5日目。
共通科目の講義は、勉強していない(まだレポート課題になっていない)ので、ちんぷんかんぷんになるんじゃないかと思っていたのだが、講師のスキルも高く、どちらかと言うとあまり好きでない法学も、何度も断片的に勉強しつつも全体像がつかめない心理学も、どちらもいい意味で緊張感のある講義であった。
知識の整理で精一杯だったので、考えたことは少ないが、以下の通り。
■日常の業務に埋没していると、各種法律の改正は二の次三の次になってしまいがちだが、大局観を得るためにも、基本的なことを把握した上で改正の内容は把握しておいた方がいいと思った。精神保健福祉士取得目的の一つでもあったのだけれども、特に福祉関係の法律について、一通りのことは知っていないと、就職を通じたライフプランニングは難しいのだろうなとも感じた。
■前々から感じていたことだけれども、心理療法は形だけ真似してもその本質は掴めない。基礎理論の上に、パッケージ化されたプログラムが開発されているのであって、パッケージを形だけ真似しても、本来のプログラムがターゲットとしている「治療」や「教育」的効果は期待できない。
<講義内容概要>
○法学
1.日本国憲法
(1)憲法のしくみ
①基本的人権
-個別的人権(後述)
-包括的人権(11、12、13、97条)
②統治
-国会
-内閣
-裁判所
-予算
-地方自治
・・・他
に大別される
(2)個別的人権
①平等権(法の下の平等(14)、男女平等(24))
②自由権(「公共の福祉」に反しない限り、法の下に、国民は平等)
-精神的自由(思想(19)、信教・政教分離(20)、集会・結社(21)、学問(23))
(内に秘めている限りは、何を考えてもよい)
-経済的自由(職業選択(23)、財産(29))
(仕事は何をやってもいいし、私財は守られる)
-人身の自由(苦役からの自由(19)、財政手続き(31)、刑事的(33-40)
(拘束されたり、不当な扱いから守られる)
③社会権(後述)
④参政権
⑤受益権
(3)社会権(生存権)
①生存権(25)
-(25-1)最低限度の生活を営む権利(国民の権利)
-(25-2)(国の責務)
(重要)朝日訴訟
ポイント:行政不服審査法、行政事件訴訟法、最高裁判断
-行政不服審査:行政機関に対する審査請求
-行政事件訴訟:行政処分の取り消しなど、裁判所判断を求めるもの
-朝日事件の最高裁判断
結論:本人死亡により上告は認めず
ただし、ⅰ:憲法25条は「プログラム規定」
ⅱ:生活保護基準の設定は行政の裁量
ⅲ:ⅱについて、本件では行政の逸脱・濫用はない
②教育権(26)
③労働権(27)
2.成年後見制度(民法)
(1)平成12年改正の経緯
①判断能力を否定するような制度だった
②戸籍に登記されてしまったことにより、家族が二次被害を受けるケースがあった
(2)改正内容
①戸籍登記の廃止(後見登記制度へ)
②名称変更(禁治産者から成年被後見人へ)
③配偶者後見人原則の廃止
④市町村長への申立て権付与
⑤複数後見・法人後見が可能となる
⑥任意後見>法定後見
・・・他
任意後見:自分に判断能力がある時に、公正証書によって信頼ある人に、将来後見人となってもらうことを依頼しておくもの。依頼されたものは、本人の判断能力が不十分になった際、家庭裁判所に申立てをし、家裁の判断により成年後見が開始となる(監督人を別に立てておく必要がある)。
※成年後見制度の効力は「財産取引行為」(「身分行為」は後見人の権限が制限される)
○心理学
1.心理学基礎
学問的な心理学は、ブントWundt.W.がライプチヒに心理学実験室を創設(1879年)から始まる。
(1)構成心理学
ブントが始めた、事象を構成要素に分析する
(2)ゲシュタルト心理学
全体としてのまとまりを対象とする
ウェルトハイマー、ケーラー、コフカ:知覚・思考・記憶など
レヴィン:人格心理・社会心理
(3)行動主義心理学
客観的で観察可能な行動を対象とする
ワトソン:刺激(S)→反応(R)
トールマン、スキナー、ハル:学習の心理
(4)精神分析学
意識にのぼらない欲求・感情に注目
フロイト:自由連想法・夢分析→人格理論、発達理論、治療理論
アドラー:個人心理学
ユング :分析心理学
新フロイト派
ホーナイ、フロム、サリヴァン:自我心理学、対象関係論など
2.動機づけ
(1)過程
①欲求need
②動因drive(生理的な現象)
cf:誘因(外的要素)
いずれも「○○したい」と行動しようとするもの
「動機づけ」:行動を開始させ、方向づけ、継続させる過程
※マズローの「動機の階層説」
(2)内発的動機づけ
環境に対して、自発的・積極的に働きかけ、効力感を得ようとする動機づけ(ホワイト)
例:感性動機(感じてみたい)
好奇動機(やってみたい)
操作動機(使ってみたい)
内発的動機づけの本質は、有能さと自己決定を追及する点にある(デシ)
-達成動機:優れた基準や目標を立てて、それを達成しようとする動機。
原因帰属が動機づけに影響する(能力、努力、困難度、運)
3.学習
ソーシャルワークには、対象者への学習を含めた動機づけが必要
「どう引き出すか」
学習の心理
(1)古典的条件づけ(パブロフ)
(=一番最初の、レスポンデント)
無条件刺激に付随する条件刺激により、無条件反応が条件反応となる
例:音がすると唾液を出す犬
(2)オペラント条件づけ(スキナー)
(=道具的条件づけ)
自発的行動によりごほうびを貰うと、自発的行動が「道具」となる
-強化:行動頻度を増やす(報酬を与える)
連続強化:毎回報酬を与える。新しいことを覚える時に有効
部分強化:時々与える。学習を維持するのに有効
-消去:行動頻度を減らす(無視するなど)
(3)観察学習
モデルの行動を観察するだけで、実行や強化を行わずに成立する学習
モデリング理論(バンデューラ)
4.発達の心理
発達:成熟による変化(学習:経験による変化)
成熟優位説(ゲゼル)
環境優位説(ワトソン)
発達段階
(1)フロイト:性的
-リビドー
(2)エリクソン:社会的
①ライフサイクル(老年まで)
②社会の中における発達
③対比概念と「社会的危機」
④徳(獲得される性質)
(3)ピアジェ:認知
-能動的発達感
5.臨床心理
(1)対象者理解
①観察
②面接
③検査(観察が内包されている)
(2)援助
①精神分析
-無意識の心の動きを対象とする
-幼年期の体験に原因を求める
②行動療法
-学習のしくみを利用し、セラピーに役立てる
-適切でない行動が学習されているから、消去する(例:不安の軽減)
例:SST
③人間性心理学
-ロジャース:来談者中心療法(クライアントの意思を重要視)
後年、エンカウンターグループへ発展