2025年7月23日水曜日

悪意から逃れるのは難しい。

 すべての価値を金銭に置き換えると、他と比べる余地が大きくなる。資本主義っぽい近代国家っぽいことって、案外そういうところに基本原理があるのかもしれない。
 人をけなすことや、強い指摘を行うことって、その相手に不快な感情を抱かせるのだけれども、そうして感情が動いてしまった人が、理由はどうあれ反撃に転じた瞬間、主張の主と同じ土俵に立つことになってしまう。その理由が、たとえ「自分の身を守ること」だとしても、だ。真に自分の身を守るならば、一方的な刃に対し、捌いて無効化できれば優、刃が届かないところまで距離をとってそれを保つことができれば良、無視しきれれば可、といったところだろうか。「一矢報いる」「やられなければやられる」「これ以上やられる前にやっておく」みたいな、凡人の中にふと芽生えやすい感情は、それそのものが相手の刃の範囲内に取り込まれていくことになる。
 それで、同じ土俵に乗ったら、あとは比較の思想が奔流とともにやってきて、あれがいい、これが欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しいと、どこぞの歌詞のように(あの歌は名曲です、本論とは関係なし)本来不必要なこと・ものに「必要」「大事」のレッテルを貼って、自分自身を煽り立ててくる。こういう構造があるように思えるこの頃。

 あと、自分の中ではちょっと似たことで最近のトレンド、「悪意は防げない」。根拠がない、あるいはトンデモ話やデマというのは、「言ったもん勝ち」の側面が大きくて、自分の間違いをしくみの不備や不可能なことに転嫁してそれに関係する相手を責め立てる、というのが、ここのところ身の回りで起こっていることに共通する構造だと思う。ただ、その向こうで一貫しているのが、「間違えたのはあなた(方)のせい」「わたしはこう思っていた」「○○と読めてしまう」というあたりの感情と(屁)理屈だろう。言ったもん勝ち。
 周囲の出来事を透かして、(限定的に私が見聞きする)世の中の言説を当てはめてみると、○○ファーストとか、■■優先とか、そんな言葉になって広がっていく。だいたい「日本人ファースト」ってどこに線引いて、何をしようとしているのだ?ヘイトや差別の発想がカウンターバートから提出されているけれども、それを追い風にしつつ、「あなた(方)の言う『日本人』って誰よ。どの範囲なの?Iyokiyehaさんは当てはまるのかい?」と問う。私の身近な知り合いにも、外国ルーツの方はたくさんいるし、その人たちに「日本人ファーストだから、あなたはダメよ」とは言えない。もちろんそれに一言「俺もいいのか知らんけど」とつけることになるが。そのくらいおかしなことが、(私にとっては見苦しい)動画になって政治にも広く影響を与えているのが、本当に「気持ち悪い」と思った最近です。
 とはいっても、私の生活は変わらない(変えない)ようにしたいのだけれども。先日、ひょんなことで体験した「温活」が、身体によさそう。
 

話し方のレッスン

 ひょんなことからご縁があって、話し方のレッスンを受けてきました。
 これまでの経験もあって、プレゼンや人と話すこと、それ自体にはそれなりにスキルに自信はあるのだけれども、とはいえ、仕事以外のところできちんと教えてもらったことはないので、いい機会でした。
 学んだことは、言葉にすると月並みなんですが…
・(その話の中で)一番伝えたいこと/抽象度を高めた 一言をそえる。
・フィラー、語尾フィラーを減じる
 ということです。言葉にすると、どこかで聞いたことがあって、いろんな場面でいろんな人が言っている、ことですが、これをきちんとトレーニングする機会はとても貴重でした。
 頭使うし、話し方を気にするととっても窮屈だし…
 でも、録画してもらった自分の話し方を見て、たくさんの気づきがありました。印象的だったのは、「自分が思っているよりも窮屈さは見えにくい」こと。むしろ、自分が「窮屈」と思った話の方が、聞いている立場としては「話に集中できる」。内容が浮き彫りになる話し方、なんて言えるのだろうと思いました。
 「一言」ワークは、時々、丁寧に言葉選びをするようにしたら、きっと私があこがれる「難しいことを端的にずばっと言える」人に近づくのだろうな、と可能性を感じることができました。
 出不精な私にとって、研修とかセミナーってどうしても一歩踏み出すのに力が要るのだけれども、生活のベクトル(方向性)が合ったものは、必ず学びがあるな、と改めて思う次第です。仕事で参加する(しなくちゃいけない)説明会とか講習会に当たりはずれを感じるのは、このベクトルの重なり具合なんだろうな、とも感じる機会になりました。
 何より、今の言葉で言うならば「推し」が提供している講座に参加できたのは、自分にとっては、とってもとってもいい経験になりました。偶然とはいえ、こんな機会をいただいたことに、ほんと感謝です。

新庄耕『地面師たち ファイナル・ベッツ』集英社、Audiobook版。

 「地面師たち」というドラマがネットフリックスで公開されており、妻の勧めで一話を観て、それっきりになっていた。同名の小説が紹介されていたので試してみる。
 とにかく「気持ち悪い」と「人間が本能むき出しになる瞬間」が交差する。ドラマのエピソードとは異なるのか?とはいえ、ハリソンが主要な登場人物として現れるなど、どちらかがモチーフとなっているのだろう。
 ハリソンの人間描写やちょっと倒錯した性癖など、元アスリートが成績不振をきっかけにギャンブルに身を投じ、通常の思考あるいは本人が落ち着いた時の思考では「ありえない」行動を、自分の欲(感情)に従って選択してしまう様と、その結果によって現実を突きつけられ、後悔と他責と自責が混在して混乱しつつも冷めていく様子など、人間にありがちな感情の動きを、振れ幅大きく、とかく「気持ち悪く」描かれている。
 とにかく「気持ち悪い」のだが「気になる」読み物だ。登場人物一人一人のキャラクターが尖りすぎていて、元気のない時には気持ち悪さが優位になってしまう。ちょっと注意です。

米国戦略諜報局(OSS)著、越智啓太、国重浩一訳『サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質』北大路書房、Audiobook版。

 ちょっと変わった一冊。
諜報(ちょう ほう) 敵の様子をひそかに探り、味方に知らせること。また、その知らせ。(デジタル大辞泉より)

 イメージしやすいのは「スパイ」なのかもしれないが、様々な諜報活動があるなかで、その技術や知見を利用して「組織にダメージを与える」ことを知ることにより、組織の在り方を考えることを促す一冊。いろんな方法で、人間関係や組織の雰囲気に悪影響を与える方法、物理的に物的資産を故障、不具合、破壊する方法、ハードにもソフトにも、様々に紹介されているが、これらの内容は「自分がそれを試してみる」ではなくて「敵はこう考えて組織を壊しにくるから…(どうする)」と続く思考を促す一冊といえる。
 印象に残ったのは以下の部分。
・諜報員が見て、分析する、組織の弱点。
・諜報活動として、質的に円滑さを失わせて不協和音を生む方法と、物理的に資産を壊す方法がある。
・例えば、規則を頑なに守る、というのはそれによってクライアントや組織内に不便が生まれる。頑なに厳守を主張することにより、組織内の円滑さが失われる。
・機械ものは、砂や過剰な油分(ちょっとしたこと、あるいは適量ならば必要なもの)に弱い。

ジェイエル・コリンズ著、小野一郎訳『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』ダイヤモンド社、Audiobook版。

 投資に関する考え方について、資産形成に成功した著者が未来を生きる娘に語る形で説明するもの。謙虚な姿勢が貫かれており、まさに投資のイロハと目標設定、考え方について論じる一冊。奇をてらう内容ではないが、着実にためることによって何を目指すのかということが語られている。要点は以下の通り。

・投資は、基本的に「箱にすべてを入れて待つ」のが、資産形成には有用。

・X%の金利で運用するとした時に、貯蓄のX%が年収に当たるところまで貯めることで、人生のステージが変わる。

・人生に選択肢がある安心感。

・まずは、半年分の収入を貯蓄すること。