2025年3月22日土曜日

辻村深月『かがみの孤城』ポプラ社、2017年、Kindle版。

  中学性が抱える悩みや、論理的には矛盾しているように見える感情の描写が、これでもかと明確に伝わってくる小説。

 中学生になってから、クラスメートから受けた過剰な働きかけがきっかけで不登校になってしまったこころ。突然輝きだした自宅の鏡に手を伸ばすと・・・そこには現実離れした城、そしてオオガミさま、様々な事情で学校に行きたくても行けない中学生達が集められて、物語は展開していきます。

 人との関わりを大切にしつつ、周りに流されず、自分を大切にする選択について考えさせられるとともに、仲間達の背景が明らかになってくると、思わぬ事実が見えてきて、みんなが戻る現実世界での生き方に、少しずつ変化が生じてくる。

 辻村さんの文章って、すごくわかりやすいだけじゃなくて、見えないものをそっと見える形にするというか、「なんでそんなことも表現できるの?」ということを、すっとわかりやすい言葉を沿えて置いてくる感じがあります。じゃあ、その内容が複雑怪奇なのか?というと、そうじゃなくて、身近な人がそう思っているかもしれない、そう考えているかも知れないような、表現をするとなると陳腐になるかわかりにくくなりそうなことを、非常にクリアに明確にしてくれる。で、物語だって、終盤にかけて、宝箱が次々と開いていくかのように、序盤から随所に置かれてきた伏線が、全て回収されていくような、読書スピードが前半と後半とで全然変わってくる感覚がありました。小説として、私好みだし、いろんな人に勧めたい、こどもたちにも勧めたい1冊でした。