2024年8月17日土曜日

本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』太田出版、Audiobook版。

  私が小学生から中学生の頃に、世間?をこんな風に騒がせた人がいたとは、全く知らなかった。いわゆる18禁の世界の話だから、当時知らないのは当然といえば当然だが、まぁ、すごい(といっていいのかな)人がいたものだ。

 「成功者」というのは定義が難しいもので、最近の使い方は、とかく「自分が使えるお金を、サラリーマンよりも多く集めた人」くらいの意味で使われているように思う。そのくらいの意味ならば、本著のモチーフとなっている村西氏は大成功を治めた人に位置付くだろう。しかしながら、この手のセレブが残している読み物や、本著にも村西氏の発言とされている言葉のように、「稼げば稼ぐほど、不安が大きくなる」という共通の感覚があるらしい。不思議な者で、村西氏は体制と戦うことにはモチベーションを保つことができたようだが、どうあれ自由になる金銭を、心理的には持て余していた様子がうかがえる。

 私のようないわゆる凡なサラリーマンの立場で見たら、破天荒とか荒唐無稽、非常識なんて言葉がしっくり感じてしまうエピソードの数々であるが、価値判断を極力抜いて村西氏を眺めた時に、人間の内側からほどばしるようなエネルギー量が、新鮮かつ驚きの連続であり、人間の生き様という一点だけ切り取れば、ここまで何かに打ち込めるというのは、少しばかりうらやましく感じることもある。やっていることはむちゃくちゃだと思うし、いわゆる常識からみたら筋が通らないことを押し通しているようにも見えるのだけれども、生き様偏差値みたいなものがあるならば、到底かなわないところにいる人だなと、素直に脱帽である。

 とはいえ、価値判断を戻すならば、踏み込みたくない領域ではあるのだけれども。。