図書館シリーズ。小学生高学年~中学生向けの小説は、病院の待ち時間とかで読めてしまうので手軽でよい。『屋根に上る』ですっかり味をしめてしまった。
幼い頃から気管支が弱く、ぜんそくっぽい症状のある卓(たく)。父親の転勤が中国に決まり、身体のことを考慮して海外へは行かず、田舎で暮らす祖父宅で暮らすことになる。都会から農村への生活の変化、人間関係の変化の中で、自分を見つめて開放していく物語。
とはいえ、祖父宅で幼い頃からの知り合いアズサとの関わりと、祖父が大切にしている山の花畑に植えられたマグノリアの花々、生活環境の変化に伴う体調の変化から、それぞれが好きなこと、歌うこと、踊ること、踊ってみることを見つめ直し、生活を変えるきっかけにしていく様子を描いた一冊。大変手軽で、表現も平易、穏やかに物語が進行するので、安心感のある物語である。
文学は、感情描写が背景描写に表れる、と高校の時に習い、そういうものだと思って読んでしまうが、児童文学の一部には、伏線だと思っていた表現がそのまま放置されてしまうかのように読めてしまうことがある。これは単純に背景を切り取って描写していると読めばいいのだろうと、最近になって思えるようになってきた。単純に物語を楽しむことを最近になって思い出している図書館シリーズでした。