著者は北の達人コーポレーション代表取締役。自らが実績のあるプレイヤーであった経歴があったこと、組織を率いることの苦労と悩みなどを常に抱えつつ、会社を軌道に乗せてライジングしていった様子を、組織内のかなり突っ込んだ視点で紹介している。思いが共通言語にならないことのジレンマから、共通言語ができあがっていく過程、更に組織内にその「言葉」を通じて「思い」が浸透していく実感が示される。(評価するつもりはこれっぽっちもないが)生々しい言葉で綴るストーリーには、体系化しきれないほどの「思い」があふれており、経験を伝わる形に押し込めた感がある。木下氏には、語り切れないほどの思いと思考と経験が、まだまだたくさんあるのだろうと察する。他の著作にも期待である。
月並みな感想かもしれないけれども、前例踏襲はあくまで踏み台であって、事業を創る、育てていくという局面においては、他と同じことをしていればいいかといえば、そうではなくて、あくまで目的を見据え、目的を適切にブレイクダウンした目標を一つずつクリアする。目標設定においては、その達成の先に必ず目的に近づくことができるものを掲げること。選択においては、データの収集は必要だが、予測を伴い選択にはデータのみから導かれる結論には要注意。一生懸命取り組むがゆえに視野が狭まっていることに気づきにくくなる状態には注意しつつ、いろんな見え方を大切にすること。議論を尽くして出てきた選択肢はABテスト(ランダム化比較実験)等を含めて検証することなど、基礎・基本の徹底が、結局はよりよい事業を生み出したり、事業がライジングしていく土台となることを、学ぶことができたように感じる。
項目だけ拾っても、書籍を読まないとわかりそうで、わからないものであるが、要所の引用のみ。
○一瞬にして破滅へ導く「企業組織病」
1 職務定義の刷り込み誤認
2 お手本依存症
3 職務の矮小化現象
4 数字万能病
5 フォーマット過信病
○どん底からV字回復へ導く5つの「Xポイント」
1 KPI
2 教育の仕組み
3 共通言語化
4 タスク管理
5 風土