・以前、アメリカでは賛否両論あったようだが、確かに記述の内容がものすごい迫力である。特殊な技能も何もない普通の女性3人(著者、母親、姉)が、家を出て兄と合流しようとしながらも、鉄道、船舶の出発機会を逃さず、京都までたどり着く。朝鮮半島では、目の前で人が絶命する場面を目の当たりにし、日本人であることを隠しながら逃げ続ける。日本においても、京都では引揚者に対する差別の渦中で、わずかな理解者に支えられながら、たくましく生き延びる様を描く。
・淡々と経験を語るこの本は、読む人に淡々と響くものだろう。同情とかかわいそうとかでは片付けることのできない圧倒的な感情の渦を感じられた。戦争のどうしようもない、そしてとんでもない側面すら、生活に取り込まれてしまう、生活に位置づかざるを得ない状態を受け入れながら、その中で生き延びるためにはそうしたとんでもないことをも利用せざるをえない。「たくましい」という言葉には、これほどの覚悟をもって行動した人の歴史や背景があることも強烈に感じさせられた。