2024年10月6日日曜日

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』太田出版、2015年(Audiobook版、2020年)。

  退屈の反対は楽しさとか楽しいこと、ではなく、興奮である。楽しいことがないのは退屈なのではなく、興奮を伴う刺激に乏しいということ。つまらないことが退屈なのではない。

 熱意は幸福と関係があるが、熱意があれば幸福かということには違和感がある。熱意が暴走して刺激を際限なく求めたところの一つに、戦争という事象がある。(ラッセル?)

 現代は、生産が欲求に先行する。やることがない人にやることを与えるのがレジャー産業の側面でもある。

 なるほど、暇とか退屈というものを、倫理的に哲学的に分析して深めていくと、いろんな感情や事象とつながっていくことができる。暇というのは単にやることがない、ということではないし、楽しいことがないのが退屈とは言い切れない。今を生きる私たちの社会の仕組みと実は密接に関係がありながら、その関係がとても見にくくなっているのが暇とか退屈の本質に近づきにくくしている一因ともいえる。

 Audiobookでなければ、おそらく触れられない一冊。哲学的思考や歴史的な論考が学術的に引用されているので、読み解いていくのが困難だった。聞き流している部分もあるが、それでも上記のような気づきや学びがあった一冊でした。