1:父親たちで考える“産後うつ”問題~ママを産後うつから守る!パパはママの最強サポーター~

○父親たちで考える「産後うつ」問題
2010年8月9日 18:30~ @文京区民センター

1.産後うつを正しく知る 宗田聡氏(パークサイド広尾レディスクリニック院長)
・従来(10年くらい前まで)は、取り上げられることがほとんどなかった(若手医師の仕事だった)
・誰でもなる(うつ病と同じ)
・なりやすい人がいる(傾向あり:真面目、一生懸命、几帳面など)
・診てもらえる場所がない(小児科では出産後の女性の相談にはあまりのってもらえない、精神科では精神疾患専門だったりする)
・女性にとっては、一生、身体と心が密接に関係する
・一人目の出産で何事もなくても、二人目の出産時になることもある
・同様に、三人目の出産で始めて産後うつになることもある
・産後うつの女性と会う機会がない(意外と産婦人科の医師に)
・産婦人科医は、普通母親にあまり興味がない
・小児科医も同様
・母親が相談できるところが少ない
・近年では、地域の保健師さんの訪問などあり
・保健師さんの訪問は、100%とはいかないが、75%くらいフォローしている
・実際に「産後うつ」で困った人が、どこで、誰にひっぱってもらうのかが課題
・相談機関はどこだ?(保健所?産婦人科医?精神科医?「専門医の相談」を促されているのだけれども、実際には「産後うつ」の専門家はいない。「専門医」が曲者)
・産婦人科には、不妊治療、未熟児のスペシャリストは配置されているが、「産後うつ」が抜けている。
・1ヶ月検診のスクリーニングやフォローの体制がない。
・少し異常があると、精神科医を紹介する体制はあるが、重篤であればすぐに診てもらえる。
・服薬治療にはいくつかハードルがある(授乳、体調含む)
・うつ病治療は、薬物治療とカウンセリングがエビデンスあり
・精神科医は薬物治療がメインとなっているのが現状
・産後うつの場合は、少しずつ悪くなっていく。精神科を促された時には軽微なことも少なくない。
・軽微な場合は、簡単に済まされてしまう。軽微でない場合はすぐに服薬治療を検討されてしまう
・精神科医にも「産後うつ」の専門医はいない
・日本の場合は、基本的に身内の(精神)疾患は隠す
・家族でも意外とわからないもの(夫婦のコミュニケーションを含む周囲の支えが大事)
・「産後うつ」が知られることにより、正しい治療を受けられる人がいる
・一方で、他の体調不良を「産後うつ」としてしまうことにより、正しい治療が受けられなくなることの危惧あり

2:父親たちで考える“産後うつ”問題~ママを産後うつから守る!パパはママの最強サポーター~

第1部 体験者の方の声を聞く
○吉田紫磨子(マドレボニータ:当事者)
・8年前の出産時の体験
・助産院(中野区:松ヶ丘)で出産
・妊娠・出産オタク(安産のためなら死ねる??)
・出産をゴールに、すごくがんばった(5時間/日のウォーキングなど)
・安産(1時間くらいで)
・頭がハイテンションで、みんなに電話したかったし、布おむつを使ったり。
・退院した日にベビーマッサージをはじめるなど「ハイテンション」だった
・産後ハイ(3ヶ月くらい)→産後うつ(4ヶ月目くらいから)→半年程度うつ
・産後ハイの状態は、出産がゴール、身体のダメージに気づかず、里帰り、出歩くこともあった、引越し、
・頭だけカッカカッカしていた
・人の言うことにいちいちカチンときたりした
・夜中に外出し出歩くこともあった(100mくらいで疲れを感じ帰ってきた)
・夫は・・・仕事が大変
・育児休暇などなく、週末(土日曜)休んだだけ
・(後で聞いた話だが)仲間から「暇でしょ?飲みに行こう」と言われていた
・ほとんど午前様
・仕事に邁進
・2ヶ月目に引越し
・その後産後うつ(2002年8月~11月)
・引越しの日に高熱を出して、何もできなかった
・起きられない、着替えられない、嘔吐、パニック、涙がとまらない、しゃべれない、夫に攻撃的な言葉、抱っこが苦痛
・自分の嘔吐を眺めてしまっていた(子どものおむつでも大変なのに、誰が片付けるんだ?とぶつぶつ)
・手足がしびれるようになって、着替えられない
・精神的にまずい、と感じるようになった
・精神科にかかろうとしたが、母乳育児に命をかけていたので薬はどうかとも思った
・それでも病院を探そうとタウンページを持つが、重くて持ち上げられなかった
・夫にいろいろ話したいことはあるのに、帰宅してくると「何を今更」と思ってしまった
・「死にたい」感情が生まれてくる
・きれいなマンションに引っ越していたが、空気の悪さを感じてしまった(運よく1階だったので、事なきを得たようにもふりかえる)
・母乳育児にこだわっていたので、診察は受けなかった
・夫は・・・腫れ物に触るような、、、
・「赤ちゃんかわいいね」という夫の言葉にも怒りを覚えていた
・その後、
・タウンページが持てない自分の体力のなさをどうにかしようと思い、産後ボディケア&フィットネスに参加する
・エクセサイズ+気持ちを話す
・実家の仕事を手伝う(古紙再生の現場)
・1~2時間でも働くことができたことがよかった
・メッセージ(以下3点)
・想像力と共感(>家事、育児万能より)
・夫婦二人だけで乗り切ろうとしない
・風通しのいいパートナーシップを
・二人目の出産
・産後うつを防ぐために、様々なサポートを活用した(お金をかけた)
・三人目の出産時には、仲間が押しかけてきた(支え)

○長野正義(FJ:当事者夫)
・7年前くらいに妻が発症、5年くらい継続している
・現在妻は職場復帰しているが、再発リスクは抱えている
・通り魔犯罪に遭遇してしまったような感覚(何でウチなの?何で妻なの?)
・7年前の状況
・30代後半の夫婦、2人目の出産
・某大手金融機関の本部に勤務、30代で管理職(課長)
・妻も仕事をバリバリやっていたので、退職せず
・二人目の出産時に発症
・子ども2に対し、夫婦が実質1になってしまったことも影響するか?
・原因はわからない
・対応を時系列にまとめる(12ページ)
・まず、気休め型
・まぁ、そうカリカリするなよ
・産後の疲れの愚痴だろう
・余計なケーキを買ってみたり
・気晴らしのイベントをしてみたが・・・不要だったかも
・大変、大変って言ったってさ、育児休暇中だろ?がんばれよ、などの声かけをしてしまったかも
・最初はカリカリしていたのに、だんだん元気がなくなってきたぞ
・ある日、ごはんもどうなっているかわからない状態の子どもがいて、母親が疲れきって倒れているような状態
・これはまずい→他人依存型
・ベビーシッターを雇う、家政婦を雇う
・週末は、父親・家族、平日はシッターさんや家政婦さん
・負担を減らすため
・精神医療面のためにも、精神、心療内科の受診をすすめる
・うつ病の診断が出た
・サポートは万全だと思った
・月15万円くらいの出費だったが、その分「仕事をがんばるぞ」へ
・妻が躁状態へ
・子どもがダダをこねた時に、上の子を突き飛ばしたような事件あり
・ケンカが増えた
・シッターさん、家政婦さんは気を遣うことを知る(話をした)
・これまでは、人に頼りすぎていたか・・・→自力フルパワー型へ
・父親として「全て」やる
・朝は保育園へ子どもを送り、出勤
・夕方は17時に帰宅、保育園へ迎えに行き、風呂、食事、寝かしつけをして、再度出社して午前様
・WLBなんて言葉もないし、意識もなかった
・妻の症状はよくならなかった
・半年も続けると、疲弊してくる
・支えきれないと思えてきた
・実家が心配(実母)
・実母が徒歩5分のところに転居してサポートしてくれるようになった
・妻にふるえや発熱が生じてくる
・罪悪感、無力感「私は何もできない」と妻
・救急車で病院に搬送されることもあった
・仕事より育児よりも妻→夫婦強調型へ
・転職を決意し、介護・育児型の生活へ
・日中は二人で「ぼー」っとしてみる
・散歩に出るようになった
・初めは感情表出がなかったが、だんだん話してくれるようになった
・「あまり子どもが好きじゃない」という思いを話してくれた
・転職後は友人の会社を手伝う立場なので、時間の融通は効く
・カウンセリング中心の病院へ転院
・カウンセリングに夫もついていくようにした
・メッセージ(以下2点)
・家族で過ごすことも大切なのでは
・対応が正しかったのか、自信はないが・・・

○宮崎弘美(ママブルーネットワーク)
・出産を経てうつ病を発症
・2004年から自助グループを立ち上げる
・現在は、心理職の仕事を続けている
・長崎の「黒い雨」
・体験者として、専門家が「ここまで」という以上の範囲に黒い雨が降っていたということがあった
・通ずるところ
・体験者の話は、理論上ありえないかもしれない(産後うつ=ただの怠け?)
・自助グループのBBSではよく聞かれたこと
・2000年にうつ病悪化
・自殺未遂を何度もした
・日中の行動の記憶がない
・息子に何をしているのかわからず、危険な存在として自己認識してしまう
・それを何とかしようと思い、精神科に入院した
・入院した時に「ほっ」とした(これで息子は大丈夫)
・当時欲しかったサポート(以下)
・正しい情報(10年前には、ほとんど情報がなかった。自分が産後うつ病だということがわからなかった)
・休もうと思っても、子どもがいるから「休めない」
・闘病中も「治るのか?」と思ってしまった。
・体験を語り合う場の必要性を感じる→ママブルーネットワーク(4700人程の登録)
・うつ病の傾向から、まずは携帯メールから
・自助グループ→子育てサークル
・夫のサポートについて
・初期は全てがずれていた(ケーキを買ってきた、チョコレートを買ってきた、サイクリングに行っておいで)
・妻が本当に欲しいサポートを実現するのが「夫のサポート」聞いて実現する
・夫の限界を超えてはいけない
・全て自分で何とかしようとしてしまう傾向がある
・妻が本当に欲しいサポートのためには・・・(16ページ)
・情報収集(正しい情報)本人から、調べる、体験を聞く、本を読む、主治医から聞く(うつ病の時には考えがまとまらない)
・妻を助ける言葉かけ
・妻が一息入れる時間を作る
・自分の限界を知る
・愚痴は聞き流す
・自分自身を大切にする(ここまで)
・回復中のサポートは、間違った方向へ行くこともあるので、正しい情報を入手して参考にすることが大切(「ママブルーになっても大丈夫」など)
・求められる以上のことはしない
・言動一致(やらないことは「やる」と言わない)
・夫も自分自身を大切にする
・うつ病の妻には判断させない
・上記は自分にとって無理のないサポートになっているか?
・夫婦とも、一人で悩まない
・妻が回復後に夫がうつ病になってしまうこともある
・ママブルーネットワークの「誓い」(「ママ」=「パパ」)
・サポートを受けながら、無理なく

(司会:棒田明子さん。以下()内)
・誰でもなりうること
・第1子を子育て中のママからコメント
(アラキママ:産後5ヶ月)
・夫の帰りは遅い
・日中コミュニケーションをとる時間がない、ということが不安
・家事などはなんとかなるが
・朝バタバタの中で少し会話する
(ママの思いとパパのサポートの「ずれ」に関してどうか?)
・ささいなことが大切
・30分~1時間でも子どもを連れて外出してもらえると助かる
・お願いをすれば何でもやってもらえるので、週末は育児を休んでいる

3:父親たちで考える“産後うつ”問題~ママを産後うつから守る!パパはママの最強サポーター~

第2部
○市川香織(日本助産師会)
・助産師の仕事・活動と今後の課題について
・29ページから(資料)
・助産師=Midwife=女性に寄り添う人
・今回は出産、産後に焦点を当てているが、実際の役割はもっと広範(29ページ)
・妊娠:出産:産後のどこで助産師と出会うか?
・関わりは「点」
・継続して関わることは少なく、細切れになりがち
・育児指導もやっているが・・・
・女性が求める、妊娠・出産・産後ケア(厚労省研究H14)
・1対1の継続ケアのニーズは大きい
・しかし、その体制が整っているのか?
・産後の退院が早くなっていることも影響しているのか?
・早くて3日で、育児に自信がないまま退院するケースも少なくない
・産後うつのリスクを高めている要因として(30ページ、以下)
・出産年齢の高齢化(親も高齢で頼れない)
・パートナーが多忙な時期と重なってしまう(海外赴任だけでなく、働き盛り)
・思い通りになりにくい経験(キャリアを積んできた女性も多くなっている)
・子育ては思い通りにならない
・子どもに理屈は通じない
・助産師のケア(以下3点)
・からだのケア
・正常な妊娠、出産へ向けての診断とからだ作りをアドバイス
・マイナートラブル(腰痛、便秘など)への助言
・ストイックに取り組みすぎることは産後うつリスクになる?
・適当に力を抜くことも大切
・身体の不調の訴えは?
・こころのケア
・産後のイメージを作り、情報を得て取り組む
・仕事や家庭でストレスはないか?
・取り組みを「ほめる」こと
・一番のほめ言葉は「ありがとう」
・助産師としては、表情や顔色、訴えの内容に注意
・いつも自信がない人にはちょっと注意しています(助産師)
・パートナー・家族の支援
・沐浴、育児技術も大切だが・・・
・出産前後の心理的変化やメンタルヘルスの視点も重要になっている
・祖父母へのアプローチ(孫育て講座)
・世代ギャップがストレス因子になっていることもある
・子育てママは考えがまとまっている状態ではなく、情報を得ながら取り組んでいる
・あれこれ言われてしまうことはストレス
・助産師会としての今後の取り組み
・「予防」で関わることが一番
・妊娠中から継続して関わりたい
・利用している施設で助産師と接点を作ることを打診してみてください
・そして「継続して関わってください」と気の合う助産師に依頼する
・産後の継続的なフォローアップ体制を「作ってください」
・助産師マタニティサポート(Web)

○吉岡マコ(マドレボニータ)
・Twitterで実況中継
・産後うつ一歩手前の人たちのこと
・前半は重症化してはいあがってきた人の話(感動的!)
・10人に1人が産後うつになる、有名な話
・じゃあ9人は?
・診断はされていないので、1人には入っていないが・・・
・9人の中にも大変な症状が出る人もいる
・「ちょっと『ヤバイ』かも」という人
・元気にエクセサイズしているのを見ると「健康そうでいいですね」といわれてしまう
・しかし、元気な裏側は一歩間違えたらうつになってしまうことが容易に想像される
・そもそも出産前は・・・
・お腹が大きいので、わかりやすい
・周りが気を遣ってくれる
・玉のような赤ちゃんを見ると、みんなの意識はそちらへ・・・
・産後は大きなお腹がなくなってしまう
・妊娠中より産後の方が身体はしんどい
・カマキリは出産後死んでしまう
・他の人は楽しそうなのに、シワシワ、ボロボロ、ガタガタに・・・
・様々な産後ケアの体制が、今の日本にはない
・ヘルスケア体制は、産前にはたくさんあるのに、出産後には全て子どもにいってしまう
・子どものヘルスケアに連れて行くのは誰?
・これじゃ、まずい
・産後に特化したプログラムを開発(吉岡氏)
・(1)有酸素運動によって、体力を回復させる
・筋トレよりも、心肺機能が大切
・体内エネルギーを高める
・うつ病を発症すると、体力が落ちてしまうので動けなくなってしまう
・一歩前、なりかけの人が身体を動かすことで回復することもある
・運動をしてから、精神科へ行くなどのルートもあったりする
・母親たちはリフレッシュ、ほっとする、リフレッシュするだけでは足りない
・自己表現が大切=(2)コミュニケーションの時間
・子どもと二人の時間を抜け出して、大人の会話をする時間
・セルフケアに関すること
・身体のケア、睡眠の阻害に関する助言など
・4週間のプログラムを経て、ようやく回復してくる
・そもそも産後うつの研究、産後の身体・心の研究がない、専門家がいない
・産後うつに必要なのは、治療ではなくリハビリ
・自分の力を発揮する機会が必要
・マドレボニータの活動としては、その専門家を輩出することが核に
・ママさん体操だけではなく、「産後」の分野を学び、プロとして教えていく
・本当に10人に一人なのか・
・一歩手前の人は8割くらいいるのではないか?
・「診断されていないが、産後うつだったと思う」「産後うつの一歩手前だった」などの回答が目立つ
・「元気そうなお母さんですね」で済ませてはいけない
・産後に必要なのは治療ではなく、リハビリ
・夫はその重要性を理解して、気持ちよく送り出して欲しい
・診断されていないが・・・(以下)
・何をするにもかったるうい
・子どもをベランダからぽいって投げたら・・・など
・全く眠れず、神経が高ぶっていた
・傘の先がこちらを向くだけで「殺すつもり?」といってしまう
・産後何もできないのは「あたりまえ」(ここまで)
・その時夫は・・・(以下)
・放っておかれた
・言われなければわからない(夫も歩み寄りが必要)
・帰宅時間が遅くなっていった
・産後は全身全霊でサポートする時期(ここまで)

4:父親たちで考える“産後うつ”問題~ママを産後うつから守る!パパはママの最強サポーター~

第3部 全体ディスカッション(司会:FJ小崎氏)
1:宗田Dr.
2:吉岡氏
3:市川氏
(FJ宮島氏)
・薬を使わない精神科医
・精神科の病院では数ケースしか見ていない
・育児相談で数件
司会
・参加者の背景(医療、子育て関係、大阪の事件を受けて)
FJママ会員高祖
・オレンジリボンの活動→チラシ
・産後うつからの虐待、というルート
横浜産み育てハッピープロジェクト
・いろんな課題がある
・産後のお母さんの心と身体の変化
・こういう状態に陥るかもしれないということをお父さんはほとんどわかっていない。お母さんも実はわかっていない
・教えられていないから
・どういうルートで教わるか?
・窓口はたくさんあったほうがいいと思うが
・医師は難しい、夫は知識がないから難しい・帰りは遅くなっていく
・行政の支援は穴がある
・やっていることは謳っているが、ニーズにあっていない
・例えば、産前ケアに「つわり」が入っていない、産後ケアの申し込みに窓口への書類提出が要るなど
司会
・お父さんはどうすればいい?ずれているというが・・・
1.宗田Dr.
・自分よりももっと奥さんを大切にしている人がたくさんいるな、という率直な感想
・夫婦だけの問題ではないが、親が入ればいいのか?
・親が入ることでもっと難しくなるケースもある
・地域で一緒に考えてくれる仲間がいるかどうか
・仲間や友達がいる、というのは大きな味方
フォロワー:小児科医
・素晴らしいお父さんの話は聞くが、どうすればいい、という話は聞かれない
・産後うつを体験したが、力でねじ伏せた
・しかし、こういう体験は残ってしまう
・母親はこうあるべき、母性があるならこうだろう、という意識に意義
・生んだら母親だから、これがあたりまえ、というところから抜け出す必要あり
・自分の母親像を妻に押し付けないこと
・「一般の母性」を捨てて、二人(夫婦)の「母性・父性」をつくっていく取り組み
3.市川氏
・本日の集まりは素晴らしいと思う
・いろいろ調べて欲しいと思う
司会
・膨大な情報量を、どう精査していくか
2.吉岡氏
・FJのファザーリングスクール
・初めは産後ケアが科目になかったが、直談判した
・産後何が起こるのか?について吉岡氏が解説する
・妊婦さんは産後のことを話すと嫌がるが、実は男性の方がうけがいい
・男性の方が情報を論理的に受け止める能力に長けていると思う
司会
・立会い出産をしたが、出産時の夫は「刺身のツマ」みたいなもの
・出産に男性は「入るべからず」な雰囲気
1.宗田氏
・だいぶ変わってきているが、立会い出産の主旨は出産プロセスに寄り添うこと
・立会い出産と「立ち見出産」の違い
・大切なのは「プロセス」
・前後の関わりが大切
・立ち見は必要ない
司会
・男性は知識がない、意識が低い、ということに対する提言は?
1.宗田氏
・横浜の取り組みを読み、市川氏と話をしていたところ
・妊娠中に産後の話をすることについて、病院が慎重(後ろ向き)
・妊婦さんを不安にする、などの理由
・でもこれは問題を先送りしているに過ぎない
・がんばっているお母さんがなりやすい側面
・キャリアも影響する
・産後うつになってしまうのは、誰の責任でもないのか?
・お母さんはもちろん、お父さんの責任か?と言われるとどうか
・行政に取りまとめ役がいないのも事実
・政治に関することは「選んだ責任」にもなってしまうが・・・
2.吉岡氏
・市民出身の専門家をもっと頼ってもいいのではないか?
・杉並区のバウチャー制度
・NPOも戦略的にやっていく必要がある
・積極的な相互交流(民間-行政)も必要
3.市川氏
・産後にもチケット制のようなものがあってもいいのではないか
・結婚式場に行ってセミナーをする
・「おめでた婚(全体の4割)」の方を対象に
・しくみを提案していくのは、NPOか?
FJ塚路氏
・さんきゅーパパプロジェクト
・eラーニングあり
・産後ケアがなかった

司会
・最後にメッセージを
1.宗田氏
・現場(医療)は、こういう議論にはなっていない
・近所で話題を広げて欲しい
・一方で、熱心な旦那さんが多いことも「産後うつ」の問題の背景にある
・子育てにも大きく影響する
2.吉岡氏
・飲み屋ではしにくい話かもしれないが・・・
・子どもの話も大切だが、産後の妻のお話も大切
・体験談も大切
3.市川氏
・助産師を見つけて、話を聞いてくれと言って欲しい
・子育ては、いい加減が「良い加減」
棒田氏
・今の日本は「できない」が「言えない」社会
・家族や友達にも「言えない」
・「できない」を聞き入れられるようになってほしい
司会
・まとめる場ではないが、一人ひとりに芽生えるものがあると思う
・許す社会や感受性
・きれい事を、少しずつ「カタチ」へ
・FJの取り組みも

FJ安藤氏
・18時まで大分にいた
・岡山、名古屋、九州と活動していた(週末)
・車内でも見られた家族の姿
・泣く赤ちゃんをデッキに連れて行くパパ
・一方で、泣く子に手を出せずに、それを周囲の男性が嫌そうにする
・揺さぶる講演をすると、泣いて話をしにくる妻も
・完璧な育児はない
・育児をしながら親も成長していく
・産後うつ予防プロジェクトも進めていきたい
・プロジェクトへの参画も考えていただきたい

2007年8月26日日曜日

フォーサイトクラブ・セミナー:池上彰「日本語は乱れているのか ――メディアの日本語、私たちの日本語――」2005年7月14日。

池上彰「日本語は乱れているのか ――メディアの日本語、私たちの日本語――」2005年7月14日。

週刊こどもニュースのお父さん役として知られる池上氏の講演録。『フォーサイト』誌の付録で付いてきたCDに録音されていた。

本職であるNHKの記者の仕事の説明や、「週刊こどもニュース」の作成にまつわる裏話など、軽快な語り口で聞かせる講演となっていた。
本題としては大きく2つのことを話す。一つは「暗黙知のギャップ」。池上氏がこどもニュースをつくるときに常に考えていた「わかりやすい説明」というものについて、具体的な事例を交えて説明する。「リコール」という言葉を「安全性の問題」と言い換えて子どもに説明するも、今度は「安全性」って何?という質問が出る。それについて、「商品の中に不良品が混ざっていたら、それが基で事故になってしまうかもしれない」といった説明をしたところ、子どもたちから「じゃあ、そういう風に説明してよ」と言われてしまった等、大人にとっては「これくらいは理解できるだろう、この言葉ならわかりやすいだろう」と思っていることが、実は子どもにとってはまだまだ「わかりにくい」ものだったりした。つまり、少し応用すれば、自分の理解と他者の理解との間には差があって然るべきであり、そのギャップをお互いに埋める努力をして始めて、お互いの理解を取り付けることができる、ということと言える。
もう一つの話題は、「間違った使い方をすると、言葉の意味が変わる」ということ。「水面」という言葉はもともと「みのも」と読むものであったらしいが、今では「みなも」と読みそれが今では正しい読み方として使われている。他にも「白夜」は元々「はくや」と読んでいたのに対し、現在では「びゃくや」と読む。こうした漢字の読み方だけでなく、慣用句に関しても間違った意味が通用してしまっている現状を指摘する。

記者としてのキャリアの長い池上氏だからそうした言葉の間違った使い方にも敏感で、様々な指摘をするが、その指摘を経て氏は日本語を「生きた言葉」であるがゆえに「変化する」と結論づける。初めは間違って使われた言葉が(間違い)、次第に多くの人がその使い方をするようになり(ゆれ)、やがて言葉の意味そのものが変わってしまう(正しい)現実を説明する。
そして、放送に携わるものとして、また一般の人に対しても、常套句に逃げ込む危険性を指摘する。つまり、よく調べずに「ゆれ」ている言葉を「正しい」ものとして使ってしまうことにより、そこに「思考停止」が発生する可能性を危惧する。記者としては、安易な言葉で乗り切ってしまうのではなく、きちんと取材して真実を表現するべきだし、普段私達が実施している「説明」なども、改めて考え、「わかりやすい」「正確な」表現を考えて磨きぬくことが大切なことではないのかという結びであった。