2025年3月22日土曜日

堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波書店、Audiobook版。

  アメリカにおける貧困は、日本のそれとは規模と質が異なる。福祉の世界に身を置いていると「だから日本はダメ」とか「アメリカだと○○らしい」という嘘か真か分からないような情報が飛び交うこともあるのだが、和をもって尊しとする日本と、ゴリゴリ資本主義国家のアメリカとは、政策の内容に差がある。アメリカでは採用において障害を差別としない、とは言われることだけれども、その代わりと言っては何だが、男女の差別や、人種差別、国民であるかそうでないかによって、線を引いて明らかに身内とは異なる対応をするのもアメリカだと言われている。

 本書を読んでいて気になったのは、私の視点では「ありえないでしょ?」と思えるようなことを、施策として展開していること。貧困層への食料支援に、炭水化物中心のものを配布するとか、戦争をモチーフにしたテレビゲームに自国を称揚するような内容を組み込み、その上で、軍隊に入隊することを、教育機関と接続して宣伝する、など。この点、日本とは全く雰囲気が異なるのだと思うが、「お金を稼ぐために、軍隊に入隊する」という雰囲気がすでに広がっている。そこに、本来の意味での愛国心や、国民を守るんだといった、公益性の高い仕事に就くことへのプライドや、本質を考える、ということが、一部で後退した結果が、アメリカ社会の影の部分として、確かに存在しているように思える。