2025年12月31日水曜日

奥村正子『すごい90歳』ダイヤモンド社、2019年。

 何かを始めるのに「遅すぎる」ことはない。地道に、楽しんで、挑戦し続けることは、健康な心身に支えられることではあるけれども、取り組むことそれ自体には必ず意味がある。歳を重ねることで思いが確信になるのだろうが、それを人に語ることは経験の継承として、必ず意味がある、ということを読み取りました。
 70歳を過ぎてから、ベンチプレス選手となり、80歳代では世界大会で連覇。2019年までに5つの金メダルを獲得し、2020年に90歳で他界された奥村氏の最初で最後の著書。この時期、私はすでにテレビを観ない生活となっていたので、噂程度にしか聞いたことがなかった方だけれども、本書を読んでその生きざまに触れ、経験の継承の一部になれたかもしれないと思う。
 率直に、内容をふりかえれば、お年をとられた方の一方的な「○○なのよ」的な、年長者の上から目線を感じることもある。とはいえ、本著の随所で語られる奥村氏の生い立ちや家族との関わり(特にパートナーさん)を、そうした言葉に重ねてみると、それらのすべてに奥村氏なりの根拠があって、それは奥村氏と関わる身近な方たちの存在を伴って語られていることが読み取れる。年長者のお小言、ではなく、奥村氏の人生に裏打ちされた言葉であることがわかると、その生活習慣の一つ一つが奥村氏の経験として、私を含めた読者に届けようとしていることが感じられる。この地点で本書を読み解けば、冒頭の「遅すぎることはない」ということに加え、「身体のメンテナンスが大事」ということとベンチプレスがつながってくる。「高齢でもベンチプレスに取り組む変わった人」ではなく、健康に留意して興味をもっていろんなことに取り組んでいたらベンチプレスに出会った人、というのが奥村氏の経験についてより本質的に知ることができる立場だろう。
 言葉の端々を否定的にとらえるのではなく、本書が世に出た経緯と著者の思いを丁寧に読み解くことによって、著者の主張がより響く。言ってみれば「何歳からだって、なんだって始められる。それが本気で取り組めるものであれば」ということ。そういう何かに出会えるように心身ともに感度よく生活したいと思えるようになった一冊でした。

以下、引用
125 私は、なんでも歳のせいにするのは、やめたほうがいいと思うんです。歳だからできないのではなく、なんでも、やるか、やらないかです。年齢をいい訳にして、やらない理由を並べてしまうのはもったいないです。
160 ひとりでは何もできない だから私はいつも感謝の気持ちを忘れない
(2025年分)