辻村氏は毎日小学生新聞の週別連載を担当されています。本書はその連載をまとめたもの。こどもへの贈り物にどうかなと思い、手に取る。結果、辻村氏の小説の一つでも読んだ上で贈り物にしたいと感じ、一年延期。
小学生新聞の連載なので、表現は大変平易でありながら、自分と向き合ったり、本音を柔らかく解きほぐしたりと、小説家ならではの表現力なのか、辻村氏の思考の深さなのか、あるいはその双方を含めてか。何気ない日常の一部から、「そうそう、そうだよね」と大人も思うような、そんなエッセイで充ちている。どれもが優しく、それでいて深い。何か見透かされている感じすらしてしまうが、それでもやさしい。すごいな、このエッセイ。
こどもならではの言動にも着目していて、一見大人としては不可解な言動も「自分も子どもの頃そうでした」という風に解説が入る。なるほど、自分にもそういう言動あったかもしれない、と思い出したり、あぁ子どもらの言動はそういう背景があるのか、と気づいたり。何度も書くが、批判っぽい表現はほとんどなく、どこまでも優しく「そうだよね」と語りかけてくる。これは新しい感覚だ。子ども向けなんてもったいない、とすら感じてしまう。